こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

映画

2013年の映画ベストテン

2013年、劇場で観た新作映画は55本でした。 DVDほかの旧作は16本。 例年以上に順不同としたい気持ちが強い、その日によっていくらでも入れ替わる順位です。 また、「俺が挙げずに誰がやる」という映画の多さも例年以上ですね。 10位『ライフ・オブ・パイ』 …

スティフラーは偉大なり『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』

ぼくは家族の名を汚している。 スティフラーはわが名...わが遺産、わが呪い。 ――エリック・スティフラー 『アメパイ』は『スター・ウォーズ』にも比する壮大なサーガなのである! ――長谷川町蔵*1 1999年のシリーズ第一作『アメリカン・パイ』から十数年。高…

学園映画の傑作『クロニクル』

『アメリカン・パイパイパイ!』公開に向けてアメリカの学園映画のことを考えている時期に観たので、SFとしてよりも、学園映画としての美点がつよく印象に残りました。 もっとも「うまいなー」と思ったのは、主人公がカメラで撮影していると「キモいから止…

ぼくの父さんはどこ? 『オン・ザ・ロード』

映画はつぶやきのような歌ではじまる。放浪する我が身、そして旅先で出会った同じく放浪する死にかけの父親の歌。 物語の冒頭、主人公サルは父親の死に打ちのめされている。父が最後まで自分を認めていなかったことにも。 サルがとらわれる放浪の男ディーン…

ジブリ美術館で、仕事のことばかり考えていた

一昨日、ジブリ美術館に行ってきました。8月の頭にわーっと衝動的にチケットを取ったら、偶然にも宮崎駿引退会見の日にあたってしまった。 夏期休暇をとっていたんですけど、そう簡単には休めず半日仕事をして、しかもこういう日に限って今後しばらくの間へ…

神と子のお話『マン・オブ・スティール』

スーパーマンのお話というのは、まあたいへんオーソドックスな貴種流離譚です。強大な力をもった英雄への畏れと、そんな英雄でも人の心を解し、愚かな人間を導きともに楽しく過ごしてほしい、という希望によって形作られるドラマ。半分神、半分人間という出…

バカに見えても色々考えてんだからな!『ホワイトハウス・ダウン』

すばらしかったです。映画館で二時間ずっと、満面の笑みで過ごすことができました。こんな楽しい映画が観れるとは、という純粋な喜び。 すでに色々なところで指摘され、また作り手も認めている通り、『ダイ・ハード』に強く影響された映画です。 しかしそれ…

三十路男の魔法『マジック・マイク』

チャニング・テイタムの実体験をもとにした、夢みる男の物語。 そういうあらすじはわかっていたはずなのですが、キラキラした宣伝と、肉体美ひゃっほー、マシュー・マコノヒーひゃっほー、といったTLの印象に気を取られてすっかり忘れていました。なのでなん…

ぼくたちはやり直せる 『華麗なるギャツビー』と『オブリビオン』

『華麗なるギャツビー』は1920年代のアメリカを舞台に、ハイスピードな資本主義社会のなかで失われゆく純粋な理想をいとおしむ物語である。今回のバズ・ラーマンの映画は、原作のなかでもとくにその思想を伝える部分がクローズアップされており、よりわかり…

俺はここにいる『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』

「おっ、降ってきたな」 「俺、雪が降り始めるとわくわくしちゃうんだよ」 「子供かよ」 冬のはじまりの札幌の空気はおもしろい。 これから半年間続く、雪と寒さに閉ざされた苦しい時期に陰鬱となるいっぽうで、心の半分では、なにか素敵なことがはじまった…

変態仮面のことは好きになったよ!『HK 変態仮面』

原作は未読ですが、リアルタイムで連載を読んでいたという妻から「それはわたしのおいなりさんだ!」あたりの基礎知識はまえまえから聞いていました。 まず冒頭の、MARVEL映画&ライミ版『スパイダーマン』オープニングの完コピで笑わされかつ心を掴まれまし…

裏切り、裏切られる男たち『ジェシー・ジェームズの暗殺』

19世紀後半、強盗を繰り返し名を馳せたアメリカの無法者ジェシー・ジェームズが、仲間の裏切りによって暗殺されるまでを描く。 『ジャッキー・コーガン』予習のため観ました。 これを映画館で観なかったのは本当に惜しい。とかく、隅から隅まで映像と音が…

戦場は特別な場所じゃない『アルマジロ』

スリリングでインパクトある映画だし、今後戦争を扱った娯楽作品を観るときには念頭に置きたい作品の一つにはなりましたが、戦争映画なら『ブラックホーク・ダウン』『ジャーヘッド』、ドキュメンタリーなら『精神』、といった自分のなかのベスト作品群のも…

「時空を超えて世界を救っちゃうオレ」の映画『ルーパー』

近場での公開終了日に観てきました。前評判通り、たいへん面白い一作。TBSラジオ「たまむすび」で山里亮太さんが本作の面白さを「次々に「いいやつ」が変わって、誰を応援していいかわからない!」と表現していましたが、言い得て妙と思いました。 そうい…

2012年の映画ベスト10

2012年、映画館で観たのは合計50本。 観るべきだったのに観てなくてごめんなさい映画は『ドライヴ』『アウトレイジ・ビヨンド』『崖っぷちの男』『マルドゥック・スクランブル/排気』あたりでしょうか。つーか毎年多すぎですね。 50本のなかからベスト1…

『ブラッド・ウェポン』

アクション映画を褒めるとき、「CG全盛のハリウッド映画からは失われつつあるリアル重視のアクションが…」というたぐいの枕詞が一般化したのはいつごろからでしょうか。やっぱあれ、あんまりよくないと思う。 本作もどうもそういう路線で売られているよう…

『デンジャラス・ラン』

最後は最新の映画で〆ましょう。今年の秋に公開されたばかり、『デンジャラス・ラン』です。 凄腕工作員として名をあげながら、組織を裏切り長年逃亡していた元CIA工作員フロスト(デンゼル・ワシントン)がついに南アフリカで拘束された。彼を一時的に留…

『スパイ・ゲーム』

『スカイフォール』が萌えるのは、ジェームズ・ボンドが、国家を守るという自分の職務の枠を意識しつつ、それを超えて上司Mを守ろうとするから。組織のなかで個人のために暗闘する、そういう二律背反のなかをくぐり抜けていくスパイたちにぼくはドキドキす…

『スカイフォール』を観たあなたにおすすめしたいスパイ・フィクション三選

みなさん、『スカイフォール』、楽しかったですね! この盛り上がりを聞いて、ひさびさに007を映画館で観た、あるいは初めて007を観た、という人も多いのではないでしょうか。 世の中には、まだまだ他にも魅力的なスパイ映画、スパイ小説がたくさんあ…

なんだ傑作か『007/スカイフォール』

観賞が前提の文章です。ネタバレてんこもり。 なんかもう予想通りでつまんないくらいだったんですけどその予想というのは「きっと傑作にちげえねえ」という見通しだったわけでそこにきっちり沿ってくれているんだからもうほんとに傑作。えらいえらいぞサム・…

THINK ON YOUR SINS/スカイフォール予習

この15年ほどのスパイ・フィクションの歴史を振り返るとき、そこには時代ごとに人びとが背負った/背負いたがった「罪」を概観することができる。スパイが活躍した(すべきだった)事件や場所、時代の空気が告発され、観客たちに「罪」を見せつける。 なぜ世…

人と本の映画『映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』

テレビアニメ『スマイルプリキュア!』映画化作品。 「世界の絵本大博覧会」にやってきたみゆきたちプリキュアの五人は、絵本のなかからやってきたという少女ニコに出会う。彼女に連れられ五人は絵本の世界を訪れるが、やがて謎の影の仕業によっていくつもの…

職場がなくなったあとのことは考えない『トータル・リコール』

『トータル・リコール』を観てきました。 バーホーベン版は昔日曜洋画劇場で観たきりですが、夢か現実かをあんまり悩んでない映画という印象。今作もおおむね前作と同じ雰囲気を保っています。 スパイもの愛好家としては、すべては妄想であり、スパイワナビ…

兵士と消防士『ネイビーシールズ』

*事前のお断り* 本稿はかなり偏ったFPS観に基いて書かれています。とくに、CoD以外の諸作に関する知識・歴史観がぼくには圧倒的に欠けており、そのへん眉に唾つけて読んでいただけると助かります。間違ったことがあったら、射殺するまえに教えてれるとうれ…

『ルート・アイリッシュ』

前回「つづく」とか言っちゃったけどつづいてません。ボンド話はまたそのうち。 『裏切りのサーカス』はもちろんのこと、現在『外事警察』に『ミッシングID』とスパイ映画が目白押しです。そんななか、公開がそろそろ終わりそうなこの映画を観てきました。 …

ぜんぶわかってあなたをみつめている『裏切りのサーカス』

ついに観ました。 去年の夏ごろからずっと待ち望んでいた観賞で、予告編は何度見たかわからないし、原作も読んだしル・カレ作品も(全部ではないけど)読み進めてるし、『ナイロビの蜂』も読んだしその他スパイ映画/小説ばっかり読んでるし、で、ついに!つ…

もやしっ子よ宇宙をめざせ『ジョン・カーター』

目覚しい武勲を立てながらも、山師に落ちぶれて金鉱を探す元南軍兵士ジョン・カーターは、ネイティブアメリカンと政府軍の小競り合いに巻き込まれて山中に迷い込む。そこで彼が見つけた洞窟には、火星へと繋がる謎の遺跡が存在した..。 なんだか「筋肉美を単…

『エンドゲーム』

『バンテージ・ポイント』のピート・トラヴィス監督最新作!というと、アフター『ボーン』な手持ちカメラ多用のハイテンションなアクション映画をイメージしてしまいますが、さにあらず。相変わらず手持ちカメラでブレブレな撮影ではありますが、なかなか渋…

2011年の映画ベスト10

ようやく2011年の映画ベスト10を決めたので粛々と発表していきます。なお、対象本数は76。相変わらずの少なさです。 10位『グリーン・ランタン』 今年観たアメコミ映画でいちばんぐっときました……とはいえ『マイティ・ソー』は観逃したんですが。 いつも凡…

平均以下、ではありますけども『チルファクター』

10度を超えると爆発する特殊兵器エルヴィスを守るため、元軍人の魔の手から逃げる羽目になったコンビニ店員(スキート・ウールリッチ)とアイスクリーム屋(キューバ・グッティングJr.)の逃避行を描くアクション映画。1999年。 12年越しの落穂ひろい、と…