こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ジョン・クリストファー『トリポッド』

トリポッド 1 襲来 (ハヤカワ文庫 SF)

トリポッド 1 襲来 (ハヤカワ文庫 SF)

トリポッド〈2〉脱出 (ハヤカワ文庫SF)

トリポッド〈2〉脱出 (ハヤカワ文庫SF)

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)

トリポッド 4凱歌 (ハヤカワ文庫 SF)

トリポッド 4凱歌 (ハヤカワ文庫 SF)

 60年代にイギリスで人気を博したジュブナイルSFの新訳。第一巻では、宇宙からやってきた侵略者が、催眠術で人類を操り地球を征服する。第二巻以降は侵略が終わってから百数年経ってから、ついに反旗を翻す人類の戦いを一人の少年を語り手に描く。

 大事なのは、自分が自分らしくあることなのだ。自信たっぷりで軽蔑的でもいい。心配性でおろおろしていてもいい。それが自分の生き方ならそれでいいのだ。それが人間の大事なところなのだ。イアン叔父さんたちが主張している平和とか幸福とかは、じつは死ぬこととおなじだ。自分が自分でなくなったら、もはや生きているとはいえないのだから。

ランボーイズム*1をぶちあげる第一巻には燃えるものの、イギリスの児童文学らしく(偏見です)主人公のダメな人間性をえんえんしつこく描写する第二巻以降のしょぼい流れには正直なところ疲れた。
 もちろん、ダメな人間が自由を選び責任を担っていくという、前述のテーマをひきうけた必然性*2のある主人公であり、物語なのだけれども。

 物語の最後には当然のようにイギリス人らしい(偏見です)フランス嫌悪も飛び出し、どんなに西島大介がポップな装画をしようと、古色蒼然とした物語であることは隠せないのだった。
 とはいえ60年代のジュブナイルSFをいま読むとき、古色蒼然っていう印象はぜんぜんマイナスにはならないわけで、小学生のとき図書室の隅にうちすてられていた古い児童文学を読むあの感触が味わえて楽しかったことも事実。そのへんに復刊の意義もあるのだろう。

*1:「ムダに生きるか何かのために死ぬか、お前が決めろ」

*2:とはいえ第一巻は2〜4巻よりのちに出版された前日譚である