こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

4月に読んだ本

2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2520ページ
ナイス数:6ナイス

IDOL DANCE!!!: 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しいIDOL DANCE!!!: 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい感想
アイドルのダンスがいかに興味深いものか、ということに加えて、著者やアイドル自身から「最近の若い女の子にとってアイドルがどんなものなのか」が垣間見えて楽しい。ぱすぽ☆玉井杏奈の「「人生これからだぜ!」って感じ」という発言、さくっと言ってるけど、すごく大きい言葉なんじゃないかな。
読了日:4月1日 著者:竹中 夏海

ノルマンディー偽装作戦 (1982年) (ハヤカワ文庫―NF)ノルマンディー偽装作戦 (1982年) (ハヤカワ文庫―NF)感想
ナチ占領下出身者をあつめた特殊チーム「X部隊」の史実(?)語りに終始する冒頭こそ退屈だが、それが終わればあとは、主人公ニムロッドが目的のため死地をひたすらくぐっていく堂々たる冒険物語となる。面白かった!「そうは言ってもナチは負けたじゃん」と思いがちですが、連合国の勝利は綱渡りのものであったし、ドイツ側にも優秀な人間がいることを要所で描いているので、きちんとハラハラドキドキいたします。なお、『ナチが愛した二重スパイ』を彷彿させる内容ですが、破天荒なジグザグさんに比べこちらのニムロッドくんはちょいマジメより。
読了日:4月1日 著者:ジェイムズ・リーソー

ヘルプ (上) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)ヘルプ (上) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)感想
軽やかで緩急自在な三人の語りが心地いい。独特の省略に戸惑うことが数回あったが、それもこの数年に渡る波瀾万丈を描ききるためか。どの語り手にも巧妙なサスペンスがあり、実に読ませる。人種差別をめぐる重い小説、と読まずにいるなら勿体ない面白さですぜ。
読了日:4月3日 著者:キャスリン・ストケット

ヘルプ (下) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)ヘルプ (下) 心がつなぐストーリー (集英社文庫)感想
白人が黒人の言葉を語ることについて。この困難に、作者は筆力で正面から勝負する。そのうえで、三人の語り手をそれぞれ、娘(何者でもないこと/母との関係)、妻(全て背負って戦うこと)・母(育て、失うこと)という、どんな女性にもありうる三つの立場に配置し、現代の読者が熱中できる普遍的な視点を獲得することに成功している。そこに境界はない。いや、ない、と言い切ることをぼくは現代の男としてもちろん躊躇するけれど、やはり言い切りたい。これは境界なくぼくと「つながる」、すばらしいストーリーだ。
読了日:4月7日 著者:キャスリン・ストケット

我が名はアラム (福武文庫―海外文学シリーズ)我が名はアラム (福武文庫―海外文学シリーズ)感想
アメリカに切り込みを入れる移民由来の世界…というより、中盤くらいまでアメリカだとわからなかったくらいにとびきり濃厚な異世界感が楽しく笑える。しかしやがてアラムくんにも読者にも広いアメリカと世界の様子が垣間見えてきて、ついには旅立つ。この徐々に広がっていく認識、そしてその世界を「まずは信じてみよう」とするあまりといえばあんまりな素直さが、心地いい。
読了日:4月12日 著者:ウイリアム サローヤン

ジャッキー・コーガン (ハヤカワ文庫NV)ジャッキー・コーガン (ハヤカワ文庫NV)感想
長くわかりづらい雑談のはて、ふいに訪れる暴力。基本的にはその繰り返しで、ダメな人はダメだし好きな人はすごく好きになっちゃう類の小説でしょう。物語のシンプルさ・狭小さに比べて、時折、広い視界で描かれるボストンの描写の「生の世界がある」感じが、拍子抜けと言って差し支えないラストにも関わらず、豊かな読後感に繋がっている。
読了日:4月18日 著者:ジョージ・V・ヒギンズ

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)感想
こどもか!おまえはこどもか!といいかげん叱ってあげたくなる身勝手ボッシュくんですが、しかしその背景には哀しい子供時代があったのだった...というわけで、母の死の謎を追う物語。LAの娼婦殺しということで、エルロイの諸作(というかエルロイ自身)を思い出しつつ読む。1994年のノースリッジ地震後のロスの雰囲気も興味深い。何千人も死んでなくても、キリスト教的な「災厄」のイメージを負って街が暗くなっていて、なるほど国によって地震の受け止め方も違うものだと思った。
読了日:4月24日 著者:マイクル コナリー

ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)感想
ボッシュの倒した植木鉢の土を素手で戻すアーヴィング警視萌え...などと言っている場合ではなく、重く苦い真相にためいき。解説の北上次郎が言うとおり、いったいこのあとボッシュはどうなってしまうんだ、という暗澹たる気持ちになりかねない。ただし、ボッシュのどこか陽性を捨てないキャラクター、そして彼を周囲で支える人々のおかげで、ほんとうに暗澹たる気持ちにはならずに済む。このへん、きっちりと娯楽作品に踏みとどまるコナリーの塩梅が実に見事だと思う。
読了日:4月28日 著者:マイクル コナリー


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