- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/12
- メディア: 文庫
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くノ一、なんと甘美なひびきであろう。男なら一度はくノ一と一戦交えたい、そりゃ両方の意味で、と思う。時代小説におけるボンドガールのようなあこがれの存在だ。
しかし山田風太郎におけるくノ一は(当然といえば当然なのだが)妖怪のように肥大した子宮や毒をもって男を虐殺していく。虐殺するばかりでなく、たいていの場合自分も死ぬ。たぶんくノ一の――すなわち「女」の――真髄はそこにある。だから山田風太郎のくノ一に大して、かような甘い心持ちは抱かない。ただ邪神をあがめるごとく、畏れの感情を抱くのみなのである。