こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ラブライブログアワード2019のこと

 今年もこの季節がやってまいりました。グラミー賞アカデミー賞、そしてラブライブログアワード、とこの3つの賞が(ここ二年のおれにとっては)世界三大アワードなんですが、正直なところ、ラブライブログアワードはあくまで昨年の第一回開催だけで終わるかなと思っていました。

 
 グラミー賞アカデミー賞もそれを成り立たせる業界の集まりがあり、結果や授賞式が金になり、そして賞を獲得すること自体が受賞者の金になるわけです。賞をあげる側ももらう側もちゃんと金がもらえる。けれども、ラブライブログアワードにおいてはそんなことはありません(ぼくの知る限り。……ないよね?ないですよね!?実は賞レースの裏側で金とかラブライブ!フェスのチケットが動いていたりしないよね)。
 にもかかわらず、ラブライブログアワードを主催する魂さんは昨年のアワードを一人で切り盛りして成功させていた。そんな献身的な取り組みが何回も続くはずないし、そんな期待しちゃいけない、とわたしは思ってました。
 が、蓋をあけてみたら、複数の有志が運営に参加し、今年も昨年同様に、ていうかちょっとパワーアップして開催されるというじゃないですか。
 こういう事態を前にすると、そもそも「賞をあげる」「賞をもらう」ということは、それ自体が人を楽しくさせ、力づけるのだ、ということがありありとわかります。先程、ラブライブログアワードをグラミー賞アカデミー賞と並べてみましたけど、そういう「賞」の持つ素敵さかげんにおいて、ラブライブログアワードは決してそうしたショービジネスの頂点にあるような賞と大差ないのだ、とわたしは信じます。
 すげえなラブライブログアワード、そしてすげえなラブライブ
 ラブライブアワード2019の結果発表は本日1月19日に行われる予定です。それを控えて、ちょっとでも賑やかしになればいいなと思いまして、今回の記事ではわたしがラブライブアワード2019で投票した記事を紹介したいと思います。どれも面白いのでぜひ読んでいってくださいませ。

 まず、アワード自体の詳細は、主催の魂さんによる記事をお読みください。

http://ishidamashii.hatenablog.com/entry/loveliblog2019

 

 なお、昨年、自分の投票した記事について書いたのはこちら。

ラブライブログアワード2018のこと - こづかい三万円の日々

 

 ラブライブアワードは、自薦・他薦で候補作を決定→各部門の候補作に、一人二票ずつ投票→得票数の多かったものが受賞、というプロセスで賞が決まります。

 わたしは、本投票の際には、昨年同様、ノミネートされた記事をすべて読んだうえで投票先を決めました。
 結果として、推薦と本投票の各締切直前に大量のブログを読み漁ることになり、そして印象的だったものははてなブックマーク経由でツイートしたため、11月・12月の月末にはかなりTLをお騒がせすることになってしまいました。そういうことをするなら、もっと普段から人のブログを読まねばいけないと反省しています。
 また、候補作推薦の際に挙げた記事とは異なる記事を本投票で投票した場合も多々あります(というか大半がそう)。候補作に挙げたものについても、そのうち追記したいと思います。

 本投票における候補記事は合計117、複数部門にまたがって候補となった場合も含めた延べ数は125。とんでもない数になっていましたが、たいへん優秀で思いやり深いアワード運営様が候補作一覧をスプレッドシートで公開してくれたおかげで、記事のチェックも選考もかなり楽になりました。


 それではさっそく、各記事をご紹介しましょう。なお、「9周年部門」については、投票をしませんでした。候補になっていた記事もなかなかよかったのですが、いかんせんノミネート記事が一つのみという特殊な状況で、「9周年を扱った記事なら他にも同じくらいいいものがたくさんあるな」と思わざるをえなかったのです。候補作を挙げる時点で気づいていれば他の記事も挙げることができたはずで、これは個人的にはちょっと反省です(とはいえ候補のかたにも申し訳ないし、いい記事であることには変わらないので広く読まれてほしいと思います)。

ストーリー部門その1 ソウさん「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!を観る前におさえておきたい「6つのポイント」」
http://sona99.hatenablog.com/entry/2018/12/04/210000

 わたしは「答え合わせ」っぽい読解だけの記事が苦手です。最終的に作品の答えは作品を受け取る人それぞれが出すものです。もちろんそういう読解も面白いし自分も書くけれども、それだけじゃ息がつまる。
 ソウさんの記事は、非常に細かく『ラブライブ!サンシャイン!!』アニメシリーズの要点を書きながらも、答えじゃなく、考える道筋を提示してくれているところがすごい。読者自身の感想を邪魔しないのです。
 映画公開前に書かれたことも大きいとは思いますが、ソウさんのほかの記事も同じように読み手に自由さを与えてくれますから、これはソウさん自身の才能の現れなのだと思います。


ストーリー部門その1 りーずさん「ラブライブ!サンシャイン!!」

 『ラブライブ!サンシャイン!!』シリーズ全体を俯瞰して見事に語る批評です。特に、『ラブライブ!』を知らないまま『ラブライブ!サンシャイン!!』から入った視聴者についてのくだりはすさまじくすばらしい。
 『ラブライブ!サンシャイン!!』というアニメシリーズを愛するものとして、いつか、『ラブライブ!』、あるいはアニメという分野じたいを知らない人にも届くような文章を書けたらとわたしは思うことがありますが、りーずさんのこの記事はそういう域に達しているのではないか、とも思います。


キャラ部門 その1 黒鷺さん「遠く離れて 気がついたこと。」
http://darkphoenix505pianoles.hatenablog.com/entry/2019/10/30/223945

 アニメ版鞠莉を一貫したテーマで読解してみごと。淡々とした熱さが好き。
 ところどころ、書き手の考えたキャラクターの内面などをそれが物語上ではっきり明言されたことのように語ってみせる、語りというよりは騙りのような部分があるんですが、とても練り込まれて鼻白むところがない。騙りに引き込まれる。それは要するにこの記事が、とても良いキャラクターの読解なのだということなのだと思うのです。


キャラ部門 その2 魂さん「それだって0じゃない -劇場版以降 僕が国木田花丸に関して考えたたった一つの事柄-」
http://ishidamashii.hatenablog.com/entry/2019/02/08/161852

 魂さんはいろいろなタイプの文章をものしていますが、わたしが特に好きなのはこういう絞られた記事です。

"具体的な言葉ではなく、ほんの一瞬しか映らない景色で国木田花丸の「過去」を全て「肯定」してみせる"

 記事はこのように『ラブライブ!サンシャイン!!』のなかの美しい表現を記述しますが、記事はそのことをそのアニメの表現と同じように、短い言葉、選ばれた文章で描く。描く対象と使われる言葉のありかたが合致したとき、文章はひとつ上の高みに登るものですが、この記事はその好例です。


キャスト部門 サケ茶さん「Super-pouvoir 私感。」
http://saketyaduke11.hatenablog.com/entry/2019/3/31

 伊波杏樹さんの「自分を消費してくれ」という話がすごく興味深いし、それを受けての書き手の心情もリアルで愛を感じます。

"そりゃあちらは消費される覚悟が決まっていると思います。でもこちらは踏ん切りがつかないんですよ"

 わかるわかる。
 どんなにキャストのことを堂々と胸張って応援しようぜって思っていても、そしてそういう自負を抱けたとしても、どうしてもステージの上と下には明確な距離がある。むしろその距離を見失ったら危ういことになる。そういう関係を見据えたうえで、じゃあどうするのか。
 サケ茶さんのこの記事は、現実的にファンは自分ひとりじゃないことなどにも思い至りつつ、こじらすことなく、伊波さんのことを好きだということ、彼女のイベントがとても楽しかったということをまっすぐ書く。こういう誠実さのなかにこそ答えはあるのだろうな、とわたしは思いました。


聖地部門 その1 とっきーさん「沼津の旅で見つけたもの」
http://tsktktk.hatenablog.com/entry/2019/10/27/135620

 自分は観光という行為がとても好きだし、観光という行為がもたらす人、社会、経済への影響について考えるのも好きです。

"僕らは周りに溢れている「普通」を、「特別」に変えることが出来る"

 とっきーさんがこの記事で書いたこのフレーズ、自分が考える観光の真髄に触れているなという感じがして感動したのでした。観光という行為の定義などはちょっと措いておいて、あ、そういうことだな、と納得してしまった感じです。
 読み返してみると、あくまで文章はとっきーさんにとっての沼津の魅力を切り取っていて、それを普遍的に語ろうみたいな試みは見えないのですが、むしろだからこそ読んでいる自分は得心してしてまったのかもしれない。そこから先は自分の考えることで、だから記事を読み終わったあとにすごく沼津に行きたい、そして自分にとっての「特別」や「普通」を考え直してみたい、という気持ちになりました。


聖地部門 その2 はみばらハミーさん 「突発的、そう思えば……の旅」
https://note.com/hami_/n/n786ccd4c5655

 一方こちらは、具体的な「旅行記」として読ませるタイプの記事です。そして、ご自身も観光業に携わるはみばらハミーさんでしか体験できないエピソードが本当にすばらしい。旅や観光ということのもつ力を思い知らされて心底感動しました。
 記事中で触れられる、あまねガードのことや、だいこくやさんでの体験なども同じ味わいがありますが、観光する側・される側、日常と非日常、といった立ち位置に閉じこもらないことで、世界の見え方や感じ方は大きく変わるのだなと思い知らされます。世界は広くて狭く、そんな世界を観光できる自分たちの幸せを実感できる記事です。


エモ部門 その1 あきのさん「明日は今日より夢に近いはずだよ」
http://akino-oniku.hatenablog.com/entry/2019/07/01/004512

 μ'sを前提としたAqoursの話なのですが、どちらかに偏重しないままに、でもエモーショナルなのがすごく今(2019年)っぽい。
 Aqoursかμ'sのどちらかに深く深く入り込んでいくタイプのエモさではなくて、現状を俯瞰することでエモさを獲得する、っていうのは結構すごいことだと思います。それだけ、ラブライブ!フェス前夜としての2019年がむちゃくちゃエモい一年だったということなのでしょうが、そういう時代感を捉えていて、エモさのアップデートができててすごいなと思う。手練れのエモさというか。
 長年一つのコンテンツを追いかけていると、エモさを感じることはある程度ルーチンワーク的に可能になりうると思うのですね。蓄積があればあるほど、現在目にしている光景や感情と結びつけて、運命的なことや偶然の合致、自分とコンテンツの変化と普遍性なんかを見出して感動できる。あきのさんくらいにラブライブ!を熱く深く追いかけている人ならいくらでもそういうことは可能だと思うんですが(そして一概にそれが悪いことだとは思わないのですが)、深い深い油田を掘って限りある燃料に火をつけるのではなく、そのへんの地面に見えているものを再確認して、これエモいですよね、とサクっと提示している感じがする。
 作品の経てきた長さとあわあせて、あきのさんが大量に書いてきた『ラブライブ!』『ラブライブ!サンシャイン!!』についてのブログの蓄積も思わせる余裕がある、良記事でした。

エモ部門 その2 じょなぺしさん「あ」
http://jonapeshi.hatenablog.jp/entry/2019/01/31/074716

 いっぽうこちらは深く深く掘っている感じの記事。ここで掘られているのは書き手の心。黒澤ルビィという人を心の底から愛している人の文章だと思います。そしてこんな文章を書かれるというのはきっととても幸せなことのはずだ、とわたしは信じたい。
 アワードの投票時、わたしとしてはこの記事から感じるものって「エモさ」とはちょっと違うかもしれないな、と思っていました。今回再読して、シングルセンター投票企画が終わり、結果として黒澤ルビィがセンターになれなかった現在から読み返したことで、センターを獲得できなかったこととこの文章の価値にはなんの関係もなく、ただただすばらしい文章だと思うのだ、ということが改めてわかりました。そういうありようはとっても「エモーショナル」で、そしてそれはわたしがとても好きな類の「エモさ」なのです。


楽曲劇伴部門 アオイさん「チューニング合わせて」
 AZALEA『LONELY TUNING』を主題とした記事。わたしは『LONELY TUNING』という楽曲がすごくすごく大好きなのですが、わたしがそういう人間であることを差し引いても、これはいい文章だなあと思うのですよ。好き。
 筆者自身も明言する通り、歌詞の考察みたいなことはなされないで、筆者の「人の話を聞くのが好きだ」という気持ちが『LONELY TUNING』という楽曲をベースにして語られていく。ふわふわと筆致は漂って、しかしそれが結果的に、文章自体が「孤独なチューニング」となり、アオイさんの話を聞く読者、読者の話に耳をそばだてるアオイさん、という関係が立ち上がってくる。そして遠くに『LONELY TUNING』が響く。
 タイトルもいいし、文中の「孤独なチューニング」という言葉もいい。『孤独なボウリング』みたい(アメリカの人々の社会的なつながりについて描いた社会学の古典)で、それもアメリカのラジオ文化・DJ文化を想起させて楽しい。いやまあこれはわたしの勝手な見立てですが。

ライブ部門 サケ茶さん 延々はないけれど、永遠はあるんじゃない? Aqours 4th LoveLive! ~Sailing to the Sunshine~ 私感 http://saketyaduke11.hatenablog.com/entry/2019/01/25/015548

 テーマが端的にタイトルで示されていて、極めてコンパクトに語られる。名文。
 オタクにとってライブはとても楽しく同時につらいものだ。楽しければ楽しいほどにライブのあとのことを考えてしまうから。オタクがライブについて書くとき、多くの文章はこの問題に収斂していくと思う。楽しさと辛さのあいだでいかにライブ後のことを肯定するか。
 この記事はその問題を最短距離で走り抜く。それは4thライブをAqoursが走り抜けた速度と力を、読者にありありと思い出させてくれる。


あしかさん 虹と紙飛行機?Aqours 5th LoveLive! Next SPARKLING!!感想? http://ashikaouou.hatenadiary.jp/entry/2019/06/16/121116

 一方でこちらはライブの演出を中心に、アニメ、ファン、と広く精密に分析していく。結果として描かれるのは、5thライブ時点での『ラブライブ!サンシャイン!!』のありようだ。ファン側の思い入れを抑えた半歩引いている書きぶりが、作り手の意図や心情の核に迫っているように感じさせる。
 観客席の「虹」の様子などエポックメイキングな話題を扱っていることもあって、後世に残されるべき充実のレポート/批評だと思います。


ある視点部門 はみばらハミーさん 新春!!!ラブライブ!サンシャイン!!セリフかるた(2期編) https://note.com/hami_/n/n960890381d0a

 これは大発明だと思いますね。かるた形式で『ラブライブ!サンシャイン!!』アニメ二期を振り返る企画なんですけど、物語の順序から解き放たれランダムに襲い来るサンシャイン!!の笑い・泣き・輝き。爆笑のあとすぐ泣きが来て、そしてまた、と超高速で感情が揺さぶられます。
 こうやって見ていると、ラブライブ!のアニメシリーズがもつ幅の広さを実感します。こんなふうに(ちょっと無茶に)われわれの感情を揺さぶってくれていたんだなあ、と感動する。
 言葉とシーンの切り取り方、そして一言コメントのうまさがただごとではなく、この人アニメの全カット覚えているのかな?と思いました。


センケイさん 読書を通じてサンシャイン!!を楽しもう #-1 準備の準備編 ラブライブ!は「都市」を再定義するのか? https://a16777216.hatenablog.com/entry/2019/01/19/215245

 わたしには『ラブライブ!』を入り口に世界の森羅万象を考えたい・語りたいというような漠然とした欲望がありまして(だって極言すれば『ラブライブ!』は世界のすべてだから)、同人誌『黒澤家研究』はそういう意図のもと作っているのですけど、そういう嗜好を存分に満たしてくれるのがセンケイさんのブログです。
 学術的なマナーを抑えつつも、人文社会科学のプロパーが書いた専門的な文章にはなってないので、意外とふつうのオタク的なブログとして読めちゃいます。厳密な論議になりうるかはわたしも専門外なので留保つきで読んでいますが、非常にたくさんの観点・思考の取っ掛かりをくれることは確か。
 特にこの記事は、「あの街」についての『ラブライブ!』での扱い方がすごく心に残っていた身としてはいちばん思い入れをもって読みました。


ドキュメンタリー部門 はまさん おかんと僕とラブライブ! http://hmskdagoyabai.hatenablog.com/entry/2018/11/14/093505

 シンプルないい話なゆえに破壊力が高い。むちゃくちゃ素敵な人たちだなと思います。
ちょっと遠慮気味だったお母様が、『ラブライブ!サンシャイン!!』の魅力に惹かれて少しずつ、今まで自分の行ったことのない場所へ行くことに挑戦する姿が熱い。それを少しずつアシストするはまさんもかっこいい。
 Aqours4thライブ、東京ドームの現場で、普段のライブではあまり見かけない客層の人たちをたくさん見かけた記憶があります。恐らくそのなかには、はまさんのお母様のような方々がたくさんいたはずです。Aqoursが巨大な会場でライブをすることには、とても大きな意味があったのだと改めて思いました。


あおさん 小泉花陽/松浦果南https://aobox.hateblo.jp/entry/2019/10/23/202544

 以前から大学の学祭なんかで『ラブライブ!』シリーズのコピーダンスを行う人たちには淡いあこがれがありまして、すげえ青春しているんだろうな…と思ってましたが、本当にすげえ青春していた。青春物語、成長物語として抜群の面白さと感動があります。
 語り手がどういう立場で語っているのかはっきりさせない書き方のため、イベントが成功したのかどうか、書き手はコピーユニットをやめてしまったんじゃないか?というサスペンスが発生しており、そのハラハラドキドキもすごい。当事者なのにこれだけのドキュメンタリーとしての読み応えを成立させているの、なかなか稀有だと思います。


初記事部門 ゆらゐさん 「ラブライブ!」との出会い、そして内田彩キャラソンライブを振り返って https://uly-yurawi.hatenablog.com/entry/2018/11/07/231115

 なんだかうますぎるので初記事なんすか本当に?と言いたくなります。
 内田彩さんのキャラソンライブの記事だなと思って読み始めると書き手の『ラブライブ!』との紆余曲折が語られます。まっすぐシンプルに作品にはまらなかったゆえに、数年間かけて、ゆらゐさんだけの道を通って好きになっていく長い過程は、『ラブライブ!』、そして内田彩さんの長い道のりに重なります。
 それだけに、記事の後半、ライブでの感動を伝える部分から読者が受け取る感慨もひとしおです。


早川景さん 【第一景】私の中のラブライブ!サンシャイン!! https://keihaya.hatenablog.com/entry/2019/01/13/231912
 わたしには『ラブライブ!サンシャイン!!』のアニメを批判していた人たちへのカウンターとしてブログをがんばっていた時期がありまして、その頃批判していた人たちが何を考えていたのかがよくわかることが第一の面白さ。そしてそこからどのようにアニメを受容していくのかをとても冷静に描いていくのが第二の面白さ。
 書き手自身が書くように、アニメの見方は誰かに教えてもらうようなものではありません。でも一方で、より豊かに受け取る道筋はどこかにあるはず。それを身をもって表してくれていることに、「『ラブライブ!サンシャイン!!』はいいアニメだよ!こういう見方があるじゃんよ!」とあのころ言い続けていた身としては、勝手にとても嬉しく(そしてすこしむずがゆく)なる記事なのでした。


企画部門 トミーさん nanoらいぶギャラリー https://tommy-445.hatenablog.com/entry/2019/10/30/181045

 Twitterで時々流れてくるトミーさんの作品のサムネイルを見かけても「ふーん、コマ撮りアニメか?」とぼんやりスルーしてしまっていたのですが、まとめて観てびっくり。キャラクタやライブ・アニメの場面の再現に固執せず、かといって素朴さに堕したネタ化にも走らず、様々な工夫が強く感じられる作品群に唸りました。
 センスはもちろん、これだけのものをハイペースで発表する熱意もすごい。そりゃいろいろなところに伝播していくよね(フラスコの販売会社とか)…と思います。未見の人はぜひ。


アクアバス企画チーム Aqoursbus 後書き https://aqoursbus.tistory.com/12

 Aqoursのアジアツアーはほんと画期だったと思うんですよね。もしかしたら東京ドーム公演よりものちのファンに与える影響は大きいのかもしれないとすら思う。
 それはこの「Aqoursbus」のように、日本以外の国のファンたちの凄まじい熱意と誠意ある取り組みがたくさん可視化され、共有されたからです。
 それぞれの場所でできることできないことは千差万別で、そうした取り組みと同じことを日本のファンもやるべきだとは思いません。重要なのは、『ラブライブ!』が好きなわたしたちには、まだまだいろいろなことができると信じること。
 この記事は、そう思うに十分な熱気と知識を与えてくれます。とっても元気の出る記事。


コラボ部門 とっきーさん 「学校祭ライブ中止の危機からの脱出」へ行こうぜ。 http://tsktktk.hatenablog.com/entry/2019/09/05/204037

 ネタバレせずに脱出ゲームの魅力を語り切る……ていうかほとんどタイトルの読み解きだけでやりきる豪腕ぶりに感嘆しました。
 実際、その制限つきでの語りだけで脱出ゲームの魅力、行くべき理由をかなりの精度で語りきっている。自分はたしかこの記事を脱出ゲームの参加後に読んだと思いますが、そうそう!とうなずくことばかりでした。
 最近、ライブやアニメを受け取ったあと、レポートとして書くのも大事だけれども、その場に他の人をいざなうような記事も大事だな、と思うことがよくあります。やっぱり、大好きなAqoursや『ラブライブ!』のことをもっと多くの人に知ってほしいし、知っている人にはもっともっと深く知ってほしい。いろいろなイベントに参加してほしい。
 そういう意味でも、開催中のイベントに、ネタバレなしで「行こうぜ!」と全力で誘ってくれるこの記事は大好きだなあ、と思うのです。


無差別部門 せぐねるさん "この星のことがとってもスキになれる"みたいな話 https://gamp.ameblo.jp/segnel/entry-12301533285.html

 去年のアワードでも好きだと言っていた記事です。一番がどれよと言われたらこれです。
 多数のメディアからの引用をもとに楽曲を読み解きつつ、書き手個人の、極めてちっぽけな(これが重要なんです)、でもその本人にとってはとても意味のある出来事が補助線として引かれる。
 こういうタイプの記事(客観と主観の両立)がそもそも好きではあるんですけど、この密度、このバランスで成立できる人はそうはいなくて、やっぱり書き手としてのせぐねるさんが大好きなんだよな、と改めて思いました。なので二票ともこの記事に投じています。


 以上、本投票で投票した記事の紹介でした。
 改めて読み返してみるとどの記事も本当におもしろいし素敵です。今回わたしは記事が一つしかノミネートせず、まあ受賞も無理だろうなと思っているんですけど、こうやって他の候補作を観ていると全然問題ないや~という気持ちになってきました。
 最初の繰り返しになりますけど、こうやって、自分の好きなことを言葉やその他の表現にすること、そしてそれをお互いに読み、讃えあうことってほんとすごい楽しいことです。意味があるか、偉大かどうか、後世に残るかどうかはわからん。でも楽しいんだよ!!

 あ、そういう話の流れで思い出したのですが、もう一本記事を紹介しておきます。

よしみさん 「短歌(ラブライブ短歌)を初めて一年が経った。」
https://note.com/y043/n/n08ff7a3c2b9d

 自分は2018年ごろからツイッター上で「ラブライブ短歌」というものをやっていまして、しかし2019年は全然できなかったんです。
 主に、キャラクターの誕生日にあわせて、その人のことを歌う、ということをしていたのですけど、去年は1月に『ラブライブ!サンシャイン!!』劇場版を受け止めきれなかったという出来事があったため、一年ずっと、ラブライブ!のことにいまいち力を入れられなかった。入れるべきだと思ってもそれは違うじゃんと思っていた。
 で、そういうなかで、自分と同じラブライブ短歌という形式を、自分よりさらなるハイレベルさで楽しんでいるよしみさん(そして他のたくさんの詠み人たち)の姿を見て、悔しさと喜びとをたくさん味わったのでした。
 そしてそういう感情は、そんなに悪いものではなかった。
 それを改めてこの記事で実感しました。


 授賞式当日の朝というとんでもないタイミングで書き飛ばしたために、かなり荒っぽい記事になってしまいました。
 まあとにかく、まずは今夜の授賞式(ツイッター等で情報/実況が出るはずです)を楽しんでほしい、そしてもしあなたのなかに『ラブライブ!』をめぐる「楽しい」という気持ちがあるのなら、ぜひそれを言葉にして、表現してみてください。ほんと!すごく!楽しいから!!