こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

もやしっ子よ宇宙をめざせ『ジョン・カーター』


 目覚しい武勲を立てながらも、山師に落ちぶれて金鉱を探す元南軍兵士ジョン・カーターは、ネイティブアメリカンと政府軍の小競り合いに巻き込まれて山中に迷い込む。そこで彼が見つけた洞窟には、火星へと繋がる謎の遺跡が存在した..。

 なんだか「筋肉美を単純明快に楽しもう」*1なんていうレビューもあって、まあたしかに単純明快勧善懲悪脳内筋肉な映画には見えるんですが、違うんだよ! ちっげーんだよ!裏声で)
 世界でいちばん、脳内ぜんぶ筋肉な人だと思われてたシルベスター・スタローンが『ランボー 最後の聖戦』でみせた苦悩と思考を世界のみなさんは忘れてしまったのでしょうか。もうさ、アメリカの文化をそういう文脈で片付けちゃうのやめようよ。
 自分の無力さを一度思い知ったため、何度も戦いを避けようとするヒーロー:ジョン・カーターを見よ。世界を救うため科学の研究にいそしむヒロイン:デジャー・ソリスを見よ。これはまごうかたなきナード/オタクの姿に他ならず、そこに息づいているのは、世界に圧倒され怯え、また同時に好奇の眼を輝かすもやしっ子たちのマインドだ。そして、力をもって活劇を演じるヒーローのみならず、その物語を語り伝える語り部たちへのリスペクトだ*2

 この映画のすみずみに満ちた心遣い、たくらみの詳細についてはパンフレットの各種解説を参照されたい。カーターの人間性と過去が少しずつ描かれ、中盤で爆発的にエモーショナルなアクションシーンに結びつくのは本当にすばらしい演出/構成だった。ボロ泣きしたあと3Dメガネのせいで目が拭けなくて困ったよおれは。

 3Dといえば、そろそろ実写、とくにジャンル映画をIMAX3Dにこだわって観る必要はなくなってきたかな、という印象をもった。IMAXカメラで撮影されている部分もなかったようだし。
 むしろこの古風な活劇映画は、夜中の小さな劇場で、「映画館で観ている」ということを意識しながら味わうべきだったかもしれない。このあたりは非常に個人的な感覚ですが。

 なお、原作は未読で観賞しました。
 たぶん子供向けリライト版は読んでいると思うんだけど、はっきり記憶には残っていない。東京創元社武部本一郎表紙も、たぶん部屋のどこかにはあるけれどちゃんと読んでいない。
 絵として一番記憶に残っているデジャー・ソリスといえば、こちらの山本貴嗣版。かわいいっすよねえ。山本先生のオフィシャルサイト「あつじ屋」では、より露出の多い没版もみることができる*3

火星のプリンセス (冒険ファンタジー名作選(第1期))

火星のプリンセス (冒険ファンタジー名作選(第1期))

 しかしまあ、30歳目前でこんなこと言っててなんですが、ほんと、てらいなく堂々と語られるスペースオペラっていいっすねえ。燃えるし萌えるしエロいしでもう最高じゃないですか!
 まさかとは思いますが、もしかして今、スペース・オペラ大復興の機運が高まっているんでしょうか。昨年の『グリーン・ランタン』に続き、パルプなSFの代名詞的存在がビッグバジェットで映画化、しかも大成功してるんですから*4。ハリウッドよ、いいぞもっとやれ。まあ無理だと思うけど、次は『レンズマン』映画化をひとつよろしく!

*1:http://www5.nikkansports.com/entertainment/column/moviereview/archives/26985.html

*2:ユダヤ警官同盟』のマイケル・シェイボンが脚本に関わったときいてなるほどと膝を打った。『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』も思い出す。そういうミクスチャー文学好きも楽しい映画じゃないでしょうか。

*3:http://www2.ttcn.ne.jp/atsuji-ya/princess-of-mars.html

*4:興行的には失敗らしいけど。