こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

俺スパイ感探求の旅

『ジョーカー・ゲーム』はなぜ明るいスパイ映画なのか

『ジョーカー・ゲーム』、期待どおりの楽しい映画でした。 「傑作」という言葉を使う映画ではないけれど、すごく「楽しい」スパイ映画。 入江悠監督がさまざまなインタビューで言及しているとおり、この映画の立ち位置を海外のスパイ映画に照らし合わせて言…

2014年のスパイフィクション十選

本ブログとは別に作っている「スパイフィクションリスト」では、「早川の『冒険・スパイ小説ハンドブック』のアップデート版」を目標に地味にその折々のスパイフィクション(小説、映画、ゲームなど)を少しずつ紹介しています。「リスト」と銘打ちつつも、…

『残響のテロル』覚書

【Amazon.co.jp限定】残響のテロル 1(オリジナルステッカー付き)【完全生産限定版】 [Blu-ray]出版社/メーカー: アニプレックス発売日: 2014/09/24メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (8件) を見る 『残響のテロル』が最終回をむかえた。 2014年の日本で…

愚かさとテロリズム『残響のテロル』

今日は中盤から録画を溜めていた『残響のテロル』を一気見してその面白さと真摯さに心打たれていたのだけれども、ネット検索やTwitter検索ではあまり好意的な批判を見つけることができない。自分のTLでは好評なんだけども。 もっとも多く印象に残るのは、テ…

今こそ読もうグレイディ!全邦訳長編レビュー

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』観ましたかみなさん。すばらしかったですね。 アメコミヒーロー映画としても当然ですが、スパイフィクションとしても大傑作なこの映画、スパイ者として注目するとなるとやはりまずは名優ロバート・レッドフ…

2013年の映画ベストテン

2013年、劇場で観た新作映画は55本でした。 DVDほかの旧作は16本。 例年以上に順不同としたい気持ちが強い、その日によっていくらでも入れ替わる順位です。 また、「俺が挙げずに誰がやる」という映画の多さも例年以上ですね。 10位『ライフ・オブ・パイ』 …

バカに見えても色々考えてんだからな!『ホワイトハウス・ダウン』

すばらしかったです。映画館で二時間ずっと、満面の笑みで過ごすことができました。こんな楽しい映画が観れるとは、という純粋な喜び。 すでに色々なところで指摘され、また作り手も認めている通り、『ダイ・ハード』に強く影響された映画です。 しかしそれ…

2012年の映画ベスト10

2012年、映画館で観たのは合計50本。 観るべきだったのに観てなくてごめんなさい映画は『ドライヴ』『アウトレイジ・ビヨンド』『崖っぷちの男』『マルドゥック・スクランブル/排気』あたりでしょうか。つーか毎年多すぎですね。 50本のなかからベスト1…

『ブラッド・ウェポン』

アクション映画を褒めるとき、「CG全盛のハリウッド映画からは失われつつあるリアル重視のアクションが…」というたぐいの枕詞が一般化したのはいつごろからでしょうか。やっぱあれ、あんまりよくないと思う。 本作もどうもそういう路線で売られているよう…

『デンジャラス・ラン』

最後は最新の映画で〆ましょう。今年の秋に公開されたばかり、『デンジャラス・ラン』です。 凄腕工作員として名をあげながら、組織を裏切り長年逃亡していた元CIA工作員フロスト(デンゼル・ワシントン)がついに南アフリカで拘束された。彼を一時的に留…

『天使は容赦なく殺す』

『スカイフォール』の日本でのヒットには、昨年ジェフリー・ディーヴァーによる『007/白紙委任状』が邦訳され話題にのぼっていたことも影響しているはず。あれはあれでたいへん面白い小説ですが、『スカイフォール』のあとに読む現代スパイ・フィクショ…

『スパイ・ゲーム』

『スカイフォール』が萌えるのは、ジェームズ・ボンドが、国家を守るという自分の職務の枠を意識しつつ、それを超えて上司Mを守ろうとするから。組織のなかで個人のために暗闘する、そういう二律背反のなかをくぐり抜けていくスパイたちにぼくはドキドキす…

『スカイフォール』を観たあなたにおすすめしたいスパイ・フィクション三選

みなさん、『スカイフォール』、楽しかったですね! この盛り上がりを聞いて、ひさびさに007を映画館で観た、あるいは初めて007を観た、という人も多いのではないでしょうか。 世の中には、まだまだ他にも魅力的なスパイ映画、スパイ小説がたくさんあ…

なんだ傑作か『007/スカイフォール』

観賞が前提の文章です。ネタバレてんこもり。 なんかもう予想通りでつまんないくらいだったんですけどその予想というのは「きっと傑作にちげえねえ」という見通しだったわけでそこにきっちり沿ってくれているんだからもうほんとに傑作。えらいえらいぞサム・…

THINK ON YOUR SINS/スカイフォール予習

この15年ほどのスパイ・フィクションの歴史を振り返るとき、そこには時代ごとに人びとが背負った/背負いたがった「罪」を概観することができる。スパイが活躍した(すべきだった)事件や場所、時代の空気が告発され、観客たちに「罪」を見せつける。 なぜ世…

職場がなくなったあとのことは考えない『トータル・リコール』

『トータル・リコール』を観てきました。 バーホーベン版は昔日曜洋画劇場で観たきりですが、夢か現実かをあんまり悩んでない映画という印象。今作もおおむね前作と同じ雰囲気を保っています。 スパイもの愛好家としては、すべては妄想であり、スパイワナビ…

兵士と消防士『ネイビーシールズ』

*事前のお断り* 本稿はかなり偏ったFPS観に基いて書かれています。とくに、CoD以外の諸作に関する知識・歴史観がぼくには圧倒的に欠けており、そのへん眉に唾つけて読んでいただけると助かります。間違ったことがあったら、射殺するまえに教えてれるとうれ…

ぜんぶわかってあなたをみつめている『裏切りのサーカス』

ついに観ました。 去年の夏ごろからずっと待ち望んでいた観賞で、予告編は何度見たかわからないし、原作も読んだしル・カレ作品も(全部ではないけど)読み進めてるし、『ナイロビの蜂』も読んだしその他スパイ映画/小説ばっかり読んでるし、で、ついに!つ…

『エンドゲーム』

『バンテージ・ポイント』のピート・トラヴィス監督最新作!というと、アフター『ボーン』な手持ちカメラ多用のハイテンションなアクション映画をイメージしてしまいますが、さにあらず。相変わらず手持ちカメラでブレブレな撮影ではありますが、なかなか渋…

歳の差異性間交流映画『アジョシ』

質屋を営む男テシク(ウォンビン)は、過去を隠し孤独に暮らしていた。隣家の少女ソミ(キム・セロン)のみが彼と心を通わせていたが、ソミの母親が引き起こした事件に巻き込まれ、裏社会の人々に拉致されてしまう。彼女を救うため、テシクはひとり壮絶な戦…

社長冒険記『北北西に進路を取れ』

広告屋ソーンヒル(ケーリー・グラント)は、偶然から全くの他人と間違われ、謎の男たちに拉致される。一晩の軟禁ののち男たちの手を逃れたソーンヒルだったが、彼の行先には更なる苦難と冒険が待っていた。 1959年、アルフレッド・ヒッチコック監督。 俺ス…

これはアメリカじゃない『コードネームはファルコン』

1974年、アメリカ。 神学校を退学し、政府関係企業に就職した青年ボイス(ティモシー・ハットン)は、CIAの機密通信を取り扱う部署に配属される。他国の内政に干渉する政府のやり口に反感を覚えた彼は、麻薬密売に手を染めている幼なじみ・リー(ショーン・…

盗聴狂の悲劇『カンバセーション...盗聴...』

1972年、サンフランシスコ。盗聴の専門家ハリー・コール(ジーン・ハックマン)は、数々の伝説的な盗聴を成功させた男として知られていた。ある企業重役からの困難な依頼をまたも成功させた彼だったが、長年の孤独な生活と己の仕事への疑問から、徐々に猜疑…

スパイになってはみたけれど『カンパニー・マン』

ライバルと苛烈な競争を続けるハイテク企業デジコープ社に、企業スパイ要員として採用されたモーガン(ジェレミー・ノーサム)。退屈な日常からかけ離れたスリリングな日々に心を踊らすが、その任務はどこか目的のつかめない異様なものだった。やがて彼の前…

悪い老人どもへの復讐『オデッサ・ファイル』

1963年、フランクフルトの事件記者ミラー(ジョン・ボイト)は、年老いて自殺したユダヤ人の手記を入手する。そこには、強制収容所で凄惨をきわめる所業に手を染め、戦後も裁かれることなく生き延びるSS隊員ロシュマン(マクシミリアン・シェル)に関する詳…

ドクター・グリップの誇り『アメリカを売った男』

2001年。FBIの若き技官オニール(ライアン・フィリップ)は、勤続25年のベテラン情報官ハンセン(クリス・クーパー)の補佐役となることを命じられる。かれのセクハラ容疑を裏付けるための目付け役という下世話な任務のはずだったが、実はハンセンはより重大…

ショーン・コネリーのジレンマ『オスロ国際空港 ダブル・ハイジャック』

オスロ駐在の英国大使が、過激派によって自宅に監禁される事件が発生する。テロリストに屈することをよしとしない正義漢タルビック大佐(ショーン・コネリー)が現場の指揮を取るなか、ロンドン-オスロ便の民間機が乗っ取られるという新たな事件が起こる..。…

田園のなかの第二次大戦『エニグマ』

1943年イギリス。療養中だった天才数学者トム・ジェリコ(ダグレイ・スコット)は、緊急の命を受け職場へ復帰する。アメリカからの大輸送艦隊を救うため、四日以内にナチスの暗号を解析しなければならないのだ。しかし、かつて愛を交わした事務員クレア(サ…

おれたちの自慢されたいソ連『アークエンジェル』

学会のためモスクワを訪れたアメリカの歴史学者ケルソー(ダニエル・クレイグ)の前に、スターリンの秘密を知るという老人が現れる。スターリンの死んだ夜、彼はある重要な文書を隠匿する任務を帯びたというのだが..。 ロバート・ハリスの『アルハンゲリスク…