こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

よいつむが繋いでくれたこと/函館ユニットカーニバル 大宮ライブビューイングレポート

 4月28日に開催された、「Saint Snow PRESENTS LOVELIVE! SUNSHINE!! HAKODATE UNIT CARNIVAL ライブビューイング特別応援会場 in 大宮ソニックシティ」に参加してきました。
 この大宮ソニックシティでのライブビューイングは、ゲストとして、アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』で高海千歌と同じクラスの生徒たちを演じた声優さんがゲストとして登場する、というものでした。さらに「特別応援会場」というイベント名にふさわしく、『ラブライブ!』の歴史に残るといっても過言ではない新たな取組みが行われました。今回は、記憶の限り、当日の様子をレポートしてみたいと思います。

 
 大宮ソニックシティに行くのは初めてでした。片道二時間弱の行程で、ライブビューイングのためにかける時間としては長めですが、自分の知らない遠い場所に行く楽しさがAqoursを追いかけているうちにすっかり身についてしまっているので問題なしです。
 春らしい快晴のなかを埼京線に揺られてたどり着いた大宮駅はかなり広く、けっこうな都会という印象。埼玉に馴染みのない身なので、埼玉だ!と軽く感動していたら駅の構内で栃木のディスティネーションキャンペーンを大々的に開催していてちょっと笑ってしまいました。栃木といえば小宮有紗さんの出身地なわけで、楽しさがちょっと加算されて会場に向かいます。


 駅から大宮ソニックシティまでは徒歩五分くらい。当日は腰を痛めていて、街歩きがまったくできなかったのが残念でした。
 ソニックシティに繋がる陸橋を歩いていくと、目的地の手前からにぎやかな声が聞こえていて、何かと思ったらメーデーのイベントでした。かなりの人が集まっていたようです。その喧騒を聞きながらソニックシティ前の広場に入っていくと、これまた、物販を待つオタク、物販を終えて交換を呼びかけるオタク、オタクたちを誘導する運営の人たち...と一層の喧騒が待っていました。メーデーのイベントのほうからも、なにかのだしものなのか、ヒーローショーっぽい声とか萌えキャラっぽい声とかも聴こえてきてたいへんカオティック。たのしい。
 物販では、函館会場と同じ内容のグッズが発売されており、ライブビューイングに参加しない人たちもつめかけていたようでした。購入希望者はまずランダムに番号の振られた整理券をもらい、自分の順番がきたら販売会場に入れる、という仕組み。徹夜組が発生しないので、とてもいい方法だと思います。
 物販担当をはじめとした当日の運営の人たちは、仲間同士で笑顔を交わすような雰囲気もありつつ、会場周りにたむろしがちなオタクたちの整理なども行き届いていて、なかなかいい雰囲気でした。これまた楽しい気持ちに拍車がかかります。


 大宮ソニックシティ大ホールの総席数は2,505席。昨年わたしが参加できた、札幌でのAqoursファンミーティングの会場となったニトリ文化ホールと似た規模で、あの楽しいファンミの記憶が少し蘇ってきたりもしました。
 ホールには二階席もあり、わたしの席はその二階の中段、右寄りあたり。遠いかな、と思っていたスクリーンもステージも、意外に近く感じられました。映画館より音や映像の質が悪いのではという危惧も外れ、特に音響は、音を全身で浴びるような感覚がありとてもよかったです。


 開演時間は12時30分。函館でのライブがスタートする時間よりも30分早く始まりました。
 まずは場内放送が流れます。聞こえてきたのはもちろん、今日の大宮の主役、よしみ(松田利冴)・いつき(金元寿子)・むつ(芹澤優)の三人の声。場内のボルテージは一気に高まります。さっきまで完全に熟睡していたはずの隣席のオタク二人組ががばりと起き上がり、むちゃくちゃ元気になっていたのがほほえましかったです。
 当日連番させていただいたKeisukeさんもちょうどこの放送に間に合うタイミングで座席に到着。体調を崩してしまったわたしの妻の代わりに急遽連番してくれることになったKeisukeさん、さらに仲介してくれたあきのさん、その連番者であるDJあいむさんのお三方とは、あきのさんを除けばネット上のやりとりもリアルでお会いするのも今回が初、という間柄だったのですが、車で大宮へ向かっていたメンバーが交通渋滞に遭遇してしまい、あわや間に合うかどうか...?!というスリリングな状況から、連絡やチケットのやり取りなどをうまく連携してこなし、無事に全員セーフ!という痛快な出来事を共有していたため、わたしは会場でお会いする前から、勝手に不思議な連帯感を感じてしまっていました。普段は一人参加が多い身ですが、やっぱり人と一緒に参加するのもとても楽しいものです。


 鑑賞中の諸注意を説明するアナウンスに前後して、ステージ上にはよしみ・いつき・むつの等身大(よりちょっと大きめ)のスタンディが設置されました。Aqoursのイベントやファンミーティングでもおなじみ、ステージに立つ声優さんの後ろに、そのキャラのスタンディが立っている、というあの演出ですね。
 この時点でわたしはすでにかなりうるうる来てしまっていました。
 よしみ・いつき・むつの「よいつむ」は、Aqoursのメンバーではない普通の生徒ですが、彼女たちの活躍に大いに影響を与えた重要なキャラクターです。アニメ1期13話で描かれたように、彼女たちはAqoursの「10人目」のメンバーです。と同時に、Aqoursを応援する普通の人であり、わたしのようなファンに似た存在でもある。開演前の場内アナウンスには、この会場にいる全員が10人目のAqoursですよね、という呼びかけもありました。
 よいつむは、二次元世界のAqoursと同じ場所にいながら、Aqoursとわたしの橋渡しをしてくれているような存在なのです。
 そんなよいつむが、こんなふうに表舞台でスポットライトを浴びる日が来るなんて!


 感動に胸を震わせながら待つことしばし、ついに舞台向かって左側から、松田利冴さん・金元寿子さん・芹澤優さんが登場します。
 お三方とも、ふつうのカジュアルな洋服に、浦の星女学院の赤茶色のジャージの上着を羽織るという格好。ここでお三方が浦の星女学院の制服を着ていれば、今後のよいつむのイベント再登板も確定だと思えたのですが、まあそう簡単にはいかないでしょう。ならばこの日のイベントを盛り上げるのみ! 手元のキンブレを1期13話のごとく青色に切り替えて歓迎の意を表現します。
 ディテールは覚えていないんですけど、「よしみです!」「いつきです!」「むつです!」「よいつむです!」というアイドル的な名乗りからスタート。左手の松田さん、中央の金元さん、右手の芹澤さん、という配置で、イベントは軽快に展開していきます。進行は、むつ役の芹澤さんが中心になっていました。とても場馴れしている雰囲気があって、むっちゃんやるな~とか思いながら見ていました。


 自己紹介のなかで、何者だよって思ってる人もいるんじゃないかと思うんですけど、というようなコメントがあったんですが、こちとらあなたらを目当てに来てるんですよ!よいつむが好きじゃない人間が来るわけないよ!と強く強く思いました。
 でもよくわからない人のために、と三人を覚えるための特徴が各人から挙げられます。むつはおでこ、いつきはタレ目、よしみは「浮かれた髪型」がそれぞれポイント、とのこと。確かに言われてみればよしみの髪型ってユニークですね。
 で、じゃあ具体的に振り返ってみましょう、ということでアニメのダイジェスト映像がスクリーンに映し出されました。初登場の1期3話から、1期のよいつむ登場シーンが次々に紹介されていきます。
 この映像、編集が絶妙で、もうちょい余韻があってもいいんじゃね?とツッコミたくなる、ちょっとだけ早いタイミングでカットされるんですね。例えば1期3話の体育館ライブなんて、彼女らは確かに短い時間しか映らないのですが、Aqoursのファーストライブの裏方、というむちゃくちゃ重要な役目を負っています。でも、そういう意味の重さみたいなものはすっとばして、「はい!映りましたね!じゃあ次!」という感じでさくさくカットされてしまう。観客もよいつむも笑っていたし、そういう扱いをされるよいつむっていいなあ、と改めて思いました。


 『ラブライブ!』における同級生トリオ、ヒデコ(三宅麻理恵)、フミコ(山本希望)、ミカ(原紗友里)の三人は、その大活躍ぶりを「神モブ」として讃えられました。μ'sという女神を支えた同級生もまた神である、というわけです。
 よいつむはむしろ、1期8話で、意気消沈したAqoursの内情を知らないままにはしゃいでいたり、1期13話で自身もスクールアイドルになりたいという突飛な願望を抱いたりする。Aqoursを支えはするけれど、スマートじゃない、普通の人間らしい不器用なありかたでAqoursと接しています。
 奇跡を成し遂げ、スクールアイドルの勃興を告げた音ノ木坂の物語を神話と位置づけるならば、浦の星の物語は高海千歌をはじめとする「普通」の人々の物語です。よいつむの、ちょっと笑われてしまうような、平凡な人間らしいありようは、それにとてもしっくりくると思うのです。


 こういったよいつむの特徴はキャストのお三方も承知の上といった感じで、前述の、東京から帰ってきたAqoursを出迎えるシーンでは、知らないうちにがんがん地雷を踏み抜いていくセリフに「言っちゃったー!!」「あ~!!」と嘆きの反応をして客席を大いに笑わせてくれました。
 1期13話、むつが自分たちもスクールアイドルをできないか、と申し出るくだりには、演じる芹澤さんも何言い出すんだと思ったと仰っていて、これまた笑いを誘っていました。個人的には、無茶な願いだけれども、それでもつい言ってしまうところに(そしてそれをノーガードで受け入れる千歌に)しみじみ感動してしまう大好きなシーンなので、でもそこがいいんじゃないですかー!とちょっぴり反論したくなっちゃうのですが、でもまあごもっともな反応です。それに、そういうツッコミを入れつつ楽しくはしゃいでいる舞台の上のよいつむのお三方が、物語中のどこか飄々としているよいつむの姿と繋がるような気もしました。


 1期のころのアフレコを覚えているか?という話題では、Aqoursはすでにアニメ以外の場での活動もあってキャラクター理解が進んでいたが、自分たちはオーディションではなく指名での仕事だったということもあって、どう演じればよいか迷った、というお話がありました。松田利冴さんは、音響監督の長崎行男さんから、若い女性の声ばかりの作品なので、声質を分散させるために松田さんを採ったのだから、そのままの低めの声でいい、という指示をもらったとのこと。こうしたよいつむの「難しさ」を意識しながらアニメを再度観ると、また新鮮な感覚が味わえそうです。


 続いて2期のダイジェストでは、3話でみかん畑のなかの移動を手伝うシーン、7話でAqours存続を呼びかけるシーン、といった場面が流れます。
 11話、閉校祭で『勇気はどこに?君の胸に!』を浦の星の人々が歌うシーンでは、客席の多くが一緒に声を出して歌っていました。わたしもその一人です。うれしかったです。
 この歌の収録では、恐らく広い空間で多数の人が歌っている感じを再現するためなのでしょうが、アフレコルームのなかでたくさんの人がそれぞれてんでばらばらな方向を向いて歌うよう指示された、とのこと。ちょっと不思議な光景ですね。Aqoursも声質を変えて参加したりしていたそうです。
 また、2期13話、よいつむたちクラスメイトが描いた黒板アートのシーンでは、「上手くてびっくりした」というコメントがありました。
 周知の通り、あの黒板アートには沼津・つじ写真館のかたが関わっているわけで、よいつむは、沼津の方たちとAqoursの橋渡しもしていた、とも言えそうですね。


 ダイジェスト映像を見ながらのトークが終わると、いよいよ今日のメインのパートです、という前置きで、函館と大宮を中継で繋ぐ!という企画が明らかにされました。一気に会場は大興奮です。
 芹澤さんの進行のもと、松田さん・金元さんを函館のSaintSnow・Aqours役に見立てて、コール&レスポンス、それからペンライトの明滅の練習が行われました。コーレスやライトを使った演出の内容はおなじみのものですが、中継を挟んで行うという特殊な状態に備えるべく、思わず力が入ります。
 ライブビューイング会場とライブ会場を繋ぐという試みは、『ラブライブ!』関連のイベントでは初のはずですし、他のイベントでの例も寡聞にして知りません。大げさに言えば、『ラブライブ!サンシャイン!!』のみならず、2.5次元コンテンツの歴史を作るかもしれない瞬間に立ち会えるのです。その感動に、身体が少し震えたことを覚えています。
 SaintSnowと各ユニットのコーレスを練習し、中継は計二回行われるとの説明を終えて、よいつむのお三方とキャラスタンディはいったん舞台から退場しました。照明が切り替わり、スクリーンには函館の客席の様子が映し出されます。
 ライブビューイング先で大写しになっているとも知らず、笑顔でキンブレを振る函館のオタクたちの姿に笑顔になりつつ、隣席のKeisukeさんと期待を語り合っているうちに、あっという間に函館の客席が暗転。ついにライブが始まります。


 ライブ本編中の詳細は、多くの方がライブビューイングでご覧になっているでしょうから、ここでは触れません。
 わたし自身の最大瞬間風速のポイントを三つあげておくと、1.SaintSnowのパフォーマンスすべて、2.AZALEA『Galaxy HidE and SeeK』における黒澤ダイヤ/小宮有紗、3.Guilty Kissの梨子/逢田梨香子、といったところでしょうか。SaintSnowの田野アサミさんにしても、逢田さんにしても、「息が長い」とか「声が安定している」という歌としてのスキルはもちろんですが、その声に込める感情が色濃く豊かで、声優さんが歌を歌うことの価値を強く示していたと思います。その意味では、松浦果南諏訪ななかさん、渡辺曜斉藤朱夏さんもとてもよかった。
 わたしはSaint Snowの「ラップパート」をラップと呼ぶのは少々ためらわれます。自分が普段親しんでいる日本語ラップからはかなり遠いスタイルのものだからです。でも、佐藤日向さんのパフォーマンスは、確かに言葉をストレートな歌唱とは異なるあり方で操り、観客をリズムとメロディのなかに陶酔させていました。佐藤さんの声の、バネのように弾み、鋭利に場を刻んでいく言葉と、田野さんの力強く伸びる言葉とが混ざり合って、唯一無二の歌を形作っていました。
 『Galaxy HidE and SeeK』の小宮さんの場合、声に加えてすばらしい身体の演技も加算されていました。わたしにとって、セカンドツアー・神戸でのパフォーマンスがとても忘れ難いものなのですが、今回は演技に安定感があり、また違った感動をおぼえました。この次はどんな『Galaxy HidE and SeeK』を観せてくれるのか、楽しみです。


 時間を少し戻して、ライブ冒頭。SaintSnowのMC中に最初の中継が敢行されました。スクリーンのなかのSaintSnowが話しているさなか、まずはスタッフがよいつむのスタンディをステージ中央にセッティング。大宮の観客は歓声をあげます。続いて、舞台袖からこっそり登場し、位置につくよいつむのお三方。そうこうしているうちに、田野さんがライブビューイングについて話題を移し、大宮へと呼びかけてくれました。
 何しろこれまでにない試みです。中継がうまくいかなかったり、函館のトークとこちらの準備のタイミングがあわなかったりするのでは、と思っていましたが、初回の中継は驚くほどスムーズに進んだように記憶しています。よいつむの自己紹介に歓声をあげる函館会場の観客たち。大宮側の客席が映るたびにわたしを含む大宮の観客も大歓声をあげます。芹澤さんからのコーレスのお願いを受けて、SaintSnowがわたしたち大宮会場へ向けて呼びかけます。
「SaintSnowは?」
 サイコー!、と応じるわたしたち。
「函館ユニットカーニバルは?」
 遊びじゃない!
 ――中継はあっという間に終わりました。
 いったん中継を切ったあと、大宮会場には、成功を喜びお互いを讃える歓声と拍手が沸き起こりました。壇上のよいつむもとても喜んでいたように見えました。しかしライブは続きます。よいつむのお三方は、またあとで!と舞台袖に小走りで消えていき、照明も暗転します。SaintSnowのMC、そしてパフォーマンス。
 函館とやり取りできたのは、たったの二言だけです。それでもわたしは、遠く大宮から数百キロ離れた地にいるひとたちと、言葉と感情のやり取りができたことがとても嬉しかった。その二言を届けられただけで、なんだかもう、今日のライブの主役はこの大宮会場なんじゃないか、という気持ちさえ芽生えたくらいです。さすがにそれは無茶なんだけれども。そのくらい嬉しくて、楽しかった。
 誰かに言葉を届けられるというのは、それだけ素敵なことなのでしょう。


 時が進んでライブ終盤、二度目の中継のときは、初回と違って、ややタイミングを見誤ったらしく、よいつむのお三方はかなり慌ててステージに登場しました。スタンディの前に立つのと、中継が繋がるのがほぼ同時だった……とまではいかなかったかもしれませんが、記憶のなかではそのくらいのスリリングさでした。でももう一度成功していますから、そのくらいのハプニングはこちらも不安には思いません。また、ライブ中に国木田花丸高槻かなこさんが冗談めかして「おでこが見たい」と言っていたのを受けて、芹澤さんが前髪を出す髪型にマイナーチェンジしており、函館と大宮がやり取りをしている感覚が一層高まりました。
 この中継では、AZALEA、CYaRon!、Guilty Kissと順に各ユニットとやり取りしたのですが、今度は、手元のライトを使ったり、さらには函館会場の観客も大宮に合わせてコーレスに参加する、という複雑なチャレンジまで発生。このあたり、大宮の側からは、ちゃんとうまく行ったのかどうか確信が持てないところもあったのですが、函館や他のライブビューイング会場から見てどうだったのでしょうか? 感想が聞きたいものです。
 他のライブビューイング会場と言えば、これは中継中だけの話ではありませんが、大宮が他会場に比べてかなり差がついてしまった感じがあって申し訳ないなー、という気持ちもありました。ライブビューイングが行われるライブでは、演者たちがMCで「ライブビューイングのみなさん!」と声をかけてくれるものですが、それが何度も「大宮のみなさん!」という呼びかけだけに変わってしまっていたように思います。いや、むちゃくちゃ嬉しかったし大宮はすごく盛り上がったんですけど……。


 そんなこんなで無事に二度目の中継も終了、ふたたび退場していくよいつむの三人には、大宮の会場中から大きな拍手が贈られました。
 中継は二回という説明があったので、現地と繋がれるのはこれで終わりだ、という満足感と寂しさを味わっているなか、函館のSaintSnowがAqoursの9人に「あの曲を一緒に歌おう」と提案します。一緒に歌える「あの曲」、それは、『ユメ語るよりユメ歌おう』でした。
 この曲は、昨年のセカンドツアー時にたびたびライブの最後を飾っていたと記憶しています。スクリーン上に歌詞が映し出され、Aqoursとともに会場のファンも一緒に歌う、「みんなで歌う曲」としての印象がとても強い曲です。今回のライブは「Saint Snow Presents」と冠されてはいましたが、Saint Snowは新参であり、外様でもありました。その彼女たちを迎え入れるのにふさわしい一曲と言えるでしょう。
 ライブ後に一部で言われるように、AqoursSaint Snowが共演する以上、ライブのラストに『Awaken the Power』が披露される、という期待していた人にとっては残念な選曲だったかもしれません。しかしまだ今回は、共演の第一歩だったのです。今回のライブの最後の共演曲として、『ユメ語るよりユメ歌おう』が選ばれたことには、Aqours自身だけでなく、Aqoursとたくさんの楽しいライブを共有してきたファンもまたSaint Snowを受け入れてほしい、という意味もちょっぴりあったのではないか。そんなふうにわたしには思えます。
 そしてその『ユメ語るよりユメ歌おう』のメロディが流れ始めた瞬間――函館会場で客席へ向けて銀テープの雨が降り注いだ瞬間――、大宮でもまた、銀テープが客席へと降り注ぎました。二階席にいたわたしからは、ステージの縁から銀テープが射出され、美しい放物線を描きながら一階席の全体へと舞い落ちていくさまがはっきり見えました。その目の前の銀テープの雨は、スクリーンの向こう側の函館の銀テープの雨と一体化して、どこからどこまでが大宮で、どこからが函館の情景なのか、まったく区別がつきませんでした。
 中継は二回じゃなかったんだ、とわたしは思いました。この銀テープの、素朴ながらも確かな連携が、函館から大宮へと会場のきらめきを中継してくれたのだ、と思った。
 そしてAqoursSaint Snowが、『ユメ語るよりユメ歌おう』を一緒に歌っていました。函館の客席の人たちも歌っていたし、大宮のわたしたちも歌っていたし、わたしには直接見たり聴いたりすることはできなかったけれど、他のライブビューイングの人たちも一緒に歌っていたはずです。
 このときほど、離れた場所で歌うAqoursに、そしてAqoursを中心につながる人たちに、強い繋がりを感じたことはありませんでした。


 ライブが幕を閉じ、スクリーンのなかのAqoursSaint Snowが退場すると、大宮会場ではよいつむによる終了のアナウンスが流れました。わたしはてっきりステージに再登場してくれていると思っていたので残念に感じましたが、あくまで今日のライブの主役はAqoursSaint Snowです。ステージ上の最後を飾るべきは彼女たちであって、よいつむではありません。声だけのお別れとなったのも、筋が通っていると言えそうです。
 はっきりとは覚えていないのですが、よいつむの三人は最後に、またどこかで会いましょう、と言ってくれたような気がします。いや、そう思いたいです。
 なぜならわたしもまた、彼女たちに再会したいからです。Aqoursのライブでも、映画館のライブビューイングやアニメの上映会でも、はたまた別のイベントでもいい。ライブ中、Saint Snowを招いたライブを沼津でやりたい、という声がAqoursの面々から出ていましたが、そんな機会があったらよいつむにもぜひ登場してほしい。
 アニメの劇中ですでによいつむはAqoursとファンとを繋いでくれていました。さらに今回の大宮のイベントで現地との中継役を担うという大任を果たしたことで、よいつむはまた新たなAqoursとの繋がりを作ってくれた。
 今回のライブ会場とライブビューイング会場を繋ぐという試みは、技術的には、誰がMCをしたとしても成功していたでしょう。けれども、あのとき味わった喜びは、よいつむの三人が繋いでくれたからこそ、のものでした。わたしはそんなよいつむたちが、いっそう大好きになったのでした。