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こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

山田正紀『謀殺のチェスゲーム』

 ツイッターの再録ばかりでは虚しいのでたまにはレビューを書きます。

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)

 山田正紀の近未来サスペンス。新型哨戒機をめぐり、複数の陣営が入り乱れた争奪戦が日本を縦断して繰り広げられる。

 札幌に住んで五年になるけれど、いまだにぼくにとってこの街は異郷なので、フィクションのなかで札幌あるいは北海道が取り上げられていると無性に読みたくなる。ぼくが感じている異界のヴァージョン違いを閲覧できるんだろうなあという期待、っていうか。
 で、本作は事件の発端をすすきのとし、奥尻や函館などの道南各地を舞台とするだけでなく、新幹線が旭川まで通っているという近未来設定もあって、北海道フィクションとしては非常に充実した作品で満腹でした。札幌が冷戦下のベルリン化して南北に分かれているという東直己『沈黙の橋』の次にフィクショナルな北海道と言っていいんじゃないかな。

 物語の面白さとキテレツさはいつもの山田正紀節。ゲーム理論を取り入れたエージェント「ネオストラテジスト」なる人達が登場するのですが、かれらの方便がたのしい。ぼくはぜんぜん詳しいところを分かっていないので、もしかしたら笑うところじゃなくて無茶苦茶ハードな論理なのかもしれないけど。で、そういう頭でっかちな部分と、筋肉爆発なアクション、さらには甘酸っぱい青春物語も全部盛られていて大変すばらしい。ちょっとだけ、誰か映画化すればいいじゃないと思ったけど、まあこの妙味は山田正紀の筆でしか感じられないよなあ。