話題のアニメ『けいおん』を観始めた。軽音楽部に所属する女子高生四人の日常とバンド生活を描く非常にかわいらしい作品である。澪には心の底から萌えた。第四話以前を見逃したことを後悔している。京都アニメーションと作画監督の堀口悠紀子は『らき☆すた』に引き続き、なんとすばらしい映像を作り出したことかと感嘆するばかりである。とても良いアニメだとおもう。
が、いまのところ、かわいい女子がわいわいやっているさまを外部から鑑賞するための、単純消費用萌えアニメに留まっていて、それ以上のものではないよなあ、とも思う。
だいたい、萌えるガールズバンドを描いたものなら、もうとっくに大傑作があるじゃないのよ! というわけで、今をさかのぼること2001年、ハリウッド製の猫耳ガールズバンド映画『プッシーキャッツ』を紹介したい。
ジョジー率いる三人組バンド・プッシーキャッツは、ひょんなことから大レコード会社と契約して一躍スターダムへ。しかしその裏には、音楽業界にはびこる陰謀が隠されていて...というおはなし。
写真真ん中、バンドリーダー・ジョジーを演じたのは、『シーズ・オール・ザット』で全米男子の心をわしづかみにし、当時人気絶頂にあったレイチェル・リー・クック*1。キュートなフロントマンとして、ギター・ボーカルを担当する。『けいおん』における、唯にあたる主人公キャラ。
写真右手、ベースを担当するしっかりものは、ロザリオ・ドーソン演じるヴァレリー。バンドをめぐる熱狂のなかでも冷静沈着、浮ついてしまうジョジーを戒めるけれども、でもやっぱり彼女のことが大好き!というツンデレ。まさに澪。
で、ドラム担当のメロディは、タラ・リードが演じます。青春映画の金字塔『アメリカン・パイ』シリーズでは、男子心を見透かすしたたかな役だったけど、こちらでは超のつく天然キャラ。見事なブロンドにたれ目という典型的アメリカ美女な外観を逆手にとって、頭がちょっと緩んだキャラを楽しそうに演じている。演奏シーンのスティックさばきはお見事! 紬+律のポジションです。
では早速彼女らのPVを観ていただこう。プロデュースはベビーフェイス、”Three Small Words!”
どうですかどうですか。マジで猫耳つけててびっくりでしょ。これはハリウッドのひとたちが日本文化を間違って取り入れた...わけでは決してなく、この映画が1960年代から続く同名のコミック&アニメを原作にしているから。
The Best of Josie and the Pussycats (Best of Josie & the Pussycats)
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プッシーキャッツを雇うレコード会社は、若者の人気を集めるミュージシャンの楽曲に購買意欲を植え付けるサブリミナルを仕込み、消費を煽る陰謀を働いている。プッシーキャッツの前にスターに祭り上げられていた男性グループ「デジュー」*2は彼らの意向にかなわなくなったため、飛行機事故を装って暗殺されていた...など、荒唐無稽ながらも実際にありそうな黒いネタが、映画のはしばしに登場する。
さらに、そうした黒さを扱ったうえで、映画はけっきょく「音楽最高! かわいい女子も最強! 愛とか萌えとか大事!」という地点に着地する。その萌え原理に忠実なテイストはまさに、『けいおん』OP『Cagayake!GIRLS』の多幸感とぴったり重なるのだ。
答案真っ白でも 未来がバラ色ならよくね? / Chatting Now ガチでカシマシ Never Ending Girls Talk
集まるだけで笑えるなんて 歌うだけで幸せなんて / かなり地球に優しいエコじゃん
『Cagayake!GIRLS』
萌えだけを追求するのもよかろう。でも、いったんその外に出て相対化してから萌えるほうが、断然味のある萌えになると思うのだ。『らき☆すた』の場合、さんざん萌え文化を相対化していたから面白かったけれど、『けいおん』はそこまで到達できるだろうか。
今後を楽しみにしつつ、今日はプッシーキャッツのこの曲でお別れ。90年代〜ゼロ年代アメリカ青春映画サントラ界における重要人物、ファウンテン・オブ・ウェインのアダム・シュレジンジャーによる”Pretend to be nice”をお聴きください!
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*2015/07/12追記:リンク切れしていたyoutubeのURLを直しました。それにしても、『けいおん!』から6年、このあと数々の音楽アニメが作られることになろうとは…。その最新形が『SHOW BY ROCK』でありまして、そちらについても書いているのでぜひお読みください。:「ロックってこういうことかもしれない/『SHOW BY ROCK』」http://d.hatena.ne.jp/tegi/20150712/1436711244