- 作者: 植村直己
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1977/01/25
- メディア: 文庫
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山に登ることには超人思想的な、なにかこう下界では触れられないなにものかを求めて極限に挑むこころというものがあるのではないかとそのころ思っていたんだけれど、登山家の頭の中のほとんどは実に現実的で即物的なんだよね。そりゃいまそのときの一挙手一投足が生死を分けるんだから、己の精神がさらなる高みにとか考えてられるわけはない。
この本も、冒険へのあこがれをうたいながらも、登山中の描写はまことリアルで、自らの行動や失敗を的確に述べて停滞することがない。次なる冒険への中途報告といったふうで文章が終わるのも、つねに前進し続けた根っこからの冒険家といった感があり、これはこれで趣深い。なんにせよ登山家はかっこいいなあ。