先週ついに『ガッチャマンクラウズ』のブルーレイボックスが発売されました。めでたい。
予約していたぼくの手元にも無事に到着しまして、少しずつ観賞しています。
生来の貧乏性なので、発売直前には「ボックス買っても観るのは数える程度だろうし、1万5千円の出費は痛かったかなあ...」などとも思っていたのですが、いざ観始めてみたらまったくの杞憂でした。やっぱこのアニメすげーよ。すげーよすげーよみんな観ようよ、というわけで、『ガッチャマンクラウズ』がいかに凄いかを語ってみたいと思います。
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2014/01/22
- メディア: Blu-ray
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■テーマがすごい
ガッチャマンといえば科学忍者、忍者といえば超絶身体能力によるアクション...!と期待したくなるとは思いますが、そこはあんまり期待しないでください。
今このアニメを推したいのは、2013年現在の日本の空気を鮮やかに取り込んで、「ヒーローとはなにか」というテーマをこれまでにない形で語りきっているからなのです。
ヒーローのかっこいい活躍を、美麗な作画で観たいなら他のアニメをどうぞ。でもここには、このアニメでしか、このストーリーと登場人物でしか到達できなかった、ヒーローについての「答え」があります。そしてその「答え」は、今現在の日本で、日々働いたり学校へ通ったりしながら、「ヒーローがいてくれたらなあ」「自分がヒーローになれたらなあ」と日々悶々としているぼくたちに暖かく寄り添ってくれるものです。
どんなに時代を鮮やかに描いても、ぼくたちの暮らしを反映していても、フィクションはフィクションです。それでも、このアニメはぼくに、明日もまた生きよう、少しでも「世界をアップデートする」ために力を振り絞ろう、と思わせてくれる。
万人がそのようにこのアニメを受け取れるわけではないでしょうが、それでも、少しでも多くの人にこの作品を観てほしい。
声高に訴えたくなるくらいの熱さが、このアニメにはあるのです。*1
■声優がすごい
まずは主人公一ノ瀬はじめを演じた内田真礼がすばらしい。
放送当初、はじめの空気読まない妙なテンションに「イライラする」と反応する視聴者が結構いたようです。なんでも、スタッフ内にも彼女に共感できない、いやそもそも演じた内田真礼自身がはじめを理解できないと相当に迷いながら演じたといいます*2。
ストレートな共感はしてもらえない。でも「この子なら世界を変えてしまうかもしれない」と思わせるような、魅力やカリスマ性を備えていなければならない。妙な鼻歌や、かわいい文具に歓喜するボンクラな雰囲気も交えつつ、ヒーローとしての説得力を見事に獲得してみせた内田さんの演技は必聴であります。
いっぽう、はじめと相対する悪役カッツェを演じた宮野真守もまた見事でした。おどけた雰囲気に、常に何をするかわからない恐ろしさが同居する悪役。ここ10年で最も印象的な悪役といえば『ダークナイト』のジョーカーでしょうが、そのヒース・レジャーにも匹敵するオリジナリティと凄みのある演技でした。特に、ガッチャマンたちと初対決する第七話で、ネットスラングや市井の言葉を取り入れ、イントネーションや声質で千変万化の「悪」を表現してみせる宮野真守の芸達者ぶりを味わってほしいと思います。
■音楽がすごい
この話をすると、ブルーレイより先にサントラ買えということになってしまうのですが、まあ岩崎琢による音楽がすばらしい。
「ガッチャマーーーーーーン!」と叫ぶメインテーマには、正直毎回気恥ずかしさを感じてしまうのですが、その分一度聴いたら耳から離れないキャッチーな曲になっています。それに、聴くと思わず笑っちゃう、でも熱くなる!という曲の雰囲気が、はじめたちの無様だけどかっこいい活躍ぶりにばっちり似合うのです。
メインテーマ以外の楽曲も、ハリウッド映画的なスケール感、クラブ系音楽よりのポップさ、流麗なストリングスと美点を挙げればきりがありません。すでにネット上でサウンドトラックについての充実したレビューがありますのでぜひ参照ください*3。
厚みのある岩崎サウンドを、演出の側も存分に活用しているようです。例えば第二話で清音とはじめが変身する際にどちらもメインテーマを使いつつ、はじめの変身のほうでは低音が強調され、より盛り上がる演出となっていました。ブルーレイはテレビに比べより広い音を収録できているそうなので、テレビやネット放映ですでに観たという人にも、新たな発見が多いのではないでしょうか。
日本テレビ系アニメ 「ガッチャマン クラウズ」オリジナル・サウンドトラック
- アーティスト: 岩崎琢
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2013/08/28
- メディア: CD
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ガッチャマン クラウズ オリジナル・サウンドトラック?GALAX-
- アーティスト: 岩崎琢
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2014/01/22
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...と、他にも「立川という場所の活かし方がすごい」「語りのテンポがすごい」「キャラクター他のデザインがすごい」「男キャラがすごい」「色彩がすごい」「オープニングアニメがすごい」「平野綾がすごい」「やっぱりはじめちゃんかわいい」など色々と語りたいところがいくらでもあるのですが、まずはこのへんで。
*1:テーマについては昨年書いた文章もお読みいただくと嬉しいです:「みんなでユルく楽しくがんばる。そして辛かったら逃げる。『ガッチャマンクラウズ』」http://d.hatena.ne.jp/tegi/20131027
*2:「演じている途中で、はじめの気持ちがわからなくなって遠く感じたこともありましたが、監督に『いいんです、それで』と言われて安心した」((まんたんウェブ「ガッチャマンクラウズ : 立川でファンイベント 監督&出演者が苦労話語る」http://mantan-web.jp/2013/10/27/20131027dog00m200014000c.html
*3:「NIPPORI SOUNDTRACK」http://nippori-friedrice.com/anime/review/GATCHAMAN_Crowds.php、「WEBアニメスタイル アニメ音楽丸かじり(116)『ガッチャマンクラウズ』サントラは岩崎琢の集大成+」http://animestyle.jp/news/2013/09/03/5983/