- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
- メディア: 文庫
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そりゃキュートな乙女の造形や京大風俗描写もけっこうですが、第四章で展開される現代男子の恋愛論こそこの傑作の要。ここで森見氏は、膨大に存在すると思われる選択肢とその先の可能性の圧倒的な質量におびえて立ち往生する、現代男子の背中を思いっきり蹴りとばす。足を踏み出さなきゃ決して飛べないよ、というそのメッセージはそこだけ取り出せばマッチョあるいはリア充的に思えてしまうが、そこにいたる童貞、否、道程のしょうもなさが、ひねくれたぼくのような男の心を懐柔し絡め取り納得させる。読後しばらく、「夜は短いよなあ、おれも歩かないといけないよなあ」などと無意味な諸々の暴挙を企てたくなるのだった。
ところで、森見さんは1979年生まれだという。ぼくより三歳年上になる計算で、同世代と考えてもよかろう。同世代の、物語に耽溺した図書館勤めの青年が、かようなステキな小説を書いていることにぼくは激しく嫉妬する。うらやましい。ちょううらやましい。『ユリイカ』にラブドールについての短文を寄せたり、本上まなみが大好きだったり、いろいろ気の合いそうなところがある人なのに、嫉妬を通り越して憎しみを抱いてしまいそう。しかもさいきん結婚したらしいし。ちぇっ。
ああ、ぼくもこんな小説を書いてみたい。書いて『ダ・ヴィンチ』愛読者とかにモテモテになってみてえなあ。