こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ボーン・アルティメイタム

 期待通りの傑作。ここ10年のアクション映画のベストだと思う。
 ジョン・ウーのアクション設計が、一つの部屋、ホールくらいの場を設定して、そこでどう人間が動き銃弾がいきかいそれらの関係性が変わっていくか、というレベルで行われていたのだとする。それと比べると、ポール・グリーングラスのアクション設計は、一つの街区、あるいは街くらいの広さの場を設定して、そこで人間がどう動くか、というレベルで行われているように思う。
 中盤のモロッコでの追跡劇なんか特にそう思わせる。非常に箱庭的なのだ。たとえばウォシャウスキー兄弟の『マトリックス・リローデッド』とかマイケル・ベイの『バッド・ボーイズ2BAD』なんかだと、同じ追跡劇でも高速道路をひたすら走っていく、その中で追うものと追われるものの間にどんぱちが起こる、という程度の設計だったわけだ。『ボーン』シリーズの場合、区切りのある「場」のなかで、追うものがここへ行くと追われるものがこうなって、ひっくりかえってこうなってこうなって……と、場と人とそれらの関係性が強く意識された展開になっている。これはジョン・ウーのアクション設計を街レベルに引き上げてみせたってことなのかも、と思うのである。
 で、もちろん、そのアクションは、物語のために設計されている。

 ……混乱したけど、とにかく言いたいことはグリーングラス大好きってことだよ! もう一生ついていきたい。

 内容については、伊藤計劃さんがみごとな評を書いているのでそちらを参照されたい*1。実力のある作家が同じ分野のエポックメイキングな作品を解析する、それをリアルタイムに読むことのできる幸せよ。