こづかい三万円の日々

30代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

『雷鳴』

雷鳴 (福武文庫)

雷鳴 (福武文庫)

 『暗黒の河』に続く長編第11作目。翻訳は『凶弾』の次、1995年に刊行されている。

あらすじ:
 CIAで働くジョン・ラングは、ある朝路上で発生した銃撃事件で相棒を失う。相棒がCIA内部の陰謀を追っていたことを知ったラングは、彼の養女で元ベトナム難民の娘ファングとともに事件の背景を追う。

 これまた『コンドル』的な物語で、『暗黒の河』よりなお一層、悲壮と混迷の度合いを増している。一人真相を求めるラングは孤独で、作品全体に陰鬱な空気がたちこめている。陰謀の背景には、東西の二極対立構造からテロの時代へと切り替わっていく国際諜報の時代性があり、90年代中盤の問題意識として的確だ。
 ただし娯楽小説として考えると、『暗黒の河』には負けてしまうと言わざるを得ない。各地で転戦するジャドの活躍や、数限られた仲間のそれぞれの戦いを描き多彩さのあった前作に比べると、こちらのラングの物語はあまりに孤独すぎ、短調なのだ。
 しかし、読んでおいたほうがいい理由はある。実はこのラング、『狂犬は眠らない』にも登場するのだ。年齢に少々誤差があるように思えるため、作者の中では別人物という設定なのかもしれない。しかし、『雷鳴』のラングが背負うことになった重荷は確実に、『狂犬は眠らない』のラングへと引き継がれている。