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はてなんでかように笑いとサスペンスを行ったり来たり落ち着かない映画がここまでもてはやされるのかしらん、と思っていたのだけど、中盤でのオーソン・ウェルズ登場を機に、急展開する事件同様に映画の勢いもギアがトップに入り、あとは苦いラストまであっという間でありました。
この映画、繰り返し観られることで愛され度が高くなっていったんじゃないかなあ。後半の展開と結末を観て、また初見の落ち着かなさを観客が感じない状態でないと、前半の主人公のどたばたを楽しい気持ちで観ることは難しいように思う。パルムドール取ってるとはいえ、ここまで誉れ高き名作ともてはやされているのには、そういう映画ファンによる消費の積み重ねがあるように思えました。
あるいは、これはもう本当に推測でしかないんだけど、第二次大戦後の時代の空気のなかでは、大戦によって負った悲しみや苦しみ、暗さを表現するときに、不条理な明るさや笑いが必要不可欠だったのかも。つい最近『卵をめぐる祖父の戦争』を読み終わったので頭に浮かんだ思いつきなんだけれども。『スローターハウス5』とかまあいろいろ傍証は多いかもしれない。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
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スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
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印象に残ったのはやはりオーソン・ウェルズ演じるハリー・ライム。いい悪役ぶりですなあ。傲慢なだけの男のようで、主人公に裏切られたときや、観念したときの表情は、覆い隠せない弱さを露呈している。でも決してすべての人の理解を容れる悪役ではない、という。このへんの塩梅はいろいろな悪役に受け継がれていそうです。