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こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

職場がなくなったあとのことは考えない『トータル・リコール』

映画 俺スパイ感探求の旅


 『トータル・リコール』を観てきました。
 バーホーベン版は昔日曜洋画劇場で観たきりですが、夢か現実かをあんまり悩んでない映画という印象。今作もおおむね前作と同じ雰囲気を保っています。
 スパイもの愛好家としては、すべては妄想であり、スパイワナビーが自分をスパイと思い込んでいるだけかもしれない、というネタにこそ面白みを感じるのですが、そこで現実と妄想がぐらぐらするような映画を作ろうとしてもハリウッドのビッグバジェットじゃ無理、ってことなんでしょう。
 せっかく「労働者を支配する通勤列車の破壊」がクライマックスになっているので、あとほんの少しだけでも変なほうへ振れていれば、全サラリーマン感涙のスパイワナビー映画になっていたんじゃないかなあと残念な気もします。

 それでも、荒唐無稽なディストピア(わざわざ地球の反対側から労働者調達せんでもええやないの)、自己のアイデンティティに迷うようで迷ってない脳天気ぶりなどをニヤニヤ笑いながら楽しむことができました。なんかすごく馴染みのあるお味ですね、と思ってたら、脚本カート・ウィマーじゃねえの。みんな大好き『リベリオン』の人ですね。『ソルト』に『リクルート』に、この人、非主流な(わりあいグダグダになりがちの)スパイ映画プロパーの人なのかもしれない。これだけ何度もやってるんだからもうちょいマシなものを作ってくださいよという気もしますが。

 監督のレン・ワイズマンもいつもどおりの派手なアクションを楽しそうに作っています。ごみごみした「コロニー」での追跡シーンが、ケイト・ベッキンセールのT-Xみたいな女追跡者ぶりがいきいきしていていちばん印象に残りました。朝日をバックに画面奥で仁王立ちするところとかいい絵でしたね。

 ただ、アメリカでは見事にコケているそうで、確かに多数の話題作が公開されている今年の夏に、これといった売りに欠ける本作が売れないのは仕方ないかもしれません。細かいところの変更は多いし、多彩なアクションは楽しいけれど、でもこれならシュワちゃんシャロン・ストーンでいいや、という気もしてしまう。
 ぼくが思うに、前作も本作もこの映画の致命的欠陥は「どっちが現実でも美人が待ってる」というところ。
 そりゃ、ケイト・ベッキンセールジェシカ・ビールが主人公を取りあってキャットファイトするさまは、ゲラゲラ笑いながら観る分には楽しいけれど、アイデンティティ・クライシスで苦悩する主人公に共感する邪魔になってしまう。
 ここは、「ひどい状況だけど正義や信念のためには立ち向かわざるをえない現実」と、「すごく居心地がいいけどなにかが間違っている虚構」とを対立させないといけません。
 そこで考えたのは、ジェシカ・ビール演じるレジスタンスの闘士を、ダメなボンクラ野郎にするという案。演じるのはジャド・アパトウ組の誰かとか、『コンスタンティン』のときのシャイア・ラブーフみたいな丁稚奉公ふうの新人俳優でOK。個人的にはショーン・ウィリアム・スコットがおすすめです。レジスタンスのリーダーはもともとビル・ナイなので、彼がもっと堕落した感じで演じればよろしい。
 どう考えても勝ち目なしで、拙い理論としょぼい装備でせこい戦いをしているレジスタンスと、ぴかぴかの装備に、美辞麗句で飾った政府軍。それでも反抗する側を選ぶ、となればこれは断然燃えてくるじゃないですか。レジスタンスのボンクラ闘士とのブロマンス成分も投入できて、一気に映画はテン年代のフレーバーに。

 で、けっこうこれってイケるんじゃないの、と思ったので、プロットまで書いてしまいました。

  「ぼくの考えた『トータル・リコール』」/「tegi」の小説 [pixiv]
   http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1358492

 ソニー・ピクチャーズさん!三回目の映画化用に買っときませんか!安くしとくよ!
 (ちょっとギスギスした雰囲気が『レポゼッション・メン』みたいになっちゃったけど...。)