試写会で観た。
『愛を読むひと』同様、「ドイツのことを英米人がやってどうなるの問題」を抱えた作品。オープニングで、タイトル表記や台詞でドイツ語→英語の変換*1を繰り返しやっていて、少なくともこの問題について意識的であることは示されている。
その後の二時間はトム・クルーズを中心にすえたまごうかたなきヒーロー映画となっていて、『愛を読むひと』のようにドイツ人の罪を問うようなものではないから、この問題についてはそう深く考えなくてもいいのかもしれない。当のドイツ人がどう感じるのかはわからないけれども。
そういう娯楽的な目でみたとき、やはりトム・クルーズの魅力というのは傑出している。祖国のために負った傷を抱え、やるときゃやるんだ!と正義のために突き進む反逆者を生き生きと演じている。ヒトラー暗殺計画が開始され、着実に行動を進めていくときの、すさまじい緊張と高揚を皮の下すぐまでぱんぱんに溜め込んだ表情は、彼でしかできないものだったと思う*2
二時間ぴったりに抑えられた脚本と編集のおかげもあっただろう。少なくとも、『ラスト・サムライ』あたりよりは楽しい映画だ。
それにしても、監督のブライアン・シンガーはなぜこの映画をつくったのだろうか?
以前からナチス関連の作品はいくつか作っているが、今回の作品に限っては、ナチスへの批判は抑え目であり、むしろ兵器や軍隊が無機的に格好良く描写されており、リドリー・スコット的無関心さを感じさせる。ユダヤ人でゲイという彼のバックグラウンドを考えれば、もっと感情的な描写が含まれてもよい題材であり、不思議な感覚を覚えた。
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