こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

屈折率

屈折率 (講談社文庫)

屈折率 (講談社文庫)

 元商社マンが、請われて実家のガラス工場の社長となる。下降していくのみの業界のなかで、工場を再生させるために孤軍奮闘する男の物語。
 題名にも用いられるとおり、ガラスが重要なモチーフとなるこの小説、作品全体の雰囲気もガラスに似て冷ややかで澄んでいる。その一方で、熱く燃えたぎり、融解する面ももつ。そういうイメージが、世界を生きぬく大人の男の生き様に直結していく。佐々木譲の美学が、洗練されたかたちでお洒落にまとまった印象をもった。
 ただし、主人公の男も、周りの人間もクールにすぎて、サラリーマンのための小説としてはなかなか厳しいところもあり。ぼくはこのくらい人情が抑制された世界が好きだけれども。