こづかい三万円の日々

40代の男がアニメ、映画、音楽などについて書いています。Twitter:@tegit

世界はきみの夢/『ガラスの花と壊す世界』

ぼくのフィクションの分類棚には「長い夢みたいなやつ」という区分がある。 長く、濃密で、鮮明な夢。物事が断片的にしか語られない。時間も場所も跳ぶ。しかしそれらは継ぎ目なしに繋がっていて、一瞬一瞬の情報量は過密で、覚醒してしばらくはそれらがすべ…

ぼくは「ガルパンはいいぞ」とは言わない/『劇場版ガールズ&パンツァー』

ガールズ&パンツァー 劇場本予告 『劇場版ガールズ&パンツァー』を観てきました。 年末年始にテレビ版12話+OVAを観て予習を済ませ、立川シネマツーの極上爆音で鑑賞。 テレビシリーズは初回放送時に一話だけ観ていました。戦車道という大嘘を、空母上の学…

2015年の映画ベスト10

昨年は合計56回映画館で映画を観ました。うち9回は同じ映画の再見*1。また現時点で『スターウォーズ フォースの覚醒』『劇場版ガールズ&パンツァー』『クリード』と多くの人が年間ベストワンに選びそうなものを観ていない状況です。 母数をもっと増やすべき…

終わりを受け止めるということ/「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」Character Songs LIVE “Blue Field”〜Finale〜ライブレポート

2015年12月19日、会場はよこすか芸術劇場。 ライブの帰り道って、みんな何聴いて帰ってるんでしょうか。ぼくはたいてい、全然ライブに関係ない曲しか聴けないです。ライブを思い出しちゃうから。ライブ音源が手元にない限り、そのライブで歌われた曲のCD音源…

立川シネマ・ツー、ナメててすまんかった/『May'n THE MOVIE Phonic Nation 3D』

立川シネマ・ツーで11月14日・15日と限定再上映している『May'n THE MOVIE Phonic Nation 3D』を観てきました。公開時に観逃してたし、立川の音響なら楽しそうだなー、というくらい軽い気持ちで行ったんですけど、行ってよかった観てよかった。すばらしかっ…

「お前はわたしを殺しに来たのか」/『PAN』

ここ数日個人的にとても疲れているので、ほかの人にとってどうだかは知らないけれど、『PAN』がすさまじくこたえたので書いておく。 主人公ピーターが生きるのは第二次世界大戦中のロンドンである。ドイツ空軍の落とす爆弾が街を焼く時代。意地悪な大人たち…

Cadenzaが抱える最大の欠落について/『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- Cadenza』セカンドレビュー

みなさん、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- Cadenza』*1はご覧になりましたか。公開開始から二週も経っているのにぼくはまだ観れていません。先行上映で二回観たけどやっぱりちゃんとお金を払ったふつうの映画館で観たい――いや、先行上映会だってお金…

祝公開!『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- Cadenza』ファーストレビュー

映画/映像の歴史には、技術と題材が幸福な出会いをするタイミングがいくつもある。ここ最近でいえば、『ターミネーター2』や『ジュラシック・パーク』、『スパイダーマン』、『ロード・オブ・ザ・リング』といったあたりでしょうか。『蒼き鋼のアルペジオ…

物語に満たされて生きていくということ

昨日、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズの劇場版二作品一挙上映会に行ってきました。新作『Cadenza』を一般客が映画館で鑑賞できる初めての機会とあって、バルト9のスクリーンは当然満員。上映終了後には大きな拍手が響きました。 上映後に…

厄介さと生きていく/Trident 2nd Live "Blue Destiny"レポート(という名前のごく私的な覚書)

Tridentの2nd Live、「Blue Destiny」の二日目(9月21日)に行ってきました。会場は品川ステラボール。 帰途途中のカレー屋でカレーとビールをいただきながら勢いで書いています。だからまともなレビュー/レポートじゃない。その点はご了承ください。 声優…

映画公開&Tridentライブ記念『蒼き鋼のアルペジオ』キャラソン総まくりレビュー

『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』*1の劇場版第二弾*2がいよいよ公開されます。めでたい。 同作発の声優ユニットTridentのセカンドライブも開催されます。めでたい! Tridentの2ndミニアルバム、そしてキャラソンのアルバムも発売されました。めでた…

アキバは「あの街」に似ているのか? 凛ちゃんからみた世界を考えてみる

だいぶ久々の更新になってしまいました。 今日は、7月末くらいから考えていた、凛についての記事です。 映画『ラブライブ!』において、テレビシリーズからの成長をもっとも感じさせるのは、一年生の星空凛ちゃんです。特に映画前半では、迷いはじめる穂乃果…

走れ、跳べ、理想を求めて/『ラブライブ!』と『マッドマックス』

『ラブライブ! Schol Idol Movie』をTOHOシネマズ日本橋で観てきました。六回目。*1 この一週間ほど、『マッドマックス4』と『ラブライブ!』の雑な比較に対して激怒し、並べて語るならまずはこのくらい考えておけよ、そして考えたらあんな雑なこと言えな…

『マッドマックス』と『ラブライブ!』を並べて語るならまずこのくらいは考えておけよというご提案

♪♪♪ <2015/08/02追記> 『ラブライブ!』と『マッドマックス』について、自分の思うところをまとめた文章を書きましたので、こちらも読んでいただけると嬉しいです。すごく。「走れ、跳べ、理想を求めて/『ラブライブ!』と『マッドマックス』」 http://d.…

ロックってこういうことかもしれない/『SHOW BY ROCK』

『SHOW BY ROCK!』を観終わりました。 ワンシーズンの最終話で、きちんと異世界から帰ってくる話にするとは思っていなかったので(勝手に「二期やって二期最後に帰ってくる」あるいは「一期の最後にみんなで現実世界にやってくる」かなと思っていた)、驚く…

「見る人」東條希のこと 『ラブライブ!』文その5

東條希は「見る人」です。 彼女は子供のころから、人ならざるもの、八百万の神々や不思議な存在たちを見てしまっていた。それはあまりに自然なことでした*1。 ラブライブ! School idol diary ~東條希~作者: 公野櫻子,室田雄平,音乃夏,清瀬赤目出版社/メーカ…

あなたがたには見えないというけれど

四回目の感想を書く前に、最近話題の論争について触れておきます。 個人的に、「『ラブライブ!』映画はシャマラン映画と同じフォルダに入れておいたほうがいいかもしれない」*1という気がしてきていたので、むしろ先週くらいまでの絶賛ばかりの雰囲気にびっ…

楽しさの先の先/穂乃果中心に観る『ラブライブ! The School Idol Movie』

(穂乃果といえばこの曲かな、というわけで。) 三回目を観てきたので、三回目の記事を書きました。ネタバレしてます。 今回の映画、もちろんμ'sの映画ではあるんですけど、穂乃果の子供時代に始まり、エンディングロールの最後が穂乃果のTシャツで終わる以…

永遠に終わらないジャンプ/永遠に終わらない映画『ラブライブ! School Idol Movie』

前回(http://d.hatena.ne.jp/tegi/20150613)はネタバレなしで書いたので、今回はネタバレ全開、踏み込んで書きます。あと、イーサン・ホーク主演の某SF映画のネタバレも含んでいます。洋画好きも注意。 『ラブライブ! School Idol Movie』は、とても誠実…

いつだって飛べるよ『ラブライブ! School Idol Movie』

『ラブライブ! School Idol Movie』を観ました。 「こんな映画だったらいいなあ」と思っていた期待を、ぼくの想像しなかったやりかたですべて叶えてくれたという印象。 具体的なことを話すのはまだ早いタイミングなので、物語とアイドルと理想の話、みたい…

「不仲」だからこその輝き/Trident 1st Solo Live レポート

3月22日、舞浜アンフィシアターで行われたTridentのファーストソロライブ「Blue Snow」を観てきました。 TridentというのはTVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』に出演する、渕上舞さん・沼倉愛美さん・山村響さんという声優三人によるユニットで…

『ジョーカー・ゲーム』はなぜ明るいスパイ映画なのか

『ジョーカー・ゲーム』、期待どおりの楽しい映画でした。 「傑作」という言葉を使う映画ではないけれど、すごく「楽しい」スパイ映画。 入江悠監督がさまざまなインタビューで言及しているとおり、この映画の立ち位置を海外のスパイ映画に照らし合わせて言…

2014年のスパイフィクション十選

本ブログとは別に作っている「スパイフィクションリスト」では、「早川の『冒険・スパイ小説ハンドブック』のアップデート版」を目標に地味にその折々のスパイフィクション(小説、映画、ゲームなど)を少しずつ紹介しています。「リスト」と銘打ちつつも、…

『残響のテロル』覚書

【Amazon.co.jp限定】残響のテロル 1(オリジナルステッカー付き)【完全生産限定版】 [Blu-ray]出版社/メーカー: アニプレックス発売日: 2014/09/24メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (8件) を見る 『残響のテロル』が最終回をむかえた。 2014年の日本で…

愚かさとテロリズム『残響のテロル』

今日は中盤から録画を溜めていた『残響のテロル』を一気見してその面白さと真摯さに心打たれていたのだけれども、ネット検索やTwitter検索ではあまり好意的な批判を見つけることができない。自分のTLでは好評なんだけども。 もっとも多く印象に残るのは、テ…

愛はおしゃれじゃない アニメとファッションの関係について

トム・クルーズレトロスペクティブの更新が止まりここ二ヶ月弱何をしていたかというとずっとラブライブ!の記事を書こうということばかり考えていました。 というのも、7月初旬、次のような『ラブライブ!』の劇中ファッションを批判する言説がつづけて話題…

この映画のことが大すき。『思い出のマーニー』

すばらしかったです。 プリシラ・アーンの主題歌を流す予告編を先日初めて観たとき、ちょっとびっくりしました。主人公・杏奈によるこんな独白があるのです。 この世には、見えない魔法の輪がある 輪には内側と外側があって、わたしは外側の人間 でもそんな…

[映画]『7月4日に生まれて』

……あ、「80年代」の「総決算」、は本来こっちですかね。ぼくはあんまり好きじゃないですけど、1989年、『7月4日に生まれて』でーす。監督はオリヴァー・ストーン。 たしか10年くらいまえに観て、原作も読んでるんですけど、んー、正直今回観直そうという気持…

[映画]『レインマン』

『カクテル』を隠れた名作と言いましたけど、じゃあ80年代のトム・クルーズの一本を選ぶとしたら? という問いにはこれを推したい。1988年の『レインマン』です。監督はバリー・レヴィンソン。ぼく、この人の『バンディッツ』が好きなんですよねえ。 『レイ…

『カクテル』

『ハスラー2』と同様、こちらも、凄腕の先達に若きトムが弟子入りするお話。1988年の『カクテル』です。監督はロジャー・ドナルドソン。 兵役を終え、ニューヨークにやってきたブライアン(トム・クルーズ)。金融業界での成功を夢見ていましたが就職活動が…