こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

メイド喫茶しんしあに行ってきたよ

 プリムヴェール亡き後、札幌にメイド喫茶の灯火なし..などと勝手に絶望していたおっさんを置いて、時代はきちんと動いていたのでありました..。
 一日限定メイド喫茶「しんしあ」http://sincerehp.web.fc2.com/に初めて行ってきたよ!とてもよかった!

 冒頭の遠い目な語りをちょっと解説。
 かつて札幌は狸小路に、カフェ・プリムヴェールhttp://www.bluegale.co.jp/primevere/というお店があったのでした。
 魅力的なメイドさんたちを抱えていたにも関わらず、メイドさんやおたく文化を全面に打ち出すことなく、むしろお茶や甘味のレベルの高さや、喫茶店としての雰囲気の良さをもって店の個性としていた、たいへんすばらしいメイド喫茶でした。質の高いサービスがメイドさんの手によって客に手渡されることが、結果としてメイド喫茶としての唯一無二の魅力を放っていたのです。

 もちろん最初はメイドさん目当てで行ったのだけれど、その喫茶店としてのレベルの高さに驚いて、半年くらいは毎月一度は通ったと思う。今の妻とのデートでも何回か行った。結婚したあとも、仕事中や映画のあとに時々行っては、お茶とお菓子のおいしさに毎度感服したものだ。

http://d.hatena.ne.jp/tegi/20080127/1201443905

 しかし、諸事情によりプリムヴェールは2007年末に閉店してしまいます。以後札幌における「メイド喫茶」は夜営業主体の店のみとなり、札幌市民が昼間営業のストロングスタイルなメイド喫茶を楽しむにはシャッツキステCure Maid Cafeのような本州の店舗へと足を延ばすしかなくなってしまったというのがここ数年の状況です。
 その後市内に新たに店を構えたところもいくつかありましたが、いずれも夜間営業を主体としており、それらのうちのいくつかに足を伸ばしてみても、ぼくの思うメイド喫茶とは別の世界が広がっていて、正直なところきちんとフォローしていくことはできないでいました。

 しかしね、ボブ・ディランも言うように、時代は変わるのですよ!

 今回お邪魔したお店:しんしあは、なんと北海道大学のサークルが非営利で運営しているとのこと。
 学生が儲け抜きでやっているからといって、なめちゃいけません。メイド喫茶を愛する人ならわかるとおり、メイド喫茶にとって一番重要なのは、メイドさんたちが客=ご主人様をもてなし、店=館を快適な場所にし続けようという心! その点、しんしあのひとたちは本気です。ウェブサイトではこううたってくれている。

sincerely(心から、真心をこめて)の言葉にあるように、 ご帰宅くださったご主人様・お嬢様に、心からのおもてなしをさせていただき、 心からのご満足を感じていただけるよう、日々、メイド・スタッフ一同 努力を続けております。

http://sincerehp.web.fc2.com/concept.htm

私たちが特に大事にしたのは「自分のお屋敷に帰ってきたような落ち着いた雰囲気」をいかに出すか。 
お料理は全て手作り。これもゆずれないポイントです。

http://sincerehp.web.fc2.com/memory/memory3.htm

 わ、わかってらっしゃる〜!サンキュータツオ教授ふうに)

 ウェブサイトによれば、今年6月の北大大学祭における出店が最初の活動のようで、今日ぼくがおじゃましたのは9月から毎月行われている一日限定開店の第三回目。
 場所はすすきののやや南寄り、飲食店が入っているビルのなかの一室でありました。一日から借りることのできるレンタルスペースを利用しているようです。エレベーターをあがってフロアに着くと、薄暗い廊下の先に板張りの店舗、そしてその前に立つメイドさん
 彼女に迎えられドアをくぐると、中はカウンター5席くらい、テーブル4人席×3つくらいのこじんまりとしたスペースでした。先客は男性二人組と女性が一人。ぼくは妻と二人で行きました。ぼくらの後には女性二人組が来店。満席になることはありませんでしたが、事前予約が必要なスペシャルメニューは完売となっていたようで、すでにしっかり固定ファンがいらっしゃる様子。
 詳しい価格体系やメニューはウェブサイトを参照ください。ぼくらはオムライスと紅茶、しんしあツリー(フランスパンをホワイトソースに浸したものを積み重ねたもの)とコーヒーをそれぞれいただきました。


 接客技術に飲食物、どれをとっても、この稿の前半で名を挙げた、メイド喫茶の名店を超えたとまで言うことはできません。いくつか残念だったところがないとはいえない*1。しかし前述したとおり、メイド喫茶がよきメイド喫茶となるための鍵は、結局はメイドさんたちです。彼女らが店のなかでいかに振舞うか。彼女らの振る舞いがどんな空気をつくりだすか。
 ぼくらに対応してくれたのはのあさんとみやこさんというメイドさんたちでしたが、たとえばお二人が同時に料理をテーブルに運んできたとき、粗雑にならず順々に行動していくところにみられたメイドさん同士のつながり感、お絵かきオムライスの絵のネタを出せずに狼狽した妻を適度にフォローする気配りなど、彼女らの挙動がこちらに与える印象は、それらの名店に勝るとも劣らない、よきメイド喫茶のそれでした。ゲームをしたり会話をしたりして目に分かる接触をしなくても、メイドさんはお客さんに感動を与えることができるんですよ。
 で、その感動が、たしかにそこにメイドさんがいるという実在感を客に与え、現代の日本のなんてことない街中の一角を、そのメイドさんたちでしかつくりえない非日常の空間にしてくれる。
 堪能しましたよ、もう。

 大学生の非営利運営というスタイルで、期間的にも質的にもどれだけのものが続けられるのか、とか、現在の札幌メイド喫茶業界のメインストリームを深く知らずにここまで熱くなっていいのか、とか、ぼくの評価に留保をすべき理由はいくつも見当たるんですけども、でもやっぱり、全力でいい店だったと言っておきたい。
 次回の開催もまた一ヶ月後に予定されているそうで、そのときが楽しみでなりません。

*1:例えば――i.料理が熱々じゃなかったのが惜しい。キッチンスタッフが充実すれば解決しそうです。ii.お金をメイドさんが首から下げている巾着袋で管理しているのはたいへんかわいいんだけど、その中からプラスチックの硬貨ケースが出てきちゃうのはちょっと..。