こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ヒットしてるの?大丈夫?『宇宙ショーへようこそ』

 公開二日目、6月27日に札幌ディノスシネマズにて鑑賞。自分の予想とちがってあまりに人が少なかったので、後半は怒りに身を任せて書きました。

 この映画、アニメが好きならぜったい観といたほうがいい。
 異常な描きこみがつるべ打ちされる宇宙世界のヴィジュアル。表情、アクション、そして萌え、どの点をとってもハイクオリティなキャラクターの作画。そういうアニメーションが二時間以上えんえん続くなんて、自分の目が信じられないくらいだけど、まあ続いてしまうのだから仕方ない。ふだん作画崩壊うんぬん言っている人たち、こういう超すげえ作画を見逃す手はないでしょう!
 SF度もなかなかにいい具合で、ドラえもんの大長編と同じくらいの感じです。『宇宙小戦争』とか『宇宙開拓史』とか『鉄人兵団』とかあのライン。のび太的メガネボンクラキャラの康二くん(愛読書のラインナップがまるで小学生のころのおれのよう)と、宇宙の謎を探してまわるボンクラ宇宙人の娘・インクたんが、宇宙の不思議に胸ときめかせお互いにもちょっと胸ときめかせちゃうあたりも極めて正しいSFジュブナイルぶり。康二くんの「第三種接近遭遇って…いいなぁ…」は今年のベストセリフと言えましょう。
 もちろん、日頃アニメをたくさん観ているであろう子供世代にもぜひ観て欲しい。繰り返しになるけど、小学生男子にこの映画を見せれば、インクたんにドキドキして「おれ、宇宙飛行士になる!」とか言い出し、日頃の勉強に邁進する可能性は極めて高いと思います。下手な子育て本とか読んでいる暇があるなら映画館へ連れて行け親の人。

 で、アニメ好き、子供、その他条件を絞ってから長所をつらつら書き連ねているのは、正直なところ、この映画が万人にすすめたくなるような大傑作ではないから。
 映画としてはいまいち、といった温度の低い評価がネット上で散見されるのは非常によくわかる。
 アニメファン以外から支持されるピクサー作品や細田守作品のような、「映画」としての出来の良さはここにはない。シナリオが欲張り過ぎで、その欠点を超えてあまりあるほどのプリミティブで普遍的な感動はもたらされない。
 そこはとりあえず反論しません。しませんよ。その手の議論で、この作品の価値を映画好きに認めさせるための突破口はどこかにあるような気もするけれど、でもいまはしません。だからすごくいい映画が観たいと思っている人とかはとりあえず「午前10時の映画祭」にでも足を運んでおくれ。

 でも。
 でもですよ。
 公開二日目の日曜日で、観客が20人もいないってどういうことだよ札幌の人。
 シアターキノならともかく、札幌ディノスシネマズ7階の1番シアター、たぶんもっとも大きいスクリーンですよ。しばらく前に『Fate』を観たときは夜9時の回でも同じくらい人がいたよ!
 映画を観るまえ、ぼくは近隣のアニメ・マンガ専門店をハシゴしたんだけど、どの店もたいへんな人出だった。とらのあなアニメイトメロンブックスも盛況だった。次から次にお客さんが詰めかけていたよ。でもそこから歩いて五分もかからねえ映画館でかかってるアニメを20人以下しか観てないってどういうことだ。何やってんだよ札幌のアニメ好きの人。
 アニメ好き以外にはわかりにくい、でもアニメが好きなら絶対心にガツンとくる映画がいま劇場で公開されているのに、アニメ好きなおまえらが劇場に行かんでどうする!

 ……映画の中身に反して、ひどくおっさんくさい説教になってしまったことをお詫びしておきたい。
 でも、この状況は絶対おかしいと思うんだよ。これじゃ、『マイマイ新子と千年の魔法』のまんま繰り返しじゃないかよ……。
 ツイッターなどの盛り上がりを見ていると、東京や大阪ではまた状況が違うようなんだけど、もしそうなら、今度は「札幌のアニメファンは鈍感」ってことにもなりかねない。劇場へ行こう、札幌のアニメ好きの人たち。二時間ちょい、楽しい体験ができることを、おれが保証する。