こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ラブライブログアワード2018のこと

 私はセブンイレブンのテイクアウトのコーヒーが嫌いです。いや、発売当初より味が改善されているので、コーヒー自体はいいんです。問題はあのコーヒーマシンなんですよ。あいつ、コーヒーを淹れたあとに「おいしいコーヒーができあがりました」って液晶画面に表示するんです。いや、おいしいかどうかは俺が決めるから!おめーが決めることじゃねえから!という気持ちになる。
 味の好悪はあくまで味わった側が決めることで、コーヒーを入れた側があらかじめ表明する必要はないと思う。ただどうぞと言ってカップを手渡してくれればいいんじゃないかしらん。

 
 何が言いたいのかというと、ブロガーのみんなは自分の記事の良し悪しをあらかじめ決めないでほしい、ということです。いや、超おもしろいよ!と言うならまだいいのかもしれない。だからセブンイレブンのコーヒーマシンはましなほうかもしれません。問題は、「駄文」とか「戯言」とかそういう言葉で自分の記事を表現してしまうことです。よく記事の冒頭でそういうこと書く人いるんですよ。ただの駄文です、とか、戯言ですがお付き合いいただければ幸いです、とか。そんなもんにお付き合いしたくないです。「おいしいコーヒーができあがりました」って言われて腹が立っている人間が、「まずいコーヒーができあがりました」って言われて耐えられるわけがない。
 確かに自分の書いたものにはそう簡単に自信を持てないでしょう。駄文ですよ、戯言ですよという腰の低さを示して読み手に甘い目で見てもらいたい、みたいな気持ちは万人共通だと思う。私だってそういうところは消せない。でも、それでもやっぱり、そういう言い方はやめたほうがいいと思う。ゼロにするのは無理なら、できるだけ控えめにしたりとか、記事を何回か書き続けて慣れてきたら言わないようにするとか、そういうふうにがんばってほしい。
 だってみんなのブログ記事、駄文でも戯言でもないんだもん。みんな100%とまではいわずとも、どこかしら真剣で、ちょっとは読み手の心を動かそう、楽しませよう、って書いているわけじゃないですか。だったらそういう自分のことを誇りに思っていいはずだ。そういうポーズがかっこいいって思っているならもう止めないけど、私は、誇るべき自分の成果物について駄文とか戯言なんて言葉を使って貶める必要はないと思う。

 

♪♪♪

 

 えー、前置きが長くなりました。
 というわけでですね、今回は「ラブライブログアワード」について書きます。嫌われそうなことはすでに書いたので、あとは楽しいことしか書きませんよ!たぶん!


 「ラブライブアワード」というのは、魂さんが開催した『ラブライブ!』に関するブログをみんなで読もう、そして褒め合っちゃおう、という楽しいイベントです。詳しくはこちらの告知記事などを読んでみてください。

ishidamashii.hatenablog.com

 すでに投票の結果は発表されておりまして、それはそれで非常に納得できるものなんですけど、やっぱり自分が投票した記事についてももっと語りたい。なにせノミネート記事を全部読んでむちゃくちゃ悩んで投票しているので、このままで終わるのは正直悔しい。そんなもん投げつけられる側はたまったもんじゃないでしょうけど、こちとら言いたいことがたくさんあるわけです。
 では早速、勝手に私が投票した記事をほめたたえたいと思います。どの記事もおもしろいぞ! ではいってみましょう!!


ストーリー部門

 該当記事なし。

 ……いや、すみません、ほんとすみません。石を投げないでくれ。
 でも正直なところ、自分の書いた記事よりも好きな記事が見つからなかったんです。そのことに尽きる。

tegi.hatenablog.com


 私のノミネートされた記事はこちらでございまして、自分のなかでは書ききったという充実感はあれどいい記事だとは思っていません。この記事を書いたあとで、2期13話への気持ちも変わってしまったし。
 でも、そんな感じの記事であっても、これを超える熱量というか妄念というかを感じられたり、面白いものを読んだという充実感を得られた記事は他になかったのです。


 気を取り直して次の部門行ってみましょう。これ以降は該当なしということはありません!


キャラクター部門

高海千歌とリーダーの話【千歌ちゃんについて語ってみた②】 (とっきーさん)

tsktktk.hatenablog.com

 アニメの物語の随所にある違和感に、ひとつずつひとつずつ考えと答えを示していく筆の運びにのせられてじっくり読んでいくと、それらを土台に「一応リーダー」という言葉の見事な読み替えがなされてきれいに幕が閉じる。よい文章にはよい問いがある、というのが私のブログを書くときの一つ信念なんですけど、その理想形といっていいかっこよさです。
 記事の冒頭に自らこの文章を「妄想」と表現している箇所がありますけど、それは謙遜というもの。劇中の要素に基づいたしっかりした論理が組み立てられていると思います。

 

黒澤ダイヤは廃校阻止にどこまでホンキだったのか?~Conflict with diamond~(瀬口ねるさん)

segnel.hatenablog.jp

 アニメ版黒澤ダイヤさんをこれ以上見事に分析して愛した記事を他に知りません。ダイヤさん好きとしては読んでて超嫉妬していました。オタクとしてはやっぱり自分の好きなキャラクターを誰よりも理解したいっていう気持ちがあって、だから『黒澤家研究』なんて同人誌を作っていたりするわけですけど、この記事(というか瀬口さんの記事の多く)には打ちのめされました。アニメ以外のソースもおさえた彼女の性格と、黒澤家という家のありようについての正確な把握はもちろんのこと、物語やキャラクターというものはとても複雑に作られている、という、フィクションを読み解く(意外に万人がそのことを理解できているわけではない)大前提を踏まえて、とても明快な文章で表現している。
 劇伴の曲名『Conflict with diamond』から「作中で矛盾することが許されているのが黒澤ダイヤというキャラクターだということも裏付けられる」なんて論じるなんて、大胆なのにむちゃくちゃしっくりくる話で、膝を打ちまくりでした。キャラクターの言葉や絵など、はっきり描かれるものだけではなくて、様々な要素からアニメを読み解いているのもみごとでした。そういう様々な読解に耐えられる作品なのだと示してくれたことも、アニメ版(酒井和男監督)大好きっ子としては嬉しかったですね。

 

 票は入れませんでしたが、この部門では⑤私の推しのはなし(アオイさん)も好きでした。

aoiroma.hatenablog.com

 投票した二記事に比べれば、用いられている言葉や論理は非常に少ない。街で見かけたガリガリ君を食べる少年たちという話から、過去を思うこと、ノスタルジーというものに思いを馳せ、そこから黒澤ルビィについて語っていく。
 筆者が「力を貰った」とするルビィのありようは冒頭で語られるノスタルジーとは反対にあるものですから、ノスタルジーにあふれた冒頭の文章は不要な気もするのですが、しかしこのようにして書かれた文章を目にすると、なるほど黒澤ルビィという人の魅力は、ノスタルジーを前提にしなければ描けないぞ、という気になる。
 投票した二記事に比べればやや粗いかと思って投票を控えたのですけど、今読み返してみると、文章として好きな度合いはこちらのほうが上かもしれません。


キャスト部門

⑧いまつながっていく・・・ ~Aqours 3rdツアーを”UNITED”してみたら~(クチコさん)

kuchiko252521.hatenablog.com

 新田恵海さんの楽曲やライブと、Aqoursの活動とのつながりを見出していく記事です。
 筆者自身が「曲の話然りライブツアーの話然り「偶然でしょ?こじつけでしょ?」と言われれば全くその通りです」と言う通り、ここで述べられていることがらが本当にそのような意図でなされたものだとはなかなか思いづらい。
 ですが私は、筆者が見出した「つながり」の説得力ではなく、それを見出したいという強い想いにこそ心を打たれ、共感しました。3rdライブや4thライブにおいて、μ'sの明確な姿は現れませんでしたから、筆者が考えた「つながり」はなかった、とも言える。でも、この記事のなかでは「つながり」はあったのだし、そういうことこそファンの書く文章の生み出す価値だと私は思います。
 ライブ中のちょっとした言動に明言されない「つながり」を見出して悦に入るようなたぐいのオタク活動は、時として非常に嫌味なものになりがちですけど*1、この記事では、そうした妄想力がこれから行われるライブに対して発揮されているので、嫌味もありません。爽やかな徒労感とでも言うべきものがとってもすがすがしくって好きでした。


②「目がー、目がぁーッ!!!」ーーステージ上の私の推しはネコ科だった。(林檎好きさん)

ringojolno.hatenablog.com

 大好き。
 頭から尻尾まで「知らんがな」としか答えようのない筆者の暴走に満ちた怪文です。
 タイトルからして、意味が通じるかどうかより勢いを優先する筆者の姿勢が透けて見えるわけですけど、読み終わると「まあネコ科でいいです」という気持ちになるのであったし、実際この文章を読んだあとに観たライブでは逢田梨香子さんはネコ科に見えなくもなかったので、筆者の大勝利というほかないでしょう。
 ふざけているようだけど、出オチにしないだけの情報量はあるし、なんといってもきちんと「ネコ科」というキーワードから逢田さんの魅力をがっつり語れているのがえらい。
 過剰になにかをかぶせていくことで声優を語る論法ってオタクの定番芸ではありますけど、たいてい、声優さんへのディスりとセットなんですよね。例を挙げるのもいやなので具体的には書きませんけど、女性声優のパワフルさとか、明るさを、「女性らしくない」という前提を踏まえて笑いを混じえて語るようなスタンス。この記事にはそういう無邪気な(特に男性の)オタクが振るう暴力性もまったくない。
 かように声優さんを語れる人間になりたいものです。…いや、なりたいかな、どうかな…。


聖地巡礼部門

②はじめて沼津に行ったはなし (ぶれぶれのジョニーさん)

bladebreakjohn.hatenablog.com

 聖地巡礼部門ではありますけど、筆者がファンミーティング参加のために沼津に行った際の記事なので、ファンミーティング(ライブ)のレポートとしても読み応えがあります。小宮有紗さんの『聖なる夜の祈り』における手のパフォーマンスの力を描いたくだりが見事。
 終盤では、沼津で抱いた感情を丁寧に言葉にしていくことで、『ラブライブ!サンシャイン!!』の作品論としての読み応えまで獲得していくのですけど、話が広がりつつも、あくまで自身の心に率直なところが素敵です。どんなに思考が羽ばたいても、その土地から乖離しない、というのが、聖地巡礼をテーマにした記事のよいところだとなのかもなあ、ともこの記事を読んでいて思いました。
 あと、「野暮」とか「語彙はどこに?僕の外に!」とか、言葉遣いもとってもキュート。


④沼津のおもいで2018(はまさん)

hmskdagoyabai.hatenablog.com

 どうも私はAqoursや沼津のなかに自分自身や自分の故郷と相通づるものを見出してしまった人の話が好きらしいのですね。なので、この記事のなかでさらりと挿入されている筆者の故郷の商店街のこととその写真のくだりが好きなのでした。
 別記事ですが、同じような視点が垣間見える「雑記:くまモンと地元愛 他 2018/08」*2も好きです。


エモ部門

⑩銀河の日(瀬口ねるさん)

segnel.hatenablog.jp

 まずは2017年の名記事「"この星のことがとってもスキになれる"みたいな話」*3を改めて多くの人にお薦めしたい。『GALAXY HidE and SeeK』とAZALEAの三人をていねいに読み解いた記事であるうえ、筆者の個人的で極めてちっぽけな、しかし本人にとっては決定的な出来事を描いて、読む者の心を打つ。
 この「銀河の日」という記事は、その決定的な出来事から一年を経過して振り返るという趣向。現在と過去を往還して、さらにはAqours以外のライブのことや、2ndライブツアーのこと、夏という季節のこと、と次々に話題を行き来していく。
 エモさとはなにか。「エモい」と口にする人のなかに確かにその正体はあるのだけれど、なかなかつかみづらく、むしろ「つかみきれないままでもいいのではないか」という気持ちのもとに世界へ向けて差し出される価値観、とでも言えるのではないか。とすれば、行ったり来たりの浮遊感をもつこの記事は、そのエモさの真髄をそのまま文章全体に行き渡らせた名文と言えると思う。


⑥ホンキの話。(アオイさん)

aoiroma.hatenablog.com

 文頭末で展開される部分が実にいいのです。本論を支えているようで支えていない…?と少しだけ戸惑いすら覚えてしまう、個々が独立しているような構成が本論の論旨を映えさせています。
 アニメ2期2話で「誰も妥協していない」ことが見逃されがちだ、と論じているところはアニメの読解として非常に面白いし、これは、ともすれば仲良し小好しでオールハッピーな物語だとして受容されがちな『ラブライブ!サンシャイン!!』にとってとても重要な指摘だと思います。
 あと、私は基本的にアニメの画面キャプチャを貼る記事が嫌いなのですが、この記事のキャプチャの貼り方は好きです。美しい。


 この部門で投票したのは以上の二記事でしたが、もうひとつ追加で言及しておきたいのがこちら。

ラブライブ!サンシャイン!!リアル脱出ゲーム『孤島の水族館からの脱出』がめちゃくちゃ面白い(変太郎さん)

ameblo.jp

 この記事の公開当時、仕事の休憩中にこの記事をスマートフォンで読んで、すぐに慌ててイベントサイトでチケットがまだ入手できることを確認し、同行する家族の了解を取って、スケジュールを確認して……と慌てふためいていたときの記憶が鮮明に残っています。
 これを読むまでは脱出ゲームへの偏見があって、物語や設定よりも知恵比べを優先するタイプの娯楽だと思っていました。いかにラブライブ!の名を冠するイベントとはいえ、こちらの期待するような作り込みは行われていないだろう、と。
 そこに、信頼できる書き手がこういうどストレートなお薦め記事を投げ込んでくれた。変太郎さんじゃなかったらあそこまですぐに信用できなかったろうと思います。
 で、あわてて行ってみた脱出ゲームは本当にいい「作品」だった。
 この記事は、そういう個人的な「エモ」に関わる記事なのでした。


楽曲部門

⑭叶えたいからこそ「終われない!」 「HEART to HEART!」考察記事(はみばらハミーさん)

note.mu

 まず私は『HEART to HEART!』が好きなのです。
 スクフェスをずっと遊んでいる人間にとって、コラボシングル楽曲というのは特別なものになってしまう(単純に、一番聴く回数が多かった曲になってしまうので)。
 この記事はμ'sのステージへの復帰を語るわけですけど、そういう可能性を語る素地となりうる、というところがまさに『HEART to HEART!』という曲の自分の好きなところなんだろうなあと思う。この記事はそれを気づかせてくれた。
 そして、私もまた前々からμ'sはいつかきっとまたステージの上に帰ってくると信じている。自分の好きな曲で、自分の観たい風景(Aqoursとμ'sの邂逅)の可能性を語ってくれたらそりゃ好きになるわ!
 自分の妄想とわかったうえで簡潔に論拠を語っていくスタイルも好きです。


②「夢」が持つ二面性に関して。~「勇気はどこに?君の胸に!」に関するぼんやりとした雑談~(魂)

ishidamashii.hatenablog.com

 とかくたくさんの重量ある記事を次々ものしている魂さんですが、「ぼんやりとした雑談」としたこの記事が、私は一番か二番目くらいに好きだなーと思っています。
 RHYMESTERの話が出てくるからっていうのもあるんですけど、そういう、『ラブライブ!サンシャイン!!』から少し離れつつ作品と楽曲の核について語る姿勢が、なんだかもしかして、ここで語られる呪いのような夢を実人生で抱えているのではないか?、と思わせる。プライベートのことは全く語っていないにも関わらずそういうことを読み取ってしまう。
 『勇気はどこに?君の胸に!』の楽曲の読み解きとその提示はコンパクトでハイクオリティでありつつ、そんな隙みたいなものが生じているところが、しみじみいいなあと思います。


劇伴部門

①私の太陽(ソウさん)

sona99.hatenablog.com

 アニメ上の他の要素のどれでもなく、劇伴でしか示されなかったものを抽出していて、劇伴部門として称揚されるにふさわしい記事だと思います。
 そこで示される劇中のことがらに、筆者自身の気持ちを重ねて、ひろく劇伴を愛好する人たちへのメッセージにしているところは、劇伴の分析としては不要ですが、劇伴を味わう喜びの表現としては非常に力強く輝かしいものです。
 記事中でも言及される生春さんを中心とした劇伴界隈の盛り上がりをダイレクトに反映した、2018年の『ラブライブ!サンシャイン!!』劇伴をめぐる状況を写し取って印象的な記事でした。


ライブ部門

⑫No.10はツラくないという話(ラジオ塔さん)

llscfg.hatenablog.com

 アワードの投票にあたっては、ノミネート記事をすべて読んだ上であーだこーだと悩んで決めたのですけど、この記事はかなり早い段階で投票を決めていました。
 記事の前提として、文中でも触れられているライブにおけるファンの「企画」*4の風潮に対する反感があると思います。それらに過度に熱中する人たちへの「あなたがいなくても同じステージが披露されるとして、あなたの代替不能性はどこにあるのでしょうか。あなたがあなたでいる意味はあるのでしょうか」といった問いかけは核心を突いたもので、「企画」を考える人たちにはぜひ一読して熟考を薦めたい*5
 ラジオ塔さんの文章や呟きはかように容赦がなく、頭に血が登った人たちからはとんでもない人非人みたいに言われがちですけど、次に挙げるような優しい文章もまた、物事を冷静に公平に見渡すことのできる眼の持ち主ならではのものです。

Aqoursのライブの瞬間はどんな立派な人だって、Aqoursから輝きをもらう誰かでしかなくて、それ以上の観客はいないんじゃないか」
「だってもしあなたがあなたの人生の輝きを見つけたら、それはNo.10の条件ではなく、あなたの人生のNo.1ではないですか」

 Aqoursのライブに対して過剰な没入をしてしまいがちな自分のなかの換気をしてくれる、とてもありがたい記事でした。ライブのたびに読み返したいし、Aqoursの活動が続く限りいつまでも万人に薦めたい、殿堂入り的な名文なのです。


⑳熱い、熱いジャンプで!!!(十六夜まよさん)

aqours-mayoism.hatenablog.jp

 ラジオ塔さんの記事がライブにおける精神の問題を語っているとすれば、こちらは身体の問題を語ったもの。
 動機はさらっと語るに留め、「振りコピ」初心者のハードルを下げまくる実用的なガイドに徹底したこの文章のおかげで、私も最近のライブでは振りコピをするようになりました。
 こんな醜悪なオタクがもたもた踊ってたってなんになるっていうんだ…とか思っていたタイプの私なので、実はこの記事を読んだ時点ではちょっと引いていたのです。でも、その後のどこかのライブでちょっとした気まぐれから身体を動かしてみたら、これが本当に楽しい。
 オタクというのは、自分から人に薦めることは好きでも、他人に感情を強制されることを恐れ、他人に何かを薦められた途端に怒ったり逃げたりしてしまうもの。この記事だって、そういう反感を招きかねないテーマではあります。でも文章と構成のうまさでそうした反応を回避することにすごく成功していると思うし、かつ、ヌルくはなっていないのがすごい。
 なにせ、『MIRACLE WAVE』をどう跳ぶか、という3rdライブの焦点になりうる話題を打ち出して、「3rdライブとはどんなライブなのか」「ラブライブ!のライブとはなにか」といった、射程の遠い問いかけもなしているのです。
 入り口はとても入りやすいのに、奥も深い、手練のまよさんならではの記事でした。


ある視点部門

③色の見え方が違う、ということ。1(ぶろっくさん)

k-block.hatenablog.com

 まさに「ある視点」でしか書き得ない記事。自分の見えることがいかに狭いものなのかを思い知り、また他人の見えることがいかに幅広いのかを知れました。
 こんなに自分と違う見え方の人に、自分と同じようにアニメを受け取ることができるのだろうか、というふうについ思ってしまうのだけど、そのように自分の見えているものがベーシックなものである、という前提に立ってしまっていること自体への問いかけとして受け取って、自分のなかに「ある視点」を維持していかなければいけない。
 自分のなかの固定観念を指さされる厳しいテーマなのですけど、書く側にはそういう気負いがないのか(あるいはあるがゆえにそのような姿勢を維持しようとしているのかもしれない)、文体はとても淡々としています。それもまたいいなあと思います。


①7部屋目(物置):「10!」から見るラブライブにおける次元の話~物語という観点~ (ゆうりんちーさん)

yurinti.hatenablog.com

 Aqoursのライブで「10!」の掛け声を言うことの是非について、かなり明確な論拠で可能な場面・そうでない場面を区分できているのがすごい。賛同するかどうかは別として、この話題について語るなら必読の基礎文献的記事だといえるんじゃないでしょうか。
 2.5次元コンテンツの捉え方など、自分の考え方と違う部分もあるけども、だからこそ、考えるときの大いなる足がかりになると思っています。


 この部門でも、投票した二記事に加えてもうひとつ紹介します。

Aqours スカイハイ!とニーチェ(1/2) Aqours スカイハイ!とニーチェ(2/2)(さくらいさん)

twitcasting.tv

 

twitcasting.tv

 こちらはブログではなくツイキャスです。やはりブログの賞だから対象はブログに絞りたいなと思っていて、アワードの選考当時は、最初から選外にしていました。
 内容は、『グランブルーファンタジー』でのコラボイベントにおけるニーチェ的キーワードを拾っていくもので、とても興味深いものです。
 ニーチェって、1980年代以降の西側諸国における時代精神とすごく親和性が高いんじゃないかな、と私は思っています。だから、様々な芸術や娯楽のなかで言及されるし、さらにそれらの作品に影響を受けた作品がどんどん生まれている。自分の知る限り、小説なら『存在の耐えられない軽さ』、映画なら『恋はデジャ・ヴ』あたりが画期だったのかな。で、日本においては1990年代以降に「終わりなき日常」を巡る葛藤に対する答えの源泉として、ゲーム文化・オタク文化の隆盛とともに大量にニーチェ的物語が作られ、今も続いている――というのが私のおおまかな認識です。でも実際のところ、ニーチェってどういう受容を経てきているんでしょう。誰か書いていそうなものだけど。
 まあそういうわけで、『ラブライブ!サンシャイン!!』とニーチェの間にあるものがもっとたくさんあるんじゃないかな、とどうしても思ってしまうのですが、それにしたってこの内容は面白い。喋りもうまいかたなので、一聴をお薦めします。


ドキュメンタリー部門

⑨惹かれたのは、輝き(月見さん)

behind-moon.hatenablog.com

 選考当時、ここまで書いてきた順番のとおりに各部門の記事を読んできて、まあこのへんになってくるとさすがにかなり疲れていて「もうやめとこうかな……」とか思っていたわけですけど、そんななかこの記事を読んで、「アワードがあって本当によかった、この記事を知られただけで全記事読破の意味はあった」と強く思いました。
 ドキュメンタリー部門は他にもよい記事がありましたけど、なんとしてもこの記事に賞を取ってほしかったので、投票時には「というかもし許されるなら、二票入れたいです」とまで言ってしまったくらい。

 闘病の日々を『ラブライブ!サンシャイン!!』とAqoursによって支えられたという前半だけでも十二分に心を動かされます。しかし、筆者を支えてきたというもうひとつのものについて語る後半は、涙無しには読めませんでした。『ラブライブ!サンシャイン!!』が好きだ、とネット上で語ってきた人なら誰しも勇気づけられる記事だと思います。
 もしかしたら、自分がブログを続けてきたことには、少しは意味があったのかもしれない。それはこのアワード全体を通じて感じていたことですが、特に月見さんの記事を読んだことで、その思いを強くしました。

 

初記事部門

②Aqours3rdLoveLive!Tourへの思い ~1度でいいから3rdへ行って欲しいってお話~(あざらしさん)

azalashi-monologue.hatenablog.com

 なんとしても行かせてやろうという熱がいい。3rdライブに至るまでの経緯、『ラブライブ!サンシャイン!!』、そして『ラブライブ!』という作品の魅力、はたまたライブ参加にまつわる初心者が抱きがちな不安ポイントの解消など、ライブにまつわる全部を網羅して、読み手の退路を絶とうとしているかのような覇気に満ちていて楽しい記事です。
 4thライブ終了後の今読むと、次の呼びかけも非常に感慨深い。

3rdのラスト曲が終わった時、その公演が終幕した時最高の時間を作ってくれた彼女達への感謝を込めて「AqoursAqoursAqours!」と叫びメッセージを送ってみないか

 各論の読み応えはもちろん高いのだけど、熱さゆえにきれいにまとまっていない感じもあって、そこがまた初記事部門にふさわしい感じがしました。上記の呼びかけは、実は初心者向けの記事としてはノイズになりかねない要素だと思うんですけど、記事の熱さにはいい影響を与えていて、そういうちょっと勇み足なところもまた魅力的でした。


⑥パフォーマンスから見るSaintSnow【HAKODATE UNIT CARNIVAL】(さめさん)

same-lovelive.hatenablog.com

 これまた初記事らしさを味わえる、勢いと勇み足と、フレッシュさが共存した記事です。
 ウィーン会議のエピソードを持ち出すあたりには突飛すぎて笑ってしまったんですけど、最後の、「SaintSnowが初めて一つになれた瞬間」を示すくだりはなかなかに見事だなと思いました。
 その瞬間以外にも、SaintSnowはSaintSnowのやり方で一つになっているのだと私は思っていますけど、それでも「なるほどな!」と思わされてしまった。それは、ここで書かれていることがある程度合理的だなと思ったというのもあるのだけど、それ以上に、3rdライブ・4thライブで共演するSaintSnowとAqoursの姿を観てきたなかで感じるものを見事に言い当てられたな、という感覚があったからです。
 この一点突破された楽しさをまた味わいたいな、とも思える、今後もとっても楽しみな初記事でした。


ブロガー部門

・23 瀬口ねるさん
 今回のアワードでは、瀬口ねるさんの二つの記事に投票しました。ノミネートはされていませんでしたけど、この記事も印象に残っています。

segnel.hatenablog.jp

 少なくとも黒澤ダイヤの掘り下げにおいては右に出る者がいない書き手ですし、他の話題も総じて面白い。良記事を書き続けている、という意味でブロガーを表彰するならまずはこの人だろう、と思って投票しました。


・26 魂さん
 じゃあもう一人は誰か、といったらこの人しかいない。アワードの創設者である魂さんです。


 結果発表直後にTwitterでも言ったんですけど、今回のアワードは本当に偉大な試みだったと思います。
 私はブログ書きを二十年近く続けてますけども*6、こんなふうにブログのことをポジティブに認識できたのって、たぶん初めてです。
 正直なところ、アワードの開始当初は、身内の褒め合いみたいで嫌だな、という気持ちもありました。でも、一つひとつの記事を読んで感想をはてなブックマークTwitterに書いていくうち、その行為自体がブログの書き手に楽しく受け止められているらしいということを知って、それは純粋にいいことだな、楽しいな、と思ったのです。いや、やっぱりそれは身内の褒め合いなのかもしれないけど、それが善い行いになっているのならいいじゃん、と思った。結果として身内の褒め合いになろうとも、自分自身は厳正に記事の中身を評価して言っているんだから、咎められることはないのだし。
 また、前述の月見さんの記事や、魂さんの総括記事で紹介されているとっきーさんのエピソードを読んで、「ブログ」という文化そのものが誰かを救っていることの可能性も知ることができました。

ishidamashii.hatenablog.com

 そういうふうに、自分がブログのことを胸張ってポジティブにとらえられる契機をくれたのが、このラブライブログアワードであり、魂さんだったわけです。


♪♪♪


 以上、ラブライブログアワードで私が投票した記事を紹介してきました。
 ここに挙げなかった記事のなかにも面白いもの、驚かされたもの、感動したものはいくらでもありました。私の紹介をきっかけに、ここで挙げてきた記事がより多くの人に届いたら嬉しいし、それ以外の記事もどんどん読まれてほしい。そして、また新しい記事、新しいブログ、新しい書き手がばかすか生まれてきてほしい。私はみんなの言葉が読みたい。


 アワードがまた行われるかどうかはわかりません。行われるとしたら、さすがに次回は全記事読破みたいな疲れることはしたくないな……と今は思っているけど、たぶんその時がきたらまたキャッキャ言いながら読んじゃうんでしょう。怖いけど、楽しみです。
 ではまた、次のアワードで!!

*1:そういうところから過剰な「付き合ってる」とか「不仲」みたいな言説が生まれてくるのだと思う。

*2:http://hmskdagoyabai.hatenablog.com/entry/2018/08/16/194717

*3:https://ameblo.jp/segnel/entry-12301533285.html

*4:メッセージを込めたサイリウムの色・つけ方を大人数で行うことを呼びかけるファン活動。海外公演における「ヨーソロード」の成功を大きな発端として国内公演でもたびたび提唱されている。キャストや運営が好反応を示すこともある一方で、その内容の妥当性や呼びかけのあり方について議論が起こることも多い。私も嫌いじゃないですけど全部好きなわけでもないです。

*5:そういう熟考のうえで、いいものをやろう、という姿勢の見える「企画」は好きです。

*6:もちろん最初はブログなんて言葉はなくって、「ホームページ」でした。