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こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

立川シネマ・ツー、ナメててすまんかった/『May'n THE MOVIE Phonic Nation 3D』

映画 音楽

 立川シネマ・ツーで11月14日・15日と限定再上映している『May'n THE MOVIE Phonic Nation 3D』を観てきました。公開時に観逃してたし、立川の音響なら楽しそうだなー、というくらい軽い気持ちで行ったんですけど、行ってよかった観てよかった。すばらしかったです。

 映画は2011年の公開。2010年の夏に行われたライブツアー「Phonic Nation」のZeppTokyo公演を中心に、ライブの準備の様子や、アジア各地を訪れたときの様子などをおさめた映像で構成されています。
 ぼくは、May'nさんの声が大好きなものの、正直、『マクロスフロンティア』における菅野よう子プロデュース楽曲と、ミニアルバム『May'n Street』のごく一部しかまじめに聴いていません。
 そういう人間なので、余計にMay'nさんの歌やライブを新鮮な気持ちで十二分に楽しめたということもあるのでしょうけど、とにかくライブの映像と音響がすばらしかった。

 今まで立川シネマ・ツーの「極上音響上映」「極上爆音上映」はそれなりに楽しんできたものの、特に今日は全身に鳥肌が立つ瞬間が何回もあるような、すばらしい鑑賞経験になりました。

 つい最近観た極上爆音上映は『ジョン・ウィック』でしたけど、まあ音がでかくてタノシイネ、という程度の印象でした。あくまで推測なのですが、ワーナーマイカルシネマズ海老名のTHX、ユナイテッドシネマ札幌のIMAXで10代から20代にかけてさんざん映画を観てきたせいか、立川の極上爆音上映ってそれほど衝撃的じゃないんですよね。確かに音がでかくて大迫力で楽しいけれど、いや、このくらいで普通でしょ、とか思っていた。むしろアクション映画はぜんぶ極上爆音上映してもいいかもしれない。
 しかし今回の音響はこれまで立川の音響に感じた喜びとは段違いだった。ライブシーンは常に「うおお、すげえ、おおお、なんてこった」とかアホみたいに思っていました。
 いちばん際立って聴こえたのは、バンドの音でした。ギターの響き、ドラムの細かな連なり、そういったものが非常にあざやかに粒立って聴こえる感じ。ライブ会場で生で聴いている感覚でした。
 映画の構成としては、いちばん最初に大名曲『ダイアモンド・クレバス』がくるので、「えっ、一曲目にこれ持ってきていいの」と思ってしまうんですけど、以後の楽曲、ぼくにとっては初めて聴くような曲でさえ、May'nさんの歌唱と、劇場のすばらしい音響によって伝わってくる生バンドの音の力で、ずっと楽しく聴く――というか体感する――ことができました。

 考えてみたら、立川シネマ・ツーの音響系企画といえばマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』がはじまりで、音響も音楽畑の方が設計し設備もコンサートホールのそれを多用しているわけで*1、音楽に関するプログラムでこそその真価が発揮されるのは当然のこと。そういえば、ぼくが今まで観た立川の音響重視系興行は『ロック・オブ・エイジズ』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『キングスマン』『ジョン・ウィック』の四本だったと記憶しているのですが、いちばん楽しかったのは80年代のロックを賛美した音楽映画の傑作『ロック・オブ・エイジズ』でした。

 映画館のことばかり言及してきましたが、そもそもの映画自体も、なかなかよくできた作品でした。
 3Dと音楽映画の親和性のよさは夏の『アイカツ!ミュージックアワード』で思い知っていたわけですけど、それは三次元のコンテンツでも同じでした。ライブ映像で三次元を構成する要素は少なくて、May'nさんとバンドとダンサー、照明、客席の人々とサイリウム、というくらいなんですけど、むしろその少なさこそが、立体空間をわかりやすくし、没入感を高めていたのかもしれません。特に、ステージの脇や斜め方向から奥行きを強調してとらえた構図はとても楽しかった。カメラがまわり込んだり、多数の物体が画面内を行き来したりしなくても、ただ「ここに空間がある」とないはずのものを認識出来るだけで3D映画は楽しいのだ、ということを思い知りました。
 より3Dを際だたせるためか、時折、光線とか中を舞う羽根とか、合成された3D表現もいくつかあって、やや過剰すぎて浮いていた感は否めないのですが、でも「『マクロスフロンティア』の劇中ライブでやってたAR的なアレや!」というノリで笑って楽しめたので問題なしです。

 前述のとおり、映画はライブとドキュメンタリー映像をミックスした構成なので、曲と曲のあいだには、May'nさんがアジア各地を訪れたり、音楽に対する思い入れを語ったり、新曲を作ったりするようすが、ライブシーンとは打って変わってデジタルカメラで撮影された、ローコストな2D映像で挿入されています。熱心なファン以外はクールダウンしかねない部分ではありますが、でも3Dにつかれた目と耳を休めるには非常にいい塩梅です。また、特に後半、ライブツアーのテーマに沿った楽曲を作っていく様子は、実際にできあがる楽曲が非常によい曲なので、音楽映画としての説得力も非常に高かったです。作詞作曲をともにこなすMay'nさんの才能の豊かさも改めて思い知りました。
 この曲、あるいはツアー/映画自体のテーマである「Phonic Nation」という言葉は、音楽で人々をつなげる、という、個人的には違和感を感じてしまう――というかすごく魅力的だけど、だからこそ慎重にならざるをえない――コンセプトが背景にあり、特に映画の前半ではそのあたりをちょっと距離をもって鑑賞していました。が、中盤あたり、作詞中のMay'nさんが、自分もかつてはそういう価値観を疑っていたけれど、実際に音楽活動をしていくなかで徐々に実感していけた、と話していて、そういう着実な手順を踏んで考えられる人なら大丈夫かな、とちょっと安心しました。『Phonic Nation』の詞でも、音楽のもたらす喜びだけでなく、人間のもつ怒りや悲しみについても歌われていて、好ましいバランス感覚を持っていることがわかります。

 というわけで、映画も劇場もたいへんすばらしいので、行ける人は絶対行ったほうがいいです。『マクロスフロンティア』は好きだけどMay'nの曲は知らないなー、という程度の人でも十二分に楽しめるはず。
 ぼくは今回の鑑賞でいたく感動してしまって、劇場のアンケートボックスに賞賛と感謝のコメントを投げ込んでしまいました。立川シネマ・ツーの音楽系上映は今後もチェックせねばと思うし、力あるアーティストを記録する試みはもっと増えてほしいと思う。もちろん、ライブはその場で参加できることがベストではあるんだけど、色々な事情で参加できない人もいるし、なにより後世に残せないじゃないですか。おれが王だったらいますぐすべてのアニソンシンガーに生バンドでライブを開催し3D映画を作って立川シネマ・ツーで上映する義務を課しますね。フライング・ドックとかランティスとかの偉い人たちにはぜひ検討いただきたい。アニメロサマーライブの記録映画とかどうですか。

立川シネマ・ツー『May’n THE MOVIE - Phonic Nation-3D-』11/14(土)・15(日)2日間限定上映
http://cinemacity.co.jp/wp/ccnews/mayn-the-movie/

*1:週刊アスキー「常識破りの成功 映画館に革命を 立川シネマシティ「極上爆音上映」の野心」、http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/355/355161/