こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

2012年の映画ベスト10

 2012年、映画館で観たのは合計50本。
 観るべきだったのに観てなくてごめんなさい映画は『ドライヴ』『アウトレイジ・ビヨンド』『崖っぷちの男』『マルドゥック・スクランブル/排気』あたりでしょうか。つーか毎年多すぎですね。
 50本のなかからベスト10、というのは自分でも「分母少なすぎ」とは思えど、自分にヒットするだろうなーという映画はそれなりにちゃんと観れているので(前述の5本除く)、これ以上分母を増やしても結果はそう変わらなかったように思います。
 ただ、そういう決め打ちが大半を占めたぶん、意外な映画に心揺さぶられる、というチャンスを自ら逃してしまっていたかもしれず、それは反省したいと思う。
 や、でも、『ゴティックメード』とか『明日泣く』とか、妻の趣味に付き合ったおかげでその枠もそれなりに充実してたのか。うーむ。なんにせよもっと多く観ることに越したことはないはずなので、2013年は毎月5本を目標にしたいと思います。

 そうそう、今年は酔狂で前期ベスト5を決めていました。
 でも、今回はこのベスト5をほぼチャラにしています。年間ベストに残らなかったものも多いけど、そのへんはすごく迷いました。たぶん日によって変わる。

 では参りましょう。

  • 10位『スーパー・チューズデー』


 『ドライヴ』は観逃したものの、まあライアン・ゴズリングはこれ一本でも充分満足ですわ…というわけにはもちろんいかないのでしょうが、でもとても満ち足りた気分になれる色気あるサスペンス映画でした。


 お祭り映画枠で『バトルシップ』と迷ったのですが、カラッポぶりと酔狂さがより度を越しているほうを選びました。トム・クルーズの最近の充実ぶりは異常ですね。ほんと愛してる。

  • 8位『サイタマノラッパー3/ロードサイドの逃亡者』


 見事な三部作の完結ぶりに。
 あれだけ多様な長回し、あれだけリッチなライブシーンをキメられたらもう賞賛するしかないです。奥野瑛太さんをはじめとする主演陣の、一瞬一瞬に全てが賭けられたような前のめりの演技にも打ちのめされました。


 観ていた歳が違ったら生涯ベストになっていたであろう映画。
 当初は「俺の映画!」と叫びまくっていたのですが、時間が経ってみると、愛してはいるけどちょっと距離を置いて愛したいたぐいの映画になったようです。でももし観返す機会があったらまたぎゃーぎゃー騒ぐと思う。すばらしい映画でした。

 なお、この位置には『ヤングアダルト』とも入れ替え可能です。

 あれも大好きな映画なのですが、観てしばらく経った今では「あのボンクラ男、シャーリーズ・セロンとセックスできて超羨ましいな」とかそういうゲスな感想が先に浮かんでくる体たらくなのでベストに入れるのが憚られ、除外いたしました。

  • 6位『ブラック&ホワイト』


 じゃあ君はいまどんな映画なら熱く語れるの?と訊かれたらもちろんこういう映画を挙げます。
 『ナイト&デイ』とか『ゲット・スマート』とかね、こういう楽しくエロいスパイ映画を毎年観続けられたらもうなんにも言うことないよね…。
 McGの手腕は笑いもアクションも全く衰えていないことがわかったので、ぜひこの路線で今後もがしがし映画を撮ってほしいものです。


 お前、あれだけ騒いでいたのにこの位置かよ、と自分でも思うのですがまあこのへんです。もちろん、ほんとうに素晴らしい映画、素晴らしいボンド映画です。でもまあそういうこととぼくの偏愛とは話が違う。あと、ぼく以外にも褒める人はたくさんいると思うので。
 同じ理由で『裏切りのサーカス』もあまり高い位置には入れませんでした。あれも大好きな映画ですけど。


 本と人との関係を、抽象的にも具体的にもなりすぎず、プリキュアでこそ、子供向けアニメでこそ可能なかたちで描ききった傑作。
 偏愛する『ハートキャッチプリキュア!』に比べると破壊力は少なかったものの、春の『プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』と合わせ技一本で4位です。

  • 3位『アルゴ』


 過去二作に比べるとよりタイトに、より万人受けする形で、でも作家性は失わずにヒット作を生み出したベン・アフレックに拍手、ということで上位入賞。
 CIAが誇れる成功譚を、娯楽映画の価値観に沿って脚色しつつも、一部の人が見当違いに批判するような米国単純礼賛映画には決して堕さずに撮りきったバランス感覚が素晴らしい。アメリカの美点を、アメリカの堕落に足を取られずに語れる、という意味でやはりこの人はイーストウッドの後継者なのだと思います。
 ただ、「この成功(そしてこれからしばらくのキャリア)はあくまで『ムーンライト・マイル』映画化のための道程に過ぎないからねベンアフ……まだまだゴールは遠いよ……」というたいへん気持ち悪い理由で3位に留めておきました。ぼくはずっと待っていますよ……。


 中盤のクライマックスがほんとうにすばらしかったので。わんわん泣いた。
 大作ゆえのダレ場はあれど、めっぽう楽しかったし、今年もっともホラ話としての物語の強度を感じた一作でした。こういう大ロマンを観せてもらうためにぼくは映画館に通っているのです。
 この映画もまた『アルゴ』同様に、アメリカの美点を、アメリカの堕落に足を取られずに語った映画だったのかもしれません。


 これで本当にいいのだろうか……。
 実はいまだに自信がありません。秋に観てから数ヶ月、この映画のことをつらつら考えている*1うちに好きの度合いが高まってしまい、結果1位にしてしまいました。
 せめてもう一回観直して決めるべきところではありますが、まあ所詮ぼくのランキングなのですから、勢いで決めてもよいでしょう。

 ボンドだル・カレだとさんざ大騒ぎしたスパイ映画大豊作の2012年でしたが、ぼくがもっとも楽しく観れる、熱く語れる映画はこれでした。
 昨年の『グリーン・ランタン』に続いて、ライアン・レイノルズの「30代だけどいまだ何者にもなれていない男」に心を持っていかれました。そして、圧倒的で理不尽な強さを持ちながらも、奥底の愚かさや弱さをおもむろに露にしてしまうデンゼル・ワシントンにも。
 ぼくにとって、スパイ映画というのは、組織のなかで多少なりとも理不尽を感じながら働く人間のためのロマンなのです。それは時にぼくを力づけ、より狡猾になれ、死力を尽くせ、と背中を押してくれる。
 そういう意味で、ぼくが今年一番好きなスパイ映画であり、好きな映画がこれでした。

 以上十本、ざっくり振り返ってみました。
 改めて並べてみるとまあ、自分らしいことは確かですね。

1.デンジャラス・ラン
2.ジョン・カーター
3.アルゴ
4.スマイルプリキュア!
5.007/スカイフォール
6.ブラック&ホワイト
7.桐島、部活やめるってよ
8.サイタマノラッパー3/ロードサイドの逃亡者
9.ロック・オブ・エイジズ
10.スーパー・チューズデー

 2013年の公開予定でいちばん楽しみなのは『マン・オブ・スティール』。ついにザック・スナイダーの最高傑作ではないか、『エンジェル・ウォーズ』の無垢と『ウォッチメン』のヴィジュアルが融合した傑作ができるのではないか、と期待しています。
 『パシフィック・リム』も楽しみですね。どうもこれまたクトゥルーっぽいし。
 あと、『キック・アス2』がいかに1作目を超えてくれるのか。
 スパイ映画の一大ビッグウェーブは過ぎ去った感がありますが、『GIジョー2』とか『ゼロ・ダーク・サーティ』とか、まだまだ期待作は続きます。『ダイ・ハード/ラストデイ』『アウトロー』『ラストスタンド』といった無骨なアクション映画群もあります。
 今年もよき映画がたくさん観れますように!