30日間闇夜に閉ざされるアラスカの寒村に、獰猛な吸血鬼の群れが現れる。スティーヴ・ナイルズの同名コミックの映画化。
- 作者: スティーブ・ナイルズ,ベン・テンプルスミス,桑原あつし,クリスチャン・ストームズ
- 出版社/メーカー: マイクロマガジン社
- 発売日: 2005/10
- メディア: コミック
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吸血鬼は、ペストや移民など、その時代や社会にとっての敵のイメージを重ねられて育ってきたモンスターだ。
この映画の吸血鬼たちは、弱点の太陽が昇らない時期を選んで来襲し、あらかじめ人間たちのライフラインを絶つなど、論理的に準備をしている一方で、いざ襲うとなると、そう一度に吸血できないのではないかとこちらが心配になるくらいの大量虐殺を繰り広げる。冷静さと異常さが混在したキャラクターとして描かれているのだ。虐殺自体を楽しんでいるかのような悪魔的側面を拡大しているということもあろうが、入念に準備しながらも理不尽な無差別攻撃をしてはばからない(とイメージされている)反米テロリストの影も反映されているのではないか。
映像表現や物語も、911以降の絶望的な世界観を色濃く反映した『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ミスト』*1のように容赦がない。吸血鬼は鈍く尖った爪で人間の皮膚を切り裂き、不揃いで薄汚れた歯で肉を食いちぎる。これも、銃ではなくマチェーテで他民族をなぶり殺していく『ホテル・ルワンダ』的な恐怖を連想させる。
クライマックスとエンディングも、吸血鬼ものとしては定番*2ではあるが、現在のアメリカン・ヒーローが選ばざるを得ない展開だった。
このように、耽美風味やアクションアイコンとしての性質を剥ぎ取り、どうしようもなく酷い現実世界と地続きの生々しい悪として吸血鬼を描いた本作は、90年代の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』や『ブレイド』に続く、ゼロ年代吸血鬼映画の代表作として後世に残るとぼくは思う。
こうなってくると、もはや吸血鬼とゾンビの区別がつかない気もしてくるが、しかし吸血鬼のほうが、意思がある分モンスターというよりは人間に近く、それだけ人間の持つ暗黒を描きやすいはずだ。
本作の生き残りが、都会で暮らす吸血鬼たちを襲い復讐を果たすという次回作に強く期待したい。...『ブレイド3』みたいなことにはならないといいなあ。
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30デイズ・ナイト:リターン・トゥ・バロウ (アナザー・パラダイムシリーズ)
- 作者: スティーブ・ナイルズ,ベン・テンプルスミス,桑原あつし,クリスチャン・ストームズ
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