こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

番外編『ハスラー』


 ま、そんな『トップガン』の退屈さも、同じ1986年に『ハスラー2』にも出てるんだから完全帳消しかもしれませんね。その『ハスラー2』の前作が、1961年の『ハスラー』であります。監督はロバート・ロッセン
 ぼくはいずれも未見だったので、まずは『ハスラー』から観ました。もしかしたらトム・クルーズ目当てで『ハスラー2』から観る人も多いかもしれませんけど、絶対、こちらの一作目を観てからのほうがいいです。

 『ハスラー』の主人公はポール・ニューマン演じる青年エディ。彼は、詐欺めいたやり口と抜群の才を武器に、街のビリヤードホールで死闘を繰り広げます。『暴力脱獄』よりもややゲス野郎、でもスマイルと身のこなしが死ぬほど魅力的なポール・ニューマンがすばらしかったです。
 物語全体、あるいは各エピソードの語り口は初めはゆっくり穏やか。やがて「疾風のエディ」と呼ばれる主人公のプレイスタイルのように、爆発的に加速し、決定的瞬間や事実を省略しつつ語り終えられます。この、134分という上映時間を感じさせない語りの速度が実にかっこいい。
 エディとともに心に大きな欠損を抱えながらも、誇り高く生きようとするパイパー・ローリー演じるヒロインのサラ、沈着冷静なトッププレイヤー「ミネソタ・ファッツ」(ジャッキー・グリーソン)ら脇役も強く印象に残りました。
 勝負はなにをもって決するのか、金か、誇りか、それとも生来のものなのか…。一歩間違えれば理想主義的うすっぺらさに堕するところ、ひたすらに泥臭く、熱く、切実に語り切るキャストとスタッフにほれぼれする映画でした。