こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

「輝け!Aqoursぬまづフェスティバル」のこと

*この記事は、イベントにこれから参加する人が読んでも問題ないように書きました。ただし、わたしの感想はぼんやりながらもこってり目なので、完全にまっさらな状態で臨みたい!という人は読まないほうがいいかもしれません。

 

 「輝け!Aqoursぬまづフェスティバル in よみうりランド」に参加してきました。5月13日午前開催の初日・初回です。

www.scrapmagazine.com


 SCRAP主催の過去二回の脱出ゲームではいずれも存分に楽しんだから今回も同様に楽しめると思っていたけれども、今回は期待以上に楽しめました。そして心を撃ち抜かれました。

 事前にこのイベントにどんなことを期待するかというのを以下で喋っていたのですが、その期待をストレートに撃ち抜かれる感じでした。びっくり。

 

radiotalk.jp*全部で4回あります。拙い内容と録音で恐縮です…。

 

 もちろんこのイベント、むちゃくちゃ重層的で多角的で、わたしが撃ち抜かれたポイントもイベント全体のごくごく一部分のみです。わたしとは全然気が合わないという人もきっと楽しめるから安心してほしい。
 とはいえまず最初に言っておきたいのは自分はこの『Aqoursぬまづフェスティバル』が大好きで、今日は人生のなかの大切な一日になってしまった、ということです。一年くらい経ったらぼんやりとしか覚えていないだろうけれど、でも決して忘れられはしないでしょう。

 

 まだ初日が終わっただけなので、イベントのなかの具体的な話をすると興を削いでしまいます。先程の繰り返しですけど、すごく重層的で多角的なイベントなのだ、と言っておくにとどめたいと思います。
 どういうことかというと、どんなふうにイベントに参加したとしても、たぶん全貌は掴みきれない、ということ。時間も限られているし、様々な要素が複雑につながっているため、ちょっとしたタイミングや時間配分の違いで、自分が参加する出来事・出会える人物が大きく変わってきます。
 全貌をつかむのなんて無理だし、選ばれたものだけが到達できる、唯一無二のなにかがあるとは考えないほうがいいのではないかなと思います。その地点に到達すればゴール、というものはたぶんない。いや、あるのかもしれないけど、それを必死に探し回るのは疲れるし、多くの情報を網羅するにはどうしてもイベントを俯瞰して眺める必要があるので、イベントがセッティングしているフィクションへの集中度・没入度を犠牲にする必要があります。謎解きではなくて、フェスの成功が目的、というイベントなわけで、フェスを楽しむこと自体を犠牲にしてまで謎を追いかけるのはちょっともったいないのではないかしらん。
 むしろ自分の目の前のことに集中して、一歩一歩足を踏み出していくことを大事にしたほうがいいのではないか、とわたしは思いました。結果として、わずかな事柄しか目にできないかもしれないし、逆に思いがけない景色が見えてしまうかもしれない。そしてそのどちらも楽しいのです。

 

 自分はフェス内のブースすべてを回ることはできなかったし*1、イベント内の出来事の8割くらいは見逃しているだろうと思います。まあそれはちょっと悔しくもあるのですけど、一方で、いくつかのごくごく小さな出来事がとても印象深くて、その記憶と満足感だけで今日はぐっすり寝られるなという気持ちです。
 Aqoursのあるメンバーについて浦の星の生徒さんが話していたときの尊敬と親しみのこもったあの声。たまたまある場所で一緒になった助っ人さんの緊張して掠れた声。そして高海千歌のあの言葉の響き…。イベントの長い時間のなかのそうした瞬間のわずかな音のなごりが、わたしを幸せにしてくれています。

 

 考えてみれば、実際に遊園地の一角を貸し切って沼津をアピールするイベントがあったとして、その手伝いをしたら、とてもイベントの全体を把握することなんてできないはずです。でも、そういう体験に価値がないかといえばそうじゃない。
 これからイベントに参加するかたに読んでいただいているとしたら、ぜひ気を楽にして、全部見なきゃ!というような焦りは捨て去ってみてくれませんか、とお伝えしたいです。
 全然満足できない!もっといろいろ見たかった!と怒られるかもしれませんけど。まあもしそう思ったらまた参加すればいいのです。

 

 

 かなり話は変わりますし、そもそも書いてよいか迷う話題なのですが書きます。
 今回のイベントは「浦の星女学院の生徒」である若い女性のキャストさんたちが多数参加しています。イベントの大半は彼女たちとの楽しいコミュニケーションによって成立しています。自分は今年で40歳になる男性で、なんかそういう人間が、高校の制服を着た若い女性のキャストさんたちに明るく楽しく接遇されている状況ってどうなんだろうな、という気持ちにはなりました。おっさんが若い女性への欲望を満たしてるだけじゃん、と批判されても言い返せない。というかもともとAqoursへの「好き」という感情にはそういう部分が確実に含まれています。
 不当な搾取を行っているわけではないはずなので*2、これはこういうものなのだ、とスルーすることも一つの選択肢ではあろうと思います。とはいえわたしはここ最近こういう問題*3をずっと考えてきた人間なので、少なくとも、こういう感想の文章のなかで全く触れないのは嫌だなと思って書きました。
 この件に関連して笑ってしまったのは、イベント開始冒頭の諸注意説明の最中、写真撮影を*4どんどんしてほしいという話のなかで、キャストさんたちがほがらかかつ強い調子で、自分たちを撮るときは「soda」などの自撮りアプリがおすすめですよ!ていうか使えよな!という感じの圧をかけてきたことでした。どんどん撮れ、そして美しくかわいく撮れ、という話なのだと思います。少なくとも見られることにかけては肝が座っている人たちなのでした。だから消費してよいのだ、という話でもないのですが。
 おそらくわたしは消費すること・されることの関係から逃れることはできなくて、その事実に向き合うことと、消費だけでなく与えること*5を続けていくしかないのかなと思っています。

 

 そういうことなんかも考えつつ、わたしはもう一度参加しようと思っています。
 とはいえ、すぐには参加したくないし、あまり何度も参加するのもやめておこうと思っています。だから開催時期の最後のころに行こうかなと思っています。

 まずは今日あったことを反芻して噛み締めたいです。Aqoursの、そして黒澤ダイヤさんのファンとして得られるもの(情報)も大量だったし、感情もいっぱいいっぱいだし。できればネタバレありの長い感想も書きたいです。詳しく詳しく書いて残したい素晴らしいところがたくさんあるイベントだったので。

 そして、そういうすばらしいイベントなのだから当然、何度も参加して浸りまくりたいという気持ちはあるけど、それをやったらこの感動が擦り切れてしまいそうな気もします。自分の記憶力や心のキャパシティには限界があるので、その範囲内で大切にできるように回数は絞っておこうと思います。
 それに何回も何回も同じお祭りの日を繰り返すなんて『恋はデジャ・ブ』みたいだし*6

 あの映画のなかのビル・マーレイは自分の手でいろいろなものを手に入れ、また失うことを繰り返してようやく人生の真理をつかんだけれど、Aqoursと浦の星のひとびとのおかげで、わたしはすでに人生の真理の一端を知ってしまっています。祝祭は限られているからこそ輝く、とも言えます。

 あとは自分の人生を生きるだけなのです。

 

Aqoursぬまづフェスティバルの詳細はこちら。ぜひ参加してください。すごく楽しいです。

www.scrapmagazine.com

 

・追記1
 こういうイベントにおけるアクセシビリティってどう考えられるのかな、と終わったあとに思いました。様々なハンディをもった人が、この「体験する物語」を体験できるかどうか。ある程度はできるかもとも思うのですが…。
 Liella!による手話の動画が公開されたこともあるし、アカデミー賞で『coda』が注目されていることもあるしで、様々なハンディをもった人も等しくエンタテイメントを楽しめるとよい、という空気は着実に広がっていると思うのです。SCRAPってもともと常にチャレンジングなことをしているので、アクセシビリティの面でも先進的なこと*7ができるのではないかしらん。キャストの多様性も広がるといいですね。

 

・追記2
 Twitter上でわたしが把握できた限りのスタッフ・キャストのアカウントをリストにしています。イベントの最後にクレジットが流れますが、見直したりはできないのが残念です。せめてそのごく一部の代わりとして。

twitter.com

 イベント開催までの数週間、毎日垣間見えるキャストのみなさんの準備の様子が、まるで実際に浦の星の生徒たちの様子を見るようで、とても楽しかったです。
 キャストのみなさんはそれぞれ個性的でバックグラウンドも違うし、もとからAqoursを知っていた人もそうでない人もいたと思うのですが、少なくとも自分はAqoursと『ラブライブ!サンシャイン!!』のファンとして文句のつけようがなかったと思っています。すばらしい浦女っぷりでした。きっと公演が進むたび、どんどん変化し深まっていくのだろうなと思います。

 

・追記3(5/14)

 イベント参加直前に橋爪紳也『日本の遊園地』という本を読んでいました。

 たまたま、馴染みの古本屋で見つけて買ったのですがこのイベント前に読むのにぴったりでした。馴染みの古本屋というのはこういう出会いを提供してくれるので最高です。

 京王よみうりランドの開園時のことがわずかですが載っており、ゴンドラから見える寺社みたいなのなんなん?という疑問も一応解けます。

 日本と海外の遊園地の歴史が概観できるので、京王よみうりランドを楽しむうえでも楽しいし、刊行当時(2000年)に展望された遊園地ないしはアミューズメント施設の未来像がSCRAPの提供する脱出ゲームや「体験する物語」と共通するところがあって非常に興味深かったです。

 版元品切で電子版もないので、お近くの図書館か古本屋で探してみてください。

calil.jp

*1:と、「ブースを回る」と一口にいっても、いろいろな意味が生じうるのがこのイベントの楽しいところです。

*2:SCRAPはキャストのみなさんにたっぷり報酬を弾んでほしい。また課金するから…。

*3:詳しくは過去のブログ記事や同人誌『黒澤家研究』を参照ください。

*4:映像を除く

*5:小さい話では、チケットを買いグッズを買って正当な報酬をかれらに払うということで、大きい話をすれば、一生懸命働いて若い世代によい世界を残す、とかそういうことです。

*6:同じテーマの映画としては『ミッション:8ミニッツ』のほうが好きだし、小説だと『存在の耐えられない軽さ』が好きです。何の話?

*7:という表現はおかしくて、本来はそれは「ふつう」であるべきです。