こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ぼくも子供を育てるべきだろうか『26世紀青年』


 原題は"Idiocracy"。
 冬眠実験から目覚めてみたら、26世紀のアメリカはバカばかりの国に!という大変おそろしい映画である。すでに随所で絶賛されている作品なわけで、遅ればせながらようやくの鑑賞。
 バカばかりになったアメリカの描写はじつに気が利いていて楽しい。バカの運営する病院にバカの警官と、笑えるけれども主人公の身になってみれば非常に恐ろしい状況を、笑いと恐怖の間でうまくバランスがとられたテイストで描いている。会話もいかにもバカらしく練られていて、たとえばスポーツドリンク”Brawndo”を畑に撒くバカどもを止めようとする主人公ジョーとの会話はこんな展開。
バカ:「Brawndoは畑にいいんだぞ!」
主人公:「なぜBrawndoがいいと思うんだ?」
バカ:「電解質が入っているからだ!」
主人公:「なぜ電解質が畑にいいんだ?」
バカ:「...Brawndoに入っているからだ!」
ナレーション:「五時間後、ジョーは論理的に説明するのをやめ、自分は植物と話ができ、植物がBrawndoより水を求めていると話して皆を説得した」*1
 いやはやたまんないね。『水は答えを知っている』の信奉者と話したら全く同じ展開が再現できそうである。
 えらいなあと思うのは、バカをあげつらって笑うだけじゃなく、傍観を決め込んでバカを蔓延させるに任せた知識層も槍玉に挙げ、その無気力な知識層の一人だったジョーがやがて態度をかえて世界を救おうとする変化も描いているところだ。映画の最後に彼がぶつ演説も泣かせる。「かつて読書は頭のいい連中だけのすることではなく、国民みながしていた。映画にもストーリーがあり、人々はみな銀幕に映っているものに「なぜだ?」と問いを投げかけていた。この国がそんな時代を再び迎えることを私は信じている」
 この映画がある程度説得力を持ってしまうアメリカの現状は確かに恐ろしいが、一方で、映画にこめられたまっとうな批判精神と希望に、かの国の底力を見せつけられたように思う。ハリウッド映画は大味だという人々の思い込みを武器に、必要以上の邦画ブームを引き起こしてきた日本の映画業界人はどのようにこの映画を観るのだろうか。

*1:うろ覚えです。