こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

悪者はかならず捕まる『インサイド・マン』

 『セントアンナの奇跡』の予習として鑑賞。恥ずかしながらスパイク・リー作品はこれが初めてです。社会派作品が中心の彼のキャリアからは異質といわれるこのタイトルを最初に観るのはどうかと思っていたら、意外と『セントアンナの奇跡』と通じるものがありそう。銀行強盗を中心にして、銀行の外には人々がぶつかりあうニューヨークがあり、大金の裏にはその金を動かしてきた人間の歴史がある、ということを感じさせる、世界の広がりを内包した見ごたえのある映画だった。CIAだ陰謀だと騒ぎつつ、実際はチャイルディッシュなトラボルタが大暴れするだけの『ソードフィッシュ』とはちがいます。いやあれもぼくは好きなんですけどね*1
 銀行強盗の顛末については、ぼくは膝を打つことばかりだったけれども、んなあほな、と笑っちゃう人もいるかもしれない。でも全体のテンションがそもそも軽妙なので、ユルさをわかったうえで楽しめば問題なし。終盤、仕事を終えたあとのクライヴ・オーウェンの姿がじつに格好良くかつマヌケで、『ワールド・オブ・トゥモロー』や『ザ・バンク』でおなじみの、マジメさとマヌケさの間を自由に行き来する彼の魅力がみごとに発揮されていたとおもう。
 ユルさといえば、中盤、たいへんな危機を目の当たりにして現場をかけていくデンゼル・ワシントンの上半身を正面からとらえたカットが、たいへんマヌケで笑った。かれは数十メートルの距離を走って移動しているはずなのだが、身体はまったく上下せず、立ったまま台車に載せられたかのようなのだ。セグウェイにでも乗ってんのかあんた。
 非常に気になったので何度か繰り返し再生し、「デンゼル・ワシントン インサイド・マン 台車」でぐぐると、100件近くヒット、Yahoo!知恵袋でも取り上げられていたのだった。やっぱり気になるよなあ。このドリーショットはリーの十八番だそうで、ほかの作品でも頻繁に観られるらしい*2。俳優も一緒に乗せちゃうのはどうかと思うが、基本的にぼくはドリーショットが大好物なので、一挙にスパイク・リーへの親近感が強まったのだった。

*1:あの映画でトラボルタが演説していた案件がようやくこの『インサイド・マン』で叶った感あり。よかったねトラボルタ。

*2:http://d.hatena.ne.jp/su1/20061015/p1