こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

ショーン・コネリーのジレンマ『オスロ国際空港 ダブル・ハイジャック』

 オスロ駐在の英国大使が、過激派によって自宅に監禁される事件が発生する。テロリストに屈することをよしとしない正義漢タルビック大佐(ショーン・コネリー)が現場の指揮を取るなか、ロンドン-オスロ便の民間機が乗っ取られるという新たな事件が起こる..。1974年、キャスパー・リード監督。

 俺スパイ感探求の旅3本目。
 上映時間89分なうえに次々に緊迫した局面が訪れる、タイトなつくりのサスペンス。スカンジナビアでイギリスの過激派たちが事件を起こし、現地の軍と警察が対応するという構図もおもしろい。同じ構造で現代にリメイクしたらいいんじゃないかと思った。『キングダム』ふうに。
 というのも、諸条件が示す作品の外観は「タイトなサスペンス」なのに、ときおり退屈さを感じてしまったのだよね..。現代のサスペンスに慣れてしまったわたくしの耄碌ぶりを示しているだけかもしれませんが。中盤のセスナ追跡劇とか、あの雄大な景色をバックにジェリー・ゴールドスミスの音楽を流されちゃうと、こう、頭がぼんやりとね..。


 むしろ今観てはっとするのは、作劇上・演出上のスリルよりも、タルビック大佐がキプロス平和維持軍に参加していたこと*1や、イギリス大使が大戦中にユーゴスラビアで抵抗運動を支援していたことなどがさらっと言及されるあたり。こういう力の入っていない言及は、当時でしかできない芸当でしょう。
 純粋にたのしいというわけではないけれど、自分の明るくない歴史的背景をふいに示されると、なにか独特の興奮を味わってしまうのですね。なんなんだろう、この感触。凄惨な紛争をネタとして味わう己の強欲ぶりにいまさらながら怖気が立つわけではありますが..。スパイ映画好き・国際謀略好きの悪いところです。
 そういう不謹慎さを承知で言うと、俺スパイ感探求の身としては、主人公のショーン・コネリーと敵対して裏で暗躍する人たちの仕事ぶりにも少々わくわくしちゃうのでした。


 ショーン・コネリー自身も、テロリストと何者かの陰謀の間で暗闘してはいるんだけど、そこはやはりショーン・コネリーなので、苦闘、という雰囲気がないんだよなー。彼が現場に出張っちゃえば解決してしまうという、万能キャラになってしまっている。
 ショーン・コネリーの反英国の雰囲気を生かしたキャスティング*2なのに、そのボンド的ヒーロー性にも頼ってしまっているものだから、どっちつかずの魅力が薄い人物になるのも当然だろう。もったいない。

*1:キプロスの平和維持軍って、1964年に始まって現代でも続いているんですね。ほとんど半世紀じゃないか..。

*2:これが大成功しているのが『ザ・ロック』なのだと思います。大好き。