町山智浩さんが「ポール・ニューマンの映画はこれ一本でいい!」とストリームで吠えた*1一作『暴力脱獄』を観た。
邦題はそうとうに見当はずれだし*2、演出も抑えめだから、刑務所映画は刑務所を世界の比喩として観るべきということがわかっていなければここまで心に響かなかったかもしれない。
『ショーシャンクの空に』を観、ライムスターの『プリズナーNo.1,2,3』を聴いて、町山さんの解説を聴いたからこそわかったのだと思う。
ニューマン演じるルークは、刑務所の中も外も区別せず、応えてくれない神に呼びかけ続ける。
映画の最後、脱走中に追いつめられたルークは、教会のなかで神に奇跡を示すよう訴える。もちろん神は沈黙を続けるままなのだが、彼のもとには途中で別れたはずの囚人仲間(ジョージ・ケネディ)が現れる。その時の、「あんたも食えない奴だな」と神に言うルークの笑顔といったら!
神はあらわれない。それでも、笑って生き続けるしかないのだ……。神なしでも、隣人とともに、よき人として生きていけると信じて。
「雨の日でも大丈夫、おれの車のダッシュボードにはプラスティックのイエス様がいるから」
余談だが、哲学的深みをもつ映画でありながら、しかも刑務所映画であるのに、むちゃくちゃエロいシーンがあるのもすばらしい。
そりゃ脱獄したくなるよねえ。
*1:http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2008/09/930-543b.html
*2:もちろん、内容と違うことだけが問題(笑)なのであって、タイトル自体は超かっこいい