こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

山田風太郎『くノ一忍法帖』

くノ一忍法帖 山田風太郎忍法帖(5) (講談社文庫)

くノ一忍法帖 山田風太郎忍法帖(5) (講談社文庫)

 いっきに下世話な話にきりかえる。
 くノ一、なんと甘美なひびきであろう。男なら一度はくノ一と一戦交えたい、そりゃ両方の意味で、と思う。時代小説におけるボンドガールのようなあこがれの存在だ。
 しかし山田風太郎におけるくノ一は(当然といえば当然なのだが)妖怪のように肥大した子宮や毒をもって男を虐殺していく。虐殺するばかりでなく、たいていの場合自分も死ぬ。たぶんくノ一の――すなわち「女」の――真髄はそこにある。だから山田風太郎のくノ一に大して、かような甘い心持ちは抱かない。ただ邪神をあがめるごとく、畏れの感情を抱くのみなのである。