アメリカでの興行・批評ともにぱっとせず、そもアギレラ&シェールという顔ぶれからして何らかの暴走を含むであろう地雷映画かと思っていたのですが...い、いい映画じゃねえかよ! 観たのが年明けだから入れないけれど、公開日から考えれば、ぼくの2010年のベスト10に入りますよ! 少なくとも9位!ようするに『キック・アス』よりも上ですよ!
まずはっとさせられるのは、アギレラのかわいさ。この人こんなかわいい人でしたっけ。ブリトニー&アギレラよりちょっとだけ年下で、彼女らの絶頂期にTVKでPVをがんがん観ていた折も、かわいいのがブリトニー、歌のアギレラ、ってな印象でしたよ。なのに、映画前半、ステージに上がる前の彼女はきちんと「夢を目指して健気にがんばるいい子」というキャラクターにぴったりはまった魅力を振りまいている。
彼女の見せ方もすごくよくって、例えば彼女が田舎のバーを辞めるシーン。横暴な店主から不払いだった給料を奪って夢へと一歩踏み出すいっぽうで、同僚のシングルマザーに「お子さんが自転車をほしがってたでしょ」と自分の取り分から多めに渡す。しかし同僚は「自転車はまたの機会にするわ。店主のあしらいは私に任せておきなさい」とそのお金をアギレラの懐に戻して去っていく……。彼女のそれまでの暮らしや、働き振りを全く見なくても、この短いやりとりだけで、アギレラは夢を目指すいい子であり、同僚からの信頼も厚いということが一発でわかる。
もちろん、魅力的なのはアギレラだけじゃない。このへん、シェールをたてなくてはならない*1という義務感も大きかったかもしれませんが、脇役・悪役にいたるまで、ほぼ全員がなんだかんだあるけれどいい人として描かれ、アギレラ一人がいい目をみるということには決してなっていない。店を買収しようと目論むエリック・デインだって、事業家なりに筋は通ってるし、アギレラも全否定はしないんだよね。唯一、アラン・カミングの扱いはどうかと思いますけどね! もっと活躍してよ。一番長い出演シーンがアレってどうなのよ!さいてー!(笑)
そりゃ、恋人カム・ジガンデーとの顛末にしても、ステージでの敵役クリスティン・ベルにしても、ちょっとした混乱はあるし、決してスマートな作劇じゃない。ないけれど、いいのだ。シェールの化粧のように、分厚く泥臭く、義理人情とステージ精神を語ってくれればいいの! ていうか、どの役者も役にしっくりきすぎていて、目線だけでオッケー!とかそんなぐあいですよ! スタンリー・トゥッチの、あのDJとのやりとりとか最高ですよ。ああいう、胸がきゅんとくるような心と心とのやりとりがひとつの映画のなかで何回も観られるんだから、これをいい映画と言わずしてなんと言おう。
新年最初の映画がこれで本当によかったです。シェールとスタンリー・トゥッチにアラン・カミングのトリオを固定にして、シリーズ化したらどうか。毎年正月にやるの。たぶんっていうかぜったい無理だろうけど。
あ、真面目に今後のことを言うと、監督のスティーブン・アンティンはディズニーでミュージカル映画を準備しているとのこと。ミュージカルの演出はまだまだがんばってほしいけれど、全編に多幸感をあふれさせているのは大きな才能のあらわれのはず。心底期待したいとおもいます!
*1:エンドロールもシェールが先、最後にかかるのもシェールの曲という気の配り方..。