2013年5月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2863ページ
ナイス数:20ナイス
探偵はひとりぼっち (ハヤカワ文庫 JA (681))の感想
映画に向けて再読。軽妙だけど重厚。じりじりと真相へにじりよっていく展開、不意打ちの真相、修羅場をくぐってきたはずの「俺」の青臭さまじりの正義と挫折。ひとつのハードボイルド・シリーズの山場として、みごとな作品だと再認識した。このあとの展開を知っている身としては、なんともなあ...。しみじみ。
読了日:5月2日 著者:東 直己
ストリート・ボーイズ (新潮文庫)の感想
んー、感動や興奮のための要素が逆に没入を妨げている感あり。戦闘の最中の長ぜりふ、一般市民を完全に排して孤児を中心に据える、ナチスがナポリ市民40万人を虐殺したと記述するなどの史実改変。そもこの史実改変はなんのためなのか。ナポリの人たちにも失礼な気がするけど。ひじょうによく装飾されたエンタテインメントなれど、悪手が目立ちすぎる。
読了日:5月3日 著者:ロレンゾ カルカテラ
ムーチョ・モージョ (角川文庫)の感想
荒涼たる世界で正義をおこなおうとあがく愚か者ふたり、彼らの姿に声援を送らずにはいられない。超いとおしい。きちんとある種の痛快さはあるのだけれども、ハップとレナードは決してスーパーヒーローではなく、悪を倒すのではなくせいぜい隠れた悪を露にするくらいなのだ。でもそれゆえに、それだからこそ、この小説を、彼らの戦いを愛したくなる。/南部の描写は毎度のことながらすばらしい。黒人バー、それから雨や雷の描写が印象にのこった。
読了日:5月6日 著者:ジョー・R. ランズデール
ポップ1280 (扶桑社ミステリー)の感想
ヒャッホー。最高。ジム、あんた最高だよ。最後の最後に戻り戻って「おれはなんにもわかってない」という主人公ニックとともに、読者のぼくもなにもわからない状態に漂白される。この爽快感、なんにもない、はじけた泡のあとのすっからかんぶり。このすっきりさっぱりなにもわかってない男のように自分も生きていきたいという渇望を植えつけられて、100%抵抗できる自身はぼくにはありません。
読了日:5月7日 著者:ジム トンプスン
脱出航路 (ハヤカワ文庫 NV 283)の感想
いっけん激シブ冒険小説の代表格って雰囲気ですけど、知的なUボート艦長とか美人女医とかの絡むサブプロットはなかなかに派手。わかってはいても複数の運命が収斂していく群像劇としての出来のよさには泣かされました。
読了日:5月14日 著者:ジャック・ヒギンズ
ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム (文春新書)の感想
全編に「ビブリオバトルはモテる」というメッセージが込められている!と喫驚いたしました。そうか本当に結婚しちゃった方もいるのか...。/本編とラノベパートの関係が、『南極点のピアピア動画』と川上量生の二次創作のような、現実とフィクションの新しい侵犯関係を結んでいてすげー楽しい。/「ビブリオバトルは二次創作のようなもの」という指摘はその面白さの本質を的確に言い表しているなあと思った。
読了日:5月17日 著者:谷口 忠大
ファントム謀略ルート (1982年) (ハヤカワ文庫―NV)の感想
謀略の全貌は冒頭でほぼ見えていて、あとは微細に書き込まれたディテールを楽しむつくり。
読了日:5月21日 著者:マイケル・バー=ゾウハー
All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)の感想
あとがきで示されるとおり、他のリピートものに比べ段違いに熱いリピートそのものへの愛がおもしろい。このリピートへの愛は、ここ最近のハリウッド映画におけるリピート/時間操作ものにおけるそれとは似ていて大いに異なり、その違いをダグ・リーマンがいかに料理するのか楽しみ。
読了日:5月26日 著者:桜坂 洋