こづかい三万円の日々

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司馬遼太郎『オホーツク街道 街道をゆく38』

オホーツク街道―街道をゆく〈38〉 (朝日文芸文庫)

オホーツク街道―街道をゆく〈38〉 (朝日文芸文庫)

 北海道のなかでも特に「北方」を感じさせる、島の東北部分オホーツクを司馬のおじいちゃんが歩いて妄想する旅行記。
 土地土地の専門家と会って様々な話題を拾いつつ、そこに司馬おじいちゃんの妄想が加わる、というのが全体のあらすじ。妄想とはいえそこは司馬遼太郎なので、威厳があります。
 個人的には、1939年、北海道北端ちかくに位置する猿払村沿岸でソ連の囚人船が難破し、七百人以上の犠牲者が出たという「インディギルカ号」事件が印象に残った。最新の研究によれば、当初漁業労働者とみられていた同号の乗船者の多くは、オホーツク海岸の金鉱で強制労働に従事させられた囚人だったらしい。当時はスターリン時代。恐ろしく、悲しい話ではあるが、冒険小説的なシチュエーションでもある。――難破にまぎれて脱走する、日系ロシア人。ロシア革命時に暗躍した日本軍秘密諜報部隊の一員であったかれは、かつて自分を裏切り、今は日本政府中央に君臨する男への復讐を果たすために東京へ向かう! 日本軍、ソ連警察との三つ巴の逃走劇! 血に染まる原野! そして暗躍する英米諜報機関の思惑とは!? ――的な。それなんて佐々木譲