こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

『天使は容赦なく殺す』

 『スカイフォール』の日本でのヒットには、昨年ジェフリー・ディーヴァーによる『007/白紙委任状』が邦訳され話題にのぼっていたことも影響しているはず。あれはあれでたいへん面白い小説ですが、『スカイフォール』のあとに読む現代スパイ・フィクションとしてはこちら、『天使は容赦なく殺す』がおすすめ。

天使は容赦なく殺す

天使は容赦なく殺す

 ロンドンの地下鉄で同時多発テロが発生、大量の犠牲者が出た。イギリス政府はこの報復として、情報部工作員タラ・チェイスを中東へ派遣。イスラム原理主義者の暗殺を実行させるのだが……。
 表紙を見ていただけるとわかるとおり、主人公のチェイスは女性工作員ジェームズ・ボンド同様、「殺しのライセンス」を与えられた特級のエージェントです。
 作者のグレッグ・ルッカは『守護者』などで知られる人気作家。本作に登場するタラ・チェイスはもともと、彼の関わるアメコミシリーズ"Queen & Country"*1の主人公として創造されたキャラクターです。
 壮絶な地下鉄テロ、ケレン味ある女主人公の活躍と、派手な味わいもありつつ、序盤、タラ・チェイスに暗殺任務がくだされるまでに延々政府内で続く調整と決断のドラマはおそらく、ジョン・ル・カレをはじめとするイギリスのスパイ・フィクションを模したもの。
 タラ・チェイスと彼女をサポートする男たちのあいだの、冷徹と情感の度合いもいいあんばいです。正直に言うと、その異性間の描き方の、男性読者のための戦闘美少女としてのタラ・チェイス、みたいな部分にモヤモヤを感じないではなかったことも事実ではあるのですが。
 実はいま手元にこの本がないので、そのへんを改めて確かめきれていないのですが、そういった減点の可能性を考慮したとしても、じゅうぶんおすすめの一作です。