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こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

世界を知るよろこび『塔の上のラプンツェル』


 上映終了後、うしろにいた30代女子たちが「すごいねディズニー!90年代の黄金期復活キター!」とか大騒ぎしていたんだけど、お前らの目は節穴ですか、昨年の『プリンセスと魔法のキス』は観てないんですか、と言いたくなった。
 でもまあ、ぼくも90年代には姉といっしょに『美女と野獣』『ライオン・キング』『アラジン』といった作品群をおおむねリアルタイムで観ていたので、その喜びわからないではない。音楽もアラン・メンケンだし。

 当時のぼくにとって、ディズニーアニメとは世界最先端のすげえ技術をぶちこんだたいへん楽しい特撮的見世物であった。
 『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』冒頭のオーストラリア大平原描写や、『美女と野獣ダンスホール描写などで華々しく使われていた3DCGをビデオで繰り返し観た記憶がある。当時の、ディズニーアニメとハリウッドアクションにおける日進月歩な空気って、今考えると貴重だった。いまやどんなVFXも人を驚かせることは難しいけれど、当時は、観客は物語にわくわくすると同時に映像そのものにもわくわくできたのだ。スクリーンに映しだされる未知の映像に驚くことが、そのまま劇中の人物たちが物語内世界に驚くことと重なりあい、観客と登場人物たちが同じ驚きを共有していた。
 IMAX3Dで観た『塔の上のラプンツェル』は久々にその驚きを体験させてくれた。視界を埋め尽くす映像に、全身に浴びせかけられる音、そして自然な立体表現。塔を出たラプンツェルの、一瞬ごとに感じる世界への驚きと喜びが、手にとるようにわかる。
 その驚きは、映像技術の草創期ゆえの仇花的な娯楽であり、それが体験できないからって2D映画そのものの魅力が尽きるなんてことは決してないのだけれど、これはこれでやっぱりとてもステキなもんだ。国内でも珍しいらしい充実したIMAX3D施設をそなえたユナイテッド・シネマ札幌には、心から感謝したい。

 物語の骨子は、母と娘の戦いと、夢を追うことのふたつ。頭をからっぽにしても隅から隅まで楽しめるうえに、ディズニーアニメの主な観客であろう若い女の子の抱える問題に真正面からぶつかる姿勢には感嘆せざるをえない...とか思うんだけど、実際、若い女の子にとってこういうお話ってどうなんだろう。母親が悪者すぎないか、いやでも描き方には愛情があったからいいのかな、などといまだどうとらえていいのかわからず戸惑っている。一緒に観た妻に訊いたら「まー、人によっては辛いテーマかもねー」などと言ってたのだが本心はどうだかわからない。
 男の子としては、責任を負えないでのうのうと生きるへらへらした小悪党でも、愛する者のために全力で戦えば「王子様」になれる、という結論にたいへん励まされたのですが。ってそれ、いまの日本の、ダメ男主人公物語と重なりあってね?というわけで、普段ジャパニメーションしか観てない男の子も親しめるのじゃないかしらんとも思う。

 …ってのはまあ妄言としても、たとえば塔から初めて外界に出たときの「外の世界さいこう!」というはしゃぎと、「決まりを破った私さいあく…」という落ち込みを猛スピードで繰り返すラプンツェルのかわいさは一見の価値あり。2Dで予告編を観るとラプンツェルの瞳の大きさなどがちょっとアンバランスに感じられるけれど、3Dだとちょうかわいいので!肌の質感はちょっと合成樹脂っぽいので、フィギュアが動いているような感触もある。
 フライパンで殴打とか髪で緊縛とか、女の子にいじめられたいという変態紳士のニーズもぞんぶんに満たしてくれるので、マクロスとか攻殻とかのついでに観るのはいかがでしょうか。