こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

『カクテル』

 『ハスラー2』と同様、こちらも、凄腕の先達に若きトムが弟子入りするお話。1988年の『カクテル』です。監督はロジャー・ドナルドソン

 兵役を終え、ニューヨークにやってきたブライアン(トム・クルーズ)。金融業界での成功を夢見ていましたが就職活動がうまくいかず、学校に通いながら下町でバーテンダーのバイトをはじめます。ベテランバーテンダーのダグ(ブライアン・ブラウン)とともに、店の人気者となっていくブライアン。やがて大手クラブに引き抜かれるものの、ふたりは仲違いしてしまい…。

 この映画、ぼくはたいへん楽しく観、かつしみじみ泣かされたのですが、なんと当時ゴールデンラズベリー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされているそうです。びっくり。超びっくり。
 そりゃ同じトムの同系統作品である『ハスラー2』や『卒業白書』に比べれば見劣りはしますが、派手なバーテンディング*1の楽しさ、ブライアンとダグの愛憎入り混じった関係とその苦い結末、アメリカン・ドリームを夢見ながら、こじんまりとしたスウィートな結末を選ぶトム・クルーズとその彼女エリザベス・シューの魅力の輝き…と美点を挙げたらきりがない映画です。
 特に、師匠ダグとブライアンの間に流れるブロマンス的空気は、今ならばより一層観客に歓迎されそう。ブライアン・ブラウンの色気がすごいです。
 世評に騙されず、ぜひ一度ご覧頂きたいトム・クルーズの隠れた名作なのです。

 余談ですけど、本作のバーテンシーンで、トム・クルーズはたびたびカウンターに土足で登ってスピーチ(ポエトリー・リーディングのボンクラ版みたいな)をおこないます。もしかしてこれって、後年のオプラ・ウィンフリー・ショー事件の元ネタなんじゃないかなあ。まああのソファーの上のジャンプが非常に頭悪いことは確かですけど、それすら自分大好きゆえの引用だったのでは…という気がしなくはない。

*1:カクテルを作るパフォーマンスをこう言うのだそうです。