こづかい三万円の日々

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「山村響 LIVE 2023 Bitter Sweet Night」のこと

 この記事は、2023年10月15日、渋谷代官山SpaceOddで行われた山村響さんのライブレポートです。
 この記事を書いているのは2024年2月4日のことで、来週11日には響さんの最新のライブイベントが行われる予定です。前回のライブレポートを書いても新鮮さは皆無なのですけど、最新のライブに参加する方の参考になるかもしれないと考えて、今更ながら書き始めた次第です。といっても実用的なレポートになっているかというとそうでもないのですが。

 

・代官山のこと
 会場のライブハウス・SpaceOddの最寄駅は渋谷駅でした。
  自分は京王線井の頭線を仕事でよく使います。渋谷は乗り換え駅として利用するだけなのですが、それでも、ぼんやりとした土地勘はあるし大丈夫だろう、と思っていたのですが、本当にぼんやりとしているだけでした。めっちゃ迷った。
  渋谷って、谷という文字が使われているだけあって、細かいアップダウンがたくさんある街です。さらには、複雑に交差する鉄道駅を繋げる通路も立体的に絡み合っています。方向感覚がまったくわからなくなる、とまではいかないのですけど、「だいたいあのへんだな」と思って目指していてもなかなか思い通りに進めない。坂の登り降りや、陸橋と地面の上下の関係は、GoogleMapの平面で見ているだけではわかりづらく、渋谷駅(の陸橋)から地面に降り立ったポイントも、その後のルートも、最善手をつかめていませんでした。
  そういうわけで、SpaceOddに到着したのは自分の予定よりは十数分遅くなってしまって、事前物販終了の直前でした。幸い混雑しておらず、目当てのフォトブックを問題なく購入できましたが、ちょっと反省です。
  代官山周辺の地理にはこのあとも手こずりました。開場までに周辺で軽く食事をしておこう、と思って歩き始めたものの、SpaceOddすぐ近くのお店のオシャレな雰囲気に気圧されて迷った結果、結局、恵比寿駅寄りのエリアまで歩いてしまうことに。うーむ。素直に近隣のお店に入っておけばよかったです。SpaceOdd自体にも併設されたレストラン・バーがあったみたいだし。
  ただ自分は街を歩くこと自体が大好きですし、ライブ前後にその会場周辺を歩いた記憶もまとめて楽しみにしているので、今回の迷いっぷりも今となってはいい思い出です。渋谷から恵比寿方面へ山手線沿いを歩いたあたりの、清掃工場の煙突や、空中に階段だけが突き出した取り壊し中の陸橋などの情景が印象的でした。

 

・SpaceOddのこと
 というわけで恵比寿駅近くでうどんを食べたあと、早足でSpaceOddへ戻りました。
 すでに開場時間は過ぎていましたが、自分の整理番号は確か100番台で、少しだけ待って自分の番が来て入場、といった程度のタイミングでした。
 開演30分前の段階でコインロッカーが100台以上空いていたので、余裕をもって利用することができました。上着とカバンを収納し、最低限の持ち物をポーチに入れてフロアへと向かいました。ロッカー周辺は暗かったので、忘れ物・落とし物をしまいか少々冷や冷やしました。
 この日は穏やかな天候で、薄い上着だったのでライブハウスの小さいロッカーにも簡単にしまえましたが、2月のライブは何着ていくか迷いますね。
 SpaceOddは地上階が入り口で地下2階がメインフロア、あいだの地下1階は通路・関係者席・トイレ、という構造です。地下1階から地下2階のメインフロアをバルコニーのような場所からガラス越しに見下ろすことができて、そこからライブを観るのも楽しいのでは…?と思いました。今回のライブの際には、バルコニーにも機材がありましたし、関係者らしき方もいらっしゃったので、長居はしませんでしたが。
 トイレは男女別に分かれており、個室も複数ありました*1。SpaceOddは、全体的に、変わった構造だけどそのぶん空間には余裕があった印象です。
 メインフロアに降りると、すでにステージ前、フロアの前半分エリアにはお客さんがずらりと並んでいます。その時点では、客席後方のスペースにはほとんど人がいませんでしたが、その後開演30分前くらいの段階で後方スペースにも人が次々やってきて、その時点ですでにこれはもう「フロアが埋まった」と言っても全然問題ないじゃん、と思いました。開演時点では、後方エリアも通勤ラッシュあとの山手線くらいの混雑度合いとなっていたと思います。響さんは、ライブ前の数週間のあいだ、チケットの売れ行きに相当な危機感を持ってPRを行っていたのですが、その甲斐があったということなのだと思います。よかったよかった。
 後方エリアからだとステージは見にくいものの、ぐいぐい前方に行くのもあまり好みではないし、何より後方フロアの壁際に設置されたバーカウンターの近くに陣取ることで、いつでもお酒を追加補給できる!という安心感から、自分はそのまま後方エリアに立って開場を待ちました。自分は身長172センチくらいなので、そんな場所でも、人と人のあいだからステージ上を垣間見ることができましたが、身長165センチ以下の人だとちょっと厳しいかもしれません。
 あと、これは今回だけでなく、どんなライブでも思うのですが、ニット帽を被ったままの人がちらほらいて、頼むから外しておくれよ~と思いました。ハットに比べればニット帽だと目立たないと思われるかもですが、意外と頭頂部は出っ張って、視界を遮ってしまうもんなんすよ…。

 

・ライブのこと・構成編
 今回のライブでは、2020年以降の響さんのオリジナル楽曲ほぼ全曲(『Dear...』以外すべて)が披露されました。2022年秋のライブでも、20年以降のオリジナル曲すべてを演奏していましたが、今回は23年発表の『Bitter Sweet EP』収録の5曲を追加、『Dear...』との差し引きで4曲追加しての長丁場となりました。にも関わらず、全体の構成はタイトで、昨年のライブよりも「あっという間」という感覚が強まっていました。
 今回は、明らかに今までのライブよりもMCの回数と時間が減らされており、曲と曲の間の繋がりを維持することが一層重視されていたのではないかと思います。
 ライブの最中や終わった後に響さんが自分のMCの長さとまとまらなさを嘆く、というのは慣例でしたし、ファンはそういう不器用に試行錯誤するさまも含めて山村響というアーティストの表現なのだ、と重々承知していました。
 今回のライブでも、がっつり長く語るMCパートもアンコール後の終盤にあり、しかも今までになかったような強い言葉も用いられた濃密なものになっていました。MCがそこに集中されたぶん、ライブ全体を通して歌と歌の繋がりは強まり、結果として「歌を聴く」ということの満足度も高まったように感じました。
 単にそれは、曲数の増加にともない、歌をたくさん聴いてもらいたい、という思いからの変化なのかもしれませんが、一方で、「歌で伝わることが増えた」ということなのかも、とも思います。2020年以降のセルフプロデュース体制で響さんが発表した楽曲はちょうど20曲となります。粗製乱造ではなく、その時その時の全力を込めた響さんの歌詞と音楽は、響さんの中にある気持ちや願いを、他の誰にもできない解像度の高さで表現できているはずです。それがもう20曲もあるわけです。もちろん、表現することには終わりはなくて、どんなに力を尽くしても、アーティスト自身の伝えたいことすべてが作品のなかに込められるわけではないでしょう。作った楽曲を補完し、追記するために、ライブというものはあるし、MCは語られていく。
 歌で伝えたい。言葉で伝えたい。そういうせめぎあいがあるなかで、今回のライブは歌に重点が置かれた、ということなのかなと思います。今後のライブでも、そのライブごとに、様々な構成が試されていくのだと思うのですが、今回のライブの歌の繋がりの緊密さからくる最強の心地よさと、多少短くとも濃密に観客の心を揺さぶったMCの熱気は、出色のものだったと記録しておきたいです。

 

・ライブのこと・楽曲編
  冒頭の『Kawaii♡Dragon』から、立て続けにビートの効いた踊れる系の楽曲が披露されたオープニングパートと、終盤の『make a map』『▶はじまりのまち』『Maybe Happy Lucky 人生』が連打されたあたりが特に印象に残りました。冒頭は、結局構成の話になっちゃうのですが、聴くものの身体を自然と動かし、踊らせてくれる見事な流れが作られていてとても気持ちよかったです。響さんはのちのYoutube配信で、数曲歌ってエンジンがかかったというようなことを仰っていましたけども、わたしの耳と身体は最初っから最後まで100点満点の歌だと感じていました。今更ですけど山村響さん、本当に歌がうまい。
  後者のお気に入りパートは、わたしの思い入れの強い(強すぎる)曲を、MVを投影してめちゃくちゃエモーショナルにやってくれてすごく嬉しいのだけど、しかし演出のエモさに寄りかからない見事な演奏・歌唱にびっくりしながら聴いていた、という記憶があります。感情が込められているけれど、声も楽器もあくまで正確に調和がとられた状態を維持していて、感情が先走りしない落ち着きがある、というか。そして聴くものはその堅実な演奏ぶりにかえって感情を掻き立てられるわけです。最高。特に『▶はじまりのまち』『Maybe Happy Lucky 人生』を隙間なくノータイムで続けていくところは、良すぎてガッツポーズしていた気がする。
 エモーショナルさという意味では、中盤、ゲストボーカルとして登場した朝日奈丸佳さんとの『クローゼット・ミュージック』が個人的には最も濃厚でした。もともと『クローゼット・ミュージック』は大好きなんですけど、朝比奈さん登場に至る茶番*2のあいだずっと流れるループのピポピポ音、からのついに楽曲が始まるときのイントロのキーボードの音、のその一瞬だけで多幸感が最高潮に高まったあのときの喜びといったら。
 のちに、ライブ最後の響さんの長く強い気持ちのこもったMCのあとで再登場した際、朝比奈さんは感極まって涙ぐんでいたように見えました。響さんは気づかず進行していたけれど、活動にかける響さんの気持ちを受け取っての反応だったのではないかなあ、と私は思いました。『クローゼット・ミュージック』は、明るく軽やかですけど、とても繊細で重みのある感情をたたえた楽曲です。決して思うようにいかない、という現実への恐れと、それでも自分の好きなことをやるんだ、という強い気持ちが同時に伝わってきます。響さんのMCと朝比奈さんの反応にも、『クローゼット・ミュージック』が表現することの尊さと美しさを感じて、私は胸がいっぱいになったのでした。

・ライブのあとのこと
 ライブ終了後は、出口で響さんが観客を見送ってくれました。見送りといっても一人ひとり面と向かってしっかり会話できるだけの時間があって、いやライブ直後にそんな負担がかかるようなことを…と毎回思うんですけど、まあファンとしてはむちゃくちゃ嬉しいので甘受させていただくのでした。
 そしてこれまたありがたいことに、響さんはYoutube配信へのメールのみならず、SNSなどでのファンの発信をかなり幅広く把握していて、様々なかたちで反応をしてくれています。私もここ数年、何度も反応をいただけていたので、直接お話する機会では匿名の人間ではなく「てぎ」という個人としてお礼を言わねばならん、という覚悟を決めていました。なので、この日のお見送りの際には、名前を名乗ったうえでライブがすばらしかったことをお伝えしました。
 緊張のため言葉遣いが堅苦しくなり、なんだかほとんど仕事の得意先に挨拶しているみたいな感じになってしまったのですが、名前を聞いてすぐにわかっていただけたのは予想以上にめちゃくちゃ嬉しかったです。その嬉しさに見合うような言葉を返せたのかどうか、やり取りの細部はもはや思い出せないのですが、とにかくふわふわした気持ちでわたしはSpaceOddを出ました。
 そして浮足立つとはまさにこのこと!というふらふらした足取りで渋谷駅に向かったわたしは、会場到着時の反省を全く活かすことなく、見事に道に迷ったのでした。

 

 

・2024年2月のバースデーライブのこと
 さてそういうわけで2023年10月のライブはめちゃくちゃすばらしい体験だったわけですが、そんなすばらしいライブがまたあるぞ!来週!という話です。

 日にちは2024/2/11(日・祝)、タイトルは「Birthday Live 2024 ~今夜だけはワタシが一番~」。そう、響さんの誕生日を祝うライブです。

 

eplus.jp

 

 今回の開場はまたも渋谷の「WWW」。SpaceOddよりもさらにキャパシティが大きくなり、今回も響さんはチケットの売れ行きに戦々恐々のご様子です。
 じわじわと山村響ファンは増えつつあり、Youtube配信の視聴者数やチャット欄の反応を見ていると、新たにライブに参加するという人も多くて、日程も三連休の真ん中で遠方からの参加もしやすそうですから、十分埋まるんじゃないかなあとは思うのですが、それでもファンとしては心配ではあります。もし当日お時間があるようでしたら、本記事を読んでいただいているあなたも、ライブへの参加をご検討いただけたら嬉しいです。このざっくりしたレポート記事が、少しでも参加検討の参考になっていればうれしいのですが。
 バンドは22年・23年のライブと同様、安定のキーボード:幡宮航太、ドラム:山﨑浩二朗、ギター:安島龍人のお三方、ゲストはなんと斎賀みつきさん。あの超かっこいい歌声が、小さいライブハウスで生で聴けてしまうのか…とおののいています。そしてもちろん、メインは山村響さん。
 今回もまた間違いなく、素晴らしいライブになると思います。期待しかありません。

 

*2023年のライブは23年12月から有料配信されていたのですが、惜しくも先日公開終了となってしまいました。ごく一部ですが、以下の動画で当日の様子を垣間見ることができます。響さんのYoutubeTwitterをチェックしてもらえれば、他にもいろいろな情報が発信されていますので、ご関心あるかたはぜひぜひ。

 

www.youtube.com

*1:小さいライブハウスは男女別になっていないところもあるんですよね。あれは男性の自分も嫌だし女性も嫌だと思う…。男性用に個室しかなかったのはちょっと不便ですけど、でもそれはそれでプライバシーが保たれていてよかった

*2:ライブ中、偶然電話をかけてきた朝比奈さんに急いで部屋から来てもらう、という趣向なんだけど、おしゃれをして出かける前の不安さとわくわく感を歌う曲のコンセプトにマッチしていて、茶番だけど最高に楽しい茶番だったと思う