こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

2022年に聴いてたいい曲のこと

 2021年は「声優名盤探索の旅」という題目を立てて、年内発表の声優アーティストのアルバムを全部聴くことを目標にやっていたんですけど、2022年はぜんぜん声優アーティストの新作をチェックできませんでした。春ごろから忙しさがずーーーーーーーーーーーっと続いていて、アルバムをまとめて聴く時間も胆力も確保できなかったためです。声優さん以外のアルバムもほとんど聴けなかったです。ちゃんと繰り返し聴いてたフルアルバムは、The 1975とThe Weekendと藤井隆くらいじゃなかろうか。EPやミニアルバムはもうちょい聴けてたかもしれないです。

 そういうわけで今年は楽曲ごとに楽しむ生活だったんですけど、そのぶん、新しいアーティストに手を出す機会は多かったと思う。なおベスト中7曲はTBSラジオ『アフター6ジャンクション』での紹介きっかけでした。アトロクはけっこう逃さず聴いてたようです。

 

 なお今回の記事では2022年内に発表されたものに絞ってますが、2021年以前の近過去、そしてはるか昔の作品にもけっこう触れられた感があります。たぶん一年で一番繰り返し聴いてた曲のひとつもそういうちょっと昔の曲でした。

 


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Bruce Hornsby & the Noisemakers performing "Gonna Be Some Changes Made”

 

 すばらしすぎる。

 いや本当に聴いてたのはアルバム"Halcyon Days"に入ってるピアノのみのライブ版なんですけど、こっちの動画のライブ版もまたすばらしい。

 歌詞、一応何度か読んでみたものの、きちんと理解できていないです。抽象的なイメージ・場面の羅列なのでそのまま受け取ればいいのかなと思うのだけど、全体的にうっすら暴力の気配が漂うのをどうとらえるとよいのか。でもなんかこういううっすら漂う暴力の気配をずっと聴いてることで、生活のなかの乱暴さみたいなのを認識できた気がする。

 ベスト20曲は以下のプレイリストにまとめました。順番もちょっと悩んで配置したので、一応一つの流れを作れているかなと思っています。少なくとも自分で通しで聴いたらなかなかきもちよかった。YoutubeMusicを使っている人ならそのまま聴けるはずです。みんなSpotifyばっか使いやがって、プレイリスト共有されても聴けないんだよな。Spotifyユーザーもたまには不便さを味わうがよい。

 

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 以下、各曲についてダラダラとコメントします。

 

Yet To Come (Hyundai Ver.)/BTS (방탄소년단)
 オリジナルよりドラムが強調されていて、ボーカル・ラップとの絡みが抜群に気持ちよくなっている。
 お楽しみはこれからだ!という、グループ固有の状況に即したメッセージが、普遍的なものにも聴こえる。コロナ危機下で高品質のポップスを大ヒットさせてきたBTSだからこその意味合いも載っかって、開放感が大きい。

 

Birds/RUBYSTAS
 惜しくもコンテンツの展開が終了してしまった『AKROGLAM』から。RUBYSTASは声優・大地葉と城戸香織によるユニット。この曲は世界中で発生しているThe 1975フォロワーのなかで最良の部類に入ると思う。

 

Happiness/The 1975
 そして大量のフォロワーを生じさせつつThe 1975は良質かつフレッシュなポップスを引き続き生み出してくれたのであった。ジャック・アントノフのプロデュースだったらこういうのでしょう、という予測の範囲内であり、どっかで聴いたことがある感じが濃厚なのに新鮮なのがすごい。サマソニのライブも楽しかったです。

 

YOLO!/友希
 先日Twitterで「#声優アーティスト楽曲大賞2022」として10曲挙げた際に、友希こと若井友希の曲を入れ忘れてしまったことを激しく後悔している。年間ベスト候補のプレイリストには入れていたけど、声優アーティストのプレイリストに入れていなかったのだ。つまりそういうくくりを忘れて楽しい曲、ということです。自分で作詞作曲をやる声優アーティストとして、斉藤壮馬早見沙織山村響に続いて大注目されるべき存在なのではないかと思う。

 

ノスタルジックに夏めいて/逢田梨香子
 自分はひとつの季節の経過を一曲におさめたポップスに弱い。2021年はヨルシカ『春泥棒』をずーっと聴いていた。2022年は夏にこの曲をずっと聴いてた。曲展開などはニコ動以降ポップスの定番という感じで、そこに載る逢田梨香子本人による作詞と声がとてもよい。夏だけど微熱にも至らず基本的には冷房が効いているところが好きそうなボーカル。

 

みちくさ/鬼頭明里
 鬼頭明里はけっこうロック風味が強い印象ですがこれはおだやかな低音を打ち出したもの。わたしは鬼頭明里さんのこういう曲が好きです。散歩の様子を鮮やかに想起させるバックの音もすばらしい。

 

シュドゥダン/仮谷せいら
 『水星』のPVのあの人が元気に芸能活動をしていることを知ってちょっと嬉しかった。夢を追う人のつらい日常が活写されつつ、それでも踊ろうぜ!と盛り上げる矜持よ。しんどさが「シュドゥダン」という言葉の面白さで少しだけ打ち消されているところに希望がある。ところで数年ぶりに『水星』のPVを観たんだけど記憶以上に仮谷せいらさんが子供でびっくりした。公開からちょうど10周年でした。

 

ムーンライトアドバイス藤井隆
 傑作『Music Restaurant Royal Host』より。もちろんほかの曲も軒並みよいのだが、昔の『みんなのうた』やアニソンEDぽさのある無国籍感、感想の三味線の驚くべききもちよさ。津軽三味線東野幸治、作詞作曲はケンモチヒデフミ。ぜったい藤井隆にしかできない座組である。

 

光るとき/羊文学
 羊文学はアルバム『our hope』収録の『OOPARTS』もよかった。アニメ『平家物語』のオープニング曲として作品のテーマをど真ん中に据え、ちょっと鼻白みうるくらいにストレートに歌いきった歌詞がすごいと思っている。6分弱の大作的楽曲でありつつ、長さ・重さを感じさせないところも『平家物語』っぽい。

 

Summer/ODD Foot Works
 徹頭徹尾気持ち良い。「走る君は金木犀」という歌い出しを聴くたび、金木犀は秋の風物では?と思っていたのだが、もしかすると、夏に囚われた自分からみれば「走る君」はすでに秋にいる、ということなのやもしれない。め、名曲~!!!

 

考え中/YONA YONA WEEKENDERS
 YONA YONA WEEKENDERS、以前聴いたとき(要は以前アトロクに出てたとき)はかなり自分の好みに近いけどそれゆえにあんまり好きじゃない点が目立ってしまって継続的には聴けないでいた。2022年はこの曲と『夜行性 feat. 蔡忠浩』がすばらしくて完全に好きになったのだった。「考え中」というと停滞しているようだけども、曲の最後で軽やかに実はちゃんと進んでいたことが明らかになる歌詞が大好き。自分もこういうふうに「考え中」でありたいもんです。

 

The Light/lyrical school
 惜しまれつつこれまでの5人での活動をおえたlyrical school。自分は主にソースさんのすばらしいブログ(https://sauce3.hatenablog.com/archive/category/lyrical%20school)経由でその活動を遠くから眺めていました。TLにもファンが多かった(増えていた)印象がある。この曲はちょっとゴリッとした筆致で青春の夜の風景を鮮やかに切り取っている。「耳の後ろ 星のタトゥー」「階段のない歩道橋」といったイメージが聴くたびに脳内を閃いていく。

 

サイクル☆サイクル(feat. 桐谷蝶々)/山村響
 ブログでもTwitterでも秋以降ずっと山村響さんのことばかり喋っていた気がする。辛い仕事の日々も響さんの音楽のおかげでだいぶ楽になったのだった。特にこの曲は、仕事帰りに聴いて身体と心をほぐし、仕事のために硬化した気持ちをリセットするのに最高だった。ヘヴィな仕事を日々背負うことも、そこから一時的に逃げて休むことも、どちらも生活の「サイクル」なのだ。諦念込みで明るく歌うこの曲の姿勢に学べたことは大きい。

 

FAUST/遊佐春菜
 一時的、遊佐春菜のアルバム『Another Story Of Dystopia Romance』を聴きながら出勤していた記憶がある。「ほんとは世界平和なんてどうでもよくて/あなたを支配してめちゃくちゃにしたいだけ」なんて、本当にその通りだと思う。そういうことをそのままに低温で歌ってくれるボーカルが好きだ。

 

KA-GA-YA-KI-RA-RI-RA(feat. 初音ミク)/Aqours
 Aqoursはリリースごとに自分たちのかっこよさの上限を更新してくれる。初音ミクが参加したことで、ときには潰れてしまいがちなAqoursメンバー個々の声が際立っている(初音ミクの声を活かすことを考えた結果、他の声も活かされている)ように思う。

 

Water/illiomote
 illiomote『side_effects+.』も長く聴いている。じっくりも聴けるし、読書しながらでも聴けるのがよい。アルバムのどの曲を年間ベストに入れてもいいかなとも思っているけど、たぶん一番繰り返したのは一曲目のこれ。幅広い曲がおさめられたアルバムだが、ギターポップ、トランス、アコースティック、いずれの要素にも自分が十代だった1990年代の洋楽の雰囲気を感じられた。若いミュージシャンの作品だけど、これを聴くと自分が年をとってしまったことも痛烈に感じてしまうのだった。

 

夢日記/Sano ibuki
 前のアルバムまでは、いい曲も多いけど、まあ、Bump of Chickenが好きなのだろうなあ…がんばれ…という若干ナメた姿勢で聴いていた。2022年のアルバム『ZERO』、特にこの曲には不意打ちされた。BumpなりそのフォロワーであろうRADWIMPSより新しいことがあるか?と問われるとちょっと困るのだけど、特定の誰かによりかからない感じがかれらとは異なるのではないか…とは思っている。安らげる誰かの懐を永遠に探しているBump・RADに比べると、Sano Ibukiには居場所を作る側の目線があるように思われる。

 

箱庭の幸福/田所あずさ
 年のはじめの頃にリリースされて「もうこの一年はこの一曲で終わったな」と思った。恐るべき満足感がある。

 

サラブレッド/BBHF
 BBHFの『13』は傑作だった。わたしは勝手にBBHFは「有害な男らしさ」についてずっと歌っているバンドだと思っている。『13』におさめられている『死神』と『どうなるのかな』はまさにそうで、ちょっと危ないところもあるのだけれど踏みとどまって有害な男らしさをわずかでも無効化するところで終わっている。それらの成果を知ったうえで聴く『サラブレッド』は、火がついてまったく余裕のない身であっても、何かを求めて疾走することを讃える歌に聴こえる。

 

LEVEL/やなぎなぎ・THE SIXTH LIE
 ここ数年、ひところに比べると男女ツインボーカルのポップスが増えてきたと思う。嬉しい。やなぎなぎ・THE SIXTH LIE両者のバネ感の高い歌声があわさって、サビの伸びやかさがすごいことになっている。でもちょっと切ないのが好き。テンションあげたいときに聴いています。

 

リトル・シークレット(feat. TAKU INOUE)/雁矢よしの(CV.高橋李依
 高橋李依さんはすごいなあと聴くたびに思う。歌い方のうまさもそうなのだけど、他人に作られたメロディのなかで自分の声をキャラクターとして常にずっとかわいく響かせている。といって職人芸的なところにとどまっていないと思う。「Princess Letter(s)! フロムアイドル」という、二次元の少女から直筆の手紙が届いてしまうという恐るべきコンテンツ発の楽曲であり、自分が10代だったら確実にはまっていたであろうと冷や汗をかく。今のわたしはこのすさまじくすばらしい曲を聴くだけで満足なのだった。

 

BTS (방탄소년단) 'Yet To Come (The Most Beautiful Moment)' @ ‘Proof’ Live 20220613/BTS
 というわけで一曲めに戻る。実際にはこの曲を聴いたのはこのライブ演奏版のほうが先です。心の底から楽しそうなアンダーソン・パークの顔とドラムが観るものすべてを幸せにしてくれる。後半、その場にいる全員が声を重ねていくさまの幸福感といったら。ラストがさらりと終わってしまい寂しさが残るところ含めて完璧なMVである。


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 というわけで"Yet to Come"の別バージョン含めて21曲…と思ったら22曲ありました。ベスト25にしてもよかったのかもしれない。
 挙げられなかったけど散々聴いてた曲をいくつか。

 

・白鲨JAWS『Dive Back In Time』 『時光代理人』主題歌。オリジナルを探してたらbilibiliのライブ版があったのでそればっか聴いてた。
・Bialystocks『光のあと』 専業ミュージシャンじゃないってなんなんだよ、というような時代はもう完全に終わったのであろう。すぐれたアーティストはなんでもできる。
・ONUKA『ZENIT』 ロシアによるウクライナ侵略が一刻も早く終わってほしい。
・水槽『事後叙景』 今年聴いてた曲で一番歌詞の快楽度が高かったのだが2021年発表だった。
EMPIRE『I don't cry anymore [Seiho Remix]』 これも2021年の曲。たぶん一番再生数が多かったと思う。大好き。
・Kan Sano『Tokyo State of Mind』 あまりに良すぎるため、これ聴きながら東京を歩いていると「いやおまえそれが似合うほど東京の人間じゃないだろ」という自意識に邪魔をされる。
・にしな『ケダモノのフレンズ』 『けものフレンズ』&『かいじゅうたちのいるところ』オマージュ。特に後者がすごく苦手な人間なので、ちょっとずらしたこういう曲が逆に好きになってしまうのだった。
・Clara Mae『Not Sad Anymore』 
・The Chainsmokers『I Love U』 謎の佐倉綾音ボイス引用、わけわからなくてずっと聴いてたら「この謎な感じが、人の愛という感じがするな…」という味わいになってまいりました。アルバム『So Far So Good』はlofi remixes版が大好き。
・AmamiyaMaako『それぞれのストーリーを』 苫米地英人が関わっているらしく(配信番組のアシスタントをながくやっているっぽい)あの手の人がたいへん苦手な人間なのでちょっと不安な気持ちになるのだが曲はすごくよい。
・Barry Can’t Swim ”Sonder" ジャケットが恐ろしいのでベストには挙げませんでした。
・Room97 『衝動(feat. 棗いつき)』 歌詞のいたたまれなさが好き。今年の曲だったら確実にベスト入りしていた。
・ザ・リーサルウェポンズ『シューティングスターレディオ(feat. 宇多丸、スーパー・ササダンゴ・マシーン)』 リリース時に宇多丸さんが言っていたように、絶対ダサいのに良い、という系統の80年代リバイバルの最適解の一つだと思う。
・Natalie MacMaster "Blue Bonnets Over The Border" 佐々木譲昭南島に蘭ありや』作中で印象的なトラディショナルソング。アルバムがよかった。
・Commoders "Nightshift" FMヨコハマでKARL南澤さんが流していて知った。今年知った過去曲のなかで一番好き。

 

 正月であることに甘えてこんなにだらだらと書いてしまった。自分でも驚いている。まあこれは2022年のお焚き上げであり、2023年を始めるために必要な神事なのでやむを得ない。今年もよい音楽をよい音楽であると判断できる耳と心を保っていられますように。

 

(ベスト22曲プレイリスト再掲)

Yet To Come (Hyundai Ver.)/BTS (방탄소년단)
Birds/RUBYSTAS
Happiness/The 1975
YOLO!/友希
ノスタルジックに夏めいて/逢田梨香子
みちくさ/鬼頭明里
シュドゥダン/仮谷せいら
ムーンライトアドバイス藤井隆
光るとき/羊文学
Summer/ODD Foot Works
考え中/YONA YONA WEEKENDERS
The Light/lyrical school
サイクル☆サイクル(feat. 桐谷蝶々)/山村響
FAUST/遊佐春菜
KA-GA-YA-KI-RA-RI-RA(feat. 初音ミク)/Aqours
Water/illiomote
夢日記/Sano ibuki
箱庭の幸福/田所あずさ
サラブレッド/BBHF
LEVEL/やなぎなぎ
リトル・シークレット(feat. TAKU INOUE)/雁矢よしの(CV.高橋李依
BTS (방탄소년단) 'Yet To Come (The Most Beautiful Moment)' @ ‘Proof’ Live 20220613/BTS