こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

轟く紀里谷節・進むシャマラン化『GOEMON』


 『CASSHERN』に続く紀里谷和明監督第二作。
 意外にも前半はじつにテンポよく話が進む。織田信長にまつわる謎の箱の正体が明かされるあたりまでは非常に面白く観た。人物紹介の手順や、コミカルなアクションの見せ方など、前作に比べると実にうまい。いやあくまで相対的な話ですけど。
 後半になると紀里谷節全開で、これを「いい映画だよー」などと他人に薦める気には絶対ならないわけだが、それでも全力で打ち出される「世界を変えようじゃないか!」という紀里谷節には何か抵抗できない力を感じてしまう。
 本人が明智光秀役でちらっと出演しているところ含めて、紀里谷和明は日本のM・ナイト・シャマランなのではないか。『レディ・イン・ザ・ウォーター』が大好きなぼくとしては、同様に紀里谷節も否定できないのだった。

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 紀里谷節も前作に比べれば技術が向上していて、抽象的なイメージをつなげるだけでなく、豊臣秀吉徳川家康らと、石川五右衛門霧隠才蔵らの世代対立の構図を作っていて、多少わかりやすくなっている。映画の最初のほうでゴリに「格差」とか言わせているし、紀里谷監督としては世相を強く反映させたと思っているのではなかろうか。それは結局、父親に反発する幼い息子の自己愛としての反抗、という印象しか残さないのだが、それでも、わかった顔して従属の道しか示さない押井守の『スカイ・クロラ』よりは断然ましだ。
 で、かような世代間闘争の構図のもと、50歳代以上の「大人」であるところの徳川家康や、その権力闘争ゲームに参加した石田三成に、40歳前後の「若者」であるところの五右衛門=江口洋介紀里谷和明が、「さんざん好き勝手やらかして生きにくい世の中にしやがって! もう我慢ならん! 全員ぶちのめしたる!」と突撃をかけるクライマックスには、たとえ演出がどんなに陳腐であっても、燃えるものを感じてしまわざるをえない。ふだん口に出しては言わないけど、やっぱぼくも、「大人」って信用してないもん。世の中のすべての富は脂ぎった権力の豚たる団塊世代以上のやつらが独り占めにしていて、世の中のすべてのいい女はやつらに手篭めにされていて、世の中のすべての不幸はやつらが嬉々として張り巡らせた陰謀によって生み出されているに違いねえと日々思っているもん*1
 これで上映時間が二十分くらい短くて、もっとエロいシーンが多くて*2、五右衛門がもっと非モテだったら、人に薦められる映画になっていたかもしれないんだけどなあ。

*1:冗談です。半分は。

*2:遊郭のシーンがあるにもかかわらず、乳首の一個も画面に映らないなんて...。