こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

2011年の映画ベスト10

 ようやく2011年の映画ベスト10を決めたので粛々と発表していきます。なお、対象本数は76。相変わらずの少なさです。


 今年観たアメコミ映画でいちばんぐっときました……とはいえ『マイティ・ソー』は観逃したんですが。
 いつも凡打で終わっていたライアン・レイノルズが、予想外に等身大にかっこいいグッドガイぶりを発揮していた。
 第二次大戦で対ナチス、と現代アメコミ映画でも上滑りしにくい背景を、しかも『ロケッティア』という成功体験も持っているジョー・ジョンストンが撮ったというのに『キャプテン・アメリカ』がいまいちだったのにたいして、スペースオペラでタイツ姿ヒーローというマイナス要素を背負ったグリーン・ランタンがここまでよかったのは本当にえらい。レイノルズの快活かつボンクラな魅力と、彼をいかした父子の憧憬の物語が成功の要因だったと思います。

  • 9位『エンジェル・ウォーズ』


 すでにたっぷり書きましたので略しますが*1ザック・スナイダーの今後のシャマラン的活躍に期待しています。『マン・オブ・スティール』、大丈夫かなあ……。

  • 8位『世界侵略』


 「『ブラックホーク・ダウン』はサイコーだけど、やっぱり敵があれだけ人として描かれないのは…そのう…」と口ごもってしまうめんどくせえ私のような文化系ボンクラとしては両手をあげて大喝采な映画でした。ソマリアの人たちは気の毒だけど、侵略してきた凶悪な宇宙人ならぶち殺して問題なし!海兵隊のみなさん遠慮なくどうぞ!という。
 中身がないなんていう批判があるらしいですが、ミシェル・ロドリゲス先生の的確な使い方とか、細かく再設定されては物語を盛り上げていく主人公たちの目的とか、けっこう気配りが行き届いて、これはこれで一つの達成と言えるんじゃないかなー。これが空疎ってんなら、何なら満足なの?と思う。


 逆にこれは頭をヘンなところにばかり使ってしまった娯楽大作でした。マイケル・ベイのキャリア総決算映画として大傑作(もちろんまともな「映画」としては駄作)。
 ぼくは彼のカジュアルな陰謀論が大好きなんですが(『ザ・ロック』のケネディ暗殺ネタとか)、今回の月面ネタ&チェルノブイリネタは本筋に絡んでるのにすごーく薄っぺらくてたいへん楽しかったです。
 他、シャトル打ち上げ、高速道路アクション、などなどベイのいつものネタが3Dという無駄なプラスアルファを得ていきいきとスクリーンの中ではじけていて、いままでベイを好きでよかった……!と思いました。


 2011年のぼくの趣味活動を決定づけた一本。これと『X-MEN ファースト・ジェネレーション』、来年の『裏切りのサーカス』のせいで私のなかのスパイ好きが高まり、一時期DVDでスパイ映画を集中して観ていたのは本ブログでもすでに紹介している通り。他にもおもしろいスパイ映画が盛りだくさんで、『ボーン』三部作の蒔いた種から、タイプの異なるスパイ・冒険ものが大量に芽生えているのがここ数年、ということなのかもしれません。
 なかでも本作は、『ボーン』と『007』を意識しつつ、トム・クルーズのスパイ映画におけるキャリアを反映させ、シリーズ本来の魅力であるチーム感を取り戻す、という現時点で本シリーズに求められるほとんどの要素を満たすという偉業を成し遂げているのだった。
 チーム感といえば、シリーズ一作目ではチームが早々に崩壊するわTVシリーズのあの人を悪役に仕立てるわでトム・クルーズは古参ファンから批判を食らったわけだけど、十余年を経て自身を中心に新たなチームを生み出したことで、彼はその批判をみごと打ちかえしたと言えましょう。
 アキバで買えるIT系ガジェットと、ロシアで買える軍事闇市系ガジェットとを適度に配分することで、スクリーンのこちら側のおれたちへスパイ映画のわくわくを再びプレゼンしてくれたという意味でも、すばらしい映画でした。じっさい自分、スマートフォンに替えちゃったもの!

 なお、このあたりからの順位はその日によって変わります。
 ここ数年、今年はコレだ!という映画が必ず何本かはあったんだけれども、2011年においてはそういう手触りの映画がありませんでした。311がどうこうとかでは決してなく、単にそういう年だったということなのでしょう。でもだからといって好きじゃないわけではもちろんなし。


 音楽にヴィジュアルエフェクトにポップカルチャーの引用に、過剰(だけどウェットにはならない)演出をほどこして純な愛の物語を紡ぐ、エドガー・ライトによる『ムーラン・ルージュ』。セックスとか愛とかについての情熱と冷静さが共存している感じ。カナダの寒い情景も、札幌在住のボンクラ魂に響きました。
 10代で観たら絶対ダントツで一位にしていたであろう、童貞フィーチャーな内容だけど、20代後半の自分が観てうんざりしなかったということは、童貞のためだけの映画でもないはず。そろそろエドガー・ライトはこれまで撮ってきたジャンル映画/ジャンル愛映画から一旦離れた映画を撮ってくれてもいいんじゃないのかな。


 昨年の『プリンセスと魔法のキス』には及ばないものの、いまのディズニーによるお姫様ものがいかに豊かな時代を迎えているかを示す傑作。男の馴れ合い映画*2ばっか撮ってないでお姫様ものをもっと作れよラセター。
 IMAX3Dで観たことももちろん加点の要因。『トランスフォーマー ダークサイドムーン』とあわせ、IMAX3Dの異常な映画体験に打ちのめされました。ラプンツェルは演出的にも映像的にもじつにかわいく、もう萌えは日本の専売特許じゃないと思った。ランタンのシーンふくめ、今年の映画のなかでもっとも美しい一本でもありました。

  • 3位『ミッション:8ミニッツ』


 終盤にこれでもかとぼくの大好物が連発されるので、観ていて死ぬかと思いました。『月に囚われた男』と比べて考えると、SF的大ネタも人間讃歌も、もしかしてダンカン・ジョーンズの本来の趣味よりは少し大味なのかなと思わなくもありませんが、ぼくはこちらが好き。


 映画館で三回も観たのでランクインさせないわけにはいかない。いやむしろ1位じゃね?と思っていたのですが、単独で成立している1位と3位の映画に比べ、TVシリーズに劇場版前編、中島愛・May'nのサクセスストーリーといった映画外のことがらとの結びつきが強すぎると判断し、この位置にしておきます。
 311が関係ない感じのランキングとはいえ、この映画に関しては3月〜5月にかけくり返し観、サウンドトラックを聴き込んでいたことにあの災害の影響がなかったとは言えない。騒がしい状況の中、快いものに触れたくて、劇場に通っていたのでしょう。
 ミュージカル映画としての快感、声優・歌い手たちのハーモニー、ジャパニメーションならではのバカなテンションなどなど、本当に気持ちのいい映画でした。

  • 1位『ザ・タウン』


 期待しすぎもあって初見時は全面的に肯定しなかったのですが*3、2月に観ていらい一年の間でもっとも繰り返し考えていたのはこの映画のことでした。
 繰り返すけれど、今年のベストは絶対にこれというものがなく、その日の気分でころころ変わります。つい数分まえまではマクロスを一位にしようと思っていたし。
 だから、一ヶ月後くらいに「去年一番好きな映画って何」と訊かれたらもしかしたら『ミッション:8ミニッツ』とか『マクロスフロンティア』とか応えちゃうかもしれない。でも現時点で一番愛しているのはこの映画です、たぶん。

 では最後にもう一度おさらい。

1.『ザ・タウン』
2.『マクロス・フロンティア サヨナラノツバサ
3.『ミッション:8ミニッツ』
4.『塔の上のラプンツェル
5.『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』
6.『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル
7.『トランスフォーマー3』
8.『世界侵略』
9.『エンジェル・ウォーズ』
10.『グリーン・ランタン

 上位は入れ替え可能と書いたけど、それぞれの映画が、それぞれのジャンルや関連作を代表している感じもする。『ミッション:インポッシブル』はもちろんスパイ映画を代表してなんだけど、『ザ・タウン』は『ソーシャル・ネットワーク』『復讐捜査線』『カンパニー・メン』というボストン映画、『ファースター』『ラスト・ターゲット』というハードボイルド系犯罪映画、といったあたりの、自分のなかの盛り上がりを反映している。
 次点をあげるとすれば『メアリー&マックス』なんだけど、ここに入れなかったのは、そういう他の映画やジャンルとの結びつきを自分のなかで作れなかったことによる。今年はシアターキノにあまり通えずハリウッド大作ばかり観ていたので、そういうことになってしまったんだと思います。ちと残念でもある。

 実は今年の後半からちょっと鑑賞本数が抑え気味になっている。
 単純にお金と時間がない、というだけのことですが、でもまあいっか、とも思えていて、案外2012年はもっと観る本数が少なくなるかもしれない。老けちゃったのかなあ、自分。そのぶんDVDで過去作(とくにスパイ映画)を振り返る作業は続けたいものです。

 最後はしんみりとこの曲でおわかれ。

*1:http://d.hatena.ne.jp/tegi/20110417/1303017677

*2:カールじいさんの空飛ぶ家』『カーズ2』。このいまいちな二作がある以上、もうピクサーの権威ってほとんど無いと思うんすけど、今の持ちあげられぶりってなんなの。

*3:http://d.hatena.ne.jp/tegi/20110213/1297572406