こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

4月に読んだ本

2012年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2922ページ
ナイス数:16ナイス

ナイロビの蜂(上) (集英社文庫)
ウッドロウの視点から物語をはじめるあたり、まあ本当に小説がうまい人というのはいるもんである。じりじりと状況が描かれていくなか、岩盤から滲み出る水のように漏れだしてくる主人公ジャスティンの想いと記憶が、痛切で美しい。ジャスティンとテッサが恋に落ちるくだりのみずみずしさも好きだ。
読了日:04月01日 著者:ジョン・ル・カレ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18343701

■行きつけの店 (新潮文庫)
先生、自分はそんな店行きつけにできないすよ、という敷居の高いお店がそれなりに含まれていても、決して、反感をおぼえないのはきっと書き手のおかげ。最終的には、店のひとびとのアティチュード、またかれらと客との関係性こそがいちばん大事なんだよね、と説く山口瞳、そして解説の重松清の言葉に大いに頷くのだった。
読了日:04月01日 著者:山口 瞳
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18564793

ナイロビの蜂(下) (集英社文庫)
物語の冒頭で、主人公ではなくウッドロウを最初に読者のまえに提示したことが、後半になればなるほど効いてくる。つきつけられる、読者/傍観者への告発。ラブストーリー/復讐譚としての痛切さに、作者の怒りが重なり、常に文章の後ろで炎が燃えているような感覚をおぼえる。こんな結末であるにも関わらず、読書の喜びと爽やかな読後感を損なわない技巧に唸った。すばらしい小説だ。
読了日:04月09日 著者:ジョン・ル・カレ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18343771

■スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))
決死の戦いを行うパリの老婆がいい。彼女と同様、今作はスマイリーの闘気にもいつにない熱さが感じられ、読中の感情的な盛り上がりは三部作中最高かもしれない。結末の一抹の寂しさはその反動か。スマイリーも自覚する、彼とカーラの相似形は、単純でわかりやすい構図ではあるのだけれど、スマイリーとアンの傷つけあう関係が、その関係性の結果生じた悲劇をあまりにも細やかに描くものだから、強く深く受け止めざるをえなくなる。小説の力というものを改めて感じた。
読了日:04月19日 著者:ジョン・ル・カレ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18343862

■嘆きの橋 (文春文庫)
すでにこの世の暗黒を見知った若者が、更に周到かつ巨大な悪と対峙する。爽やかな成長譚と、ノワールとの魅力がみごと融和された傑作と思う。陰鬱な開幕をみせる小説ですが、徐々に登場人物たちがみせてくれるユーモア、哀しい魅力は、そこにいたるまでの辛さゆえに、一層愛おしく輝いてみえるはず。多くの人にすすめたいという熱をもった関口苑生の解説にも、納得。
読了日:04月26日 著者:オレン・スタインハウアー
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18563846

■乱気流〈上〉 (新潮文庫)
独自の気象解析法を編み出しながら、平和主義ゆえに軍部への協力を拒む科学者からその秘密を聞き出す――という国内諜報のプロットは、胸踊ると同時に、この状況なら国家は多少の無茶な手段を使ってでも協力させるのでは..とも思ってしまう。ま、科学者の回想譚という体裁をとって、そのへんののどかさも「味」にしているのですが。科学者の妄想する、六万四千人の計算者によって気象をモニターし予測する、アナログな地球シミュレータのようなアイディアがおもしろい。『ディファレンス・エンジン』みたいだ。
読了日:04月29日 著者:ジャイルズ フォーデン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18554048

■乱気流〈下〉 (新潮文庫)
最後に示される枠物語の構造が、それまでの物語のたどたどしさを正当化する――と言えはすれど、そこに喜びを感じさせるには、著者(あるいは訳者?)に魔術的な語りの技能が足りなかったと言わざるをえない。Dデイ直前の雰囲気は活写されており、情感たっぷりのクライマックスもなかなかいいだけに、残念。
読了日:04月29日 著者:ジャイルズ フォーデン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18563300

■戦うボーイ・ミーツ・ガール―フルメタル・パニック! (富士見ファンタジア文庫)
10代の傭兵相良くんもフィクショナルだけど、ヒロインかなめちゃんの肝のすわりっぷりもそうとうにフィクショナル。そうそう、ボーイ・ミーツ・ガールはこうでなくっちゃ。ミスリルケレン味あふれる軍事作戦にも熱くなる、さすがの名作。シリーズ通して読んじゃおうかしら。
読了日:04月30日 著者:賀東 招二
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/18600996


▼2012年4月の読書メーターまとめ詳細
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