最後は最新の映画で〆ましょう。今年の秋に公開されたばかり、『デンジャラス・ラン』です。
凄腕工作員として名をあげながら、組織を裏切り長年逃亡していた元CIA工作員フロスト(デンゼル・ワシントン)がついに南アフリカで拘束された。彼を一時的に留置するセーフハウスの管理人としてその尋問に立ち会っていたケープタウンの若手駐在員ウェストン(ライアン・レイノルズ)は、突如セーフハウスを襲撃した謎の男たちから自らとフロストを守るべく、組織のバックアップもないまま壮絶な逃亡劇に身を投じることになる。
ボーンにボンドにMIGP、スパイ映画業界はお祭り騒ぎのここ一年でしたが、ぼくが暫定的ベストに推したいのはこちらの映画。
撮影監督のオリヴァー・ウッド、第二班監督のアレキサンダー・ウィット(『スカイフォール』にも参加しています)という撮影スタッフ陣に、ジョン・パウエルっぽいラミン・ジャヴァディの音楽、そして南アフリカというエキゾチックなロケーションなどなどなど、とかく最近のスパイ・フィクションの流行――というか『ボーン』シリーズの美点を忠実になぞった映画ですが、物語の中心に、デンゼル・ワシントンとライアン・レイノルズの新旧スパイ間の世代間引継ぎという『ボーン』ではまったく触れられなかった要素を据えたことで、際立つフレッシュさを獲得しています。
倫理と保身のあいだで葛藤するウェストンと、人生の決着をつけるべく無謀な戦いを続けるフロストのドラマは、途中やや語り口が混乱しはするものの、近年まれに見る俺スパイ感の高いエンディングに向かって突き進みます。最後に流れるJay-Z&カニエ・ウェストの"No Church in the Wild"がまたかっこいいのなんの。
困難な状況で、自らの信念のため、決して苦労を外には見せずに暗闘することを決意する男たちの姿は、『スカイフォール』のジェームズ・ボンドに重なります。
ダニエル・クレイグに比べると、ライアン・レイノルズもデンゼル・ワシントンも色気の点じゃ劣りますが*1、その華麗じゃないところがまた個人的にはグッとくる。
決して瑕疵のない映画ではないので、大声では言いませんが、おすすめです!
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