こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

犯人に告ぐ

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

 四人の子どもが相次いで犠牲になりながら、まったく手がかりのない連続殺人事件の捜査を進展させるため、神奈川県警は大胆な策に打って出る。かつて誘拐事件の捜査に失敗し煮え湯を飲まされた男をスポークスマンに、テレビを用いて犯人に接触を図ろうというのだ――。

 というツカミの強さが抜群で、文春ミステリーベストテン第一位を獲り、07年には映画化もされた話題作。
 これだけ売れて支持もされているのも当然で、上記のあらすじをみた読者が期待するポイントが誠実に達成されている(過去のある主人公の葛藤と救済、緻密なディティールの書き込み、リアリティとケレン味)。
 文庫版下巻の裏表紙には、「『普段ミステリーや警察小説を読まない人をも虜にする』と絶賛された世紀の快作」とあって、それもそうだろうなあ、これだけ破綻のない優しいミステリはなかなか珍しそうだもの、と思う。

 ただ、個人的には長く記憶できない作品だと思う。映画を観たいとは思うけれど。

 さらに言ってしまうと、時折、積極的に批判したくなる部分もあった。
 たとえば、物語の後半で重要な役目を演じるある脇役の描き方が許せない。リアルといえばリアルだし、小説としては巧いとは思うのだが……。