こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

池澤夏樹『叡智の断片』

 映画なり小説なり、登場人物が格好よく引用するさまには誰でも憧れると思う。
 小説の本文前や章のあたまに引用句がいくつも並んでいるのも格好いい。中学生が小説を書くと、本文より格好いい引用句を探すのに血眼になったりするんだよねー、ってそれはおれだよ!

叡智の断片

叡智の断片

 日本の人はあまり引用をしない。池澤夏樹はこの理由を、引用は自分の意見を補強するための行為であり、意見を言わず角を立てないことに腐心する日本人は引用を必要としないからだ、としている。
 私見するに、キリスト教圏の文化は、聖書がおおもとにあって、そこから社会のルールや人生観を引用することで育ってきたから、引用という習慣が身についているんだろうなあと思う。

 とはいえ、この本は20世紀以降の名言・迷言が中心で、堅苦しくなく、説教臭くもない。いや、池澤夏樹の独特のマジメさを説教臭いととっちゃう人もいるかもしれないけれども。ぼくは楽しく眺めました。